全体の6割には自然抗体があり、さらにこの1-2年に普通の風邪をひいた事のある人は新型コロナに対する耐性があるかもしれない
今回はちょっと長いタイトルですね。
(もっと長いタイトルの記事もありましたが・・。)
前回のブログの冒頭にタイトルのみご紹介しました記事と、もうひとつ、最近1-2年以内に普通の風邪(コロナウイルスによる一般的な風邪)にかかったことのある人も、もしかすると、その際に作られた抗体によって新型コロナウイルスの感染症から保護される可能性がある、という記事をご紹介しましょう。
それでは、さっそく本記事です。
60%の人は自然とSARS-COV2に対する耐性を持っている
・STUDIES: 60% of people naturally RESISTANT to SARS-COV2
Off Guardian (2020/06/12)
ここからです。
新しい研究は、大多数の人がすでに以前の感染に基づいてすでに耐性を持っている可能性があることを示唆している。
新たな研究により、COVID-19に関連するウイルスであるSARS-CoV-2は、おそらく以前考えられていたよりも5倍以上広く拡散しており、したがって致死性を5倍以上過剰に評価していることがわかった。
チューリッヒの大学病院の科学者チームが行った研究は、
「SARS-CoV-2に特異的な抗体の分泌が軽度および重度のCOVID-19間に全身および粘膜で認められる」
とした上で、SARS-CoV-2の特異的な抗体は最も重度の症例、つまり5人に1人程度の割合でしか発現しないことを明らかにした。
著者らはこのことから、COVID-19の軽症例の大部分には、不可解にも抗体が欠如することを推測している。しかし、診断テストの既知の不正確さと、臨床観察によって過剰に診断される傾向を考えると、別の可能性の説明は、抗体の欠如は被験者が実際にはSARS-CoV-2に感染したことがないという事実によるものであり、彼らの「軽い」風邪のような症状は、他の病原体、いうならば普通の風邪、によるものであると思われる。
しかし、もし著者らの推定が本当に正しければ、SARS-CoV-2の感染率(IFR)をさらに下方修正する必要があることを意味するかも知れない。感染した人の80%が抗体を作らないのであれば、ウイルスは通常想定されているよりもはるかに多くの人々に存在している可能性があるわけで、その結果、IFRは大幅に削減される可能性もあるだろう。
初期の段階では、世界保健機関(WHO)はウイルスのIFRを3.4%と高く見積もっていた。ただし、これらの数字に基づいたモデルは非常に不正確である。
スタンフォード大学のジョン・イオアニディス教授(Prof John Ioannidis)のような多くの専門家は、広範な集団調査が終了すれば、WHOのIFR値が正しくないことが証明されるだろうと予測している。
専門家は、世界中のさまざまな集団で行われたSARS-Cov-2の抗体を調べる血液検査を使用した血清学的研究によって正当化されたように見え、WHOの初期値3.4%よりも0.3%に近いIFRを提案している。
日本からアイスランド、ロサンゼルスまで、返された数値は0.06~0.4の間であり、季節性インフルエンザの範囲内であった。
これらの研究の結果、米国CDCの最新の「推定IFR」は0.26%~0.4%。当初の推定値の約10分1だった。
一方、先月の別の研究では、最大60%の人が、SARS-COV-2に対して部分的に耐性を持っている可能性があるという証拠が見つかっている。
重要なことは、未感染者の約40~60%でSARS-CoV-2反応性CD4+ T細胞が検出されたことであり、循環する「一般的な風邪」コロナウイルスとSARS-CoV-2との間に交差反応性T細胞認識が見られたことです。
つまり、すでに他のコロナウイルスに感染しているため、人々の大部分がこのウイルスに対して免疫や抵抗力を持っていた可能性がある。
ほとんどのコロナウイルスの間に密接な関係があることを考えると、これは驚くべきことではないかもしれない。ほとんどの場合、無害であることがわかっているこのウイルスが、特別にユニークなものでもなければ、特に危険なものでもないことを示しているのだ。
このウイルスがもたらす危険性について当初の予測よりも大幅に誇張されていたことは、証拠が上がってきている。
ここまでです。
『米国CDCの最新の「推定IFR」は0.26%~0.4%』に関する記事については、私がいつも読ませていただいているIn Deepさんのブログに詳しく書いてありますのそちらのリンク先を紹介させてください。
・アメリカCDCが算出した新型コロナウイルスの驚異的に低い致死率。それは何と「全年齢層で 0.4 %」
In deep (2020/05/31)
すでに他のコロナウイルスに感染しているため、人々の大部分がこのウイルスに対して免疫や抵抗力を持っていた可能性がある。
このことを明らかにした研究報告を次にご紹介します。
以前に一般的な風邪ウイルスに感染していた人は、COVID-19に対してわずかだが免疫があるかもしれない
・People Previously Infected With Common Cold Viruses May Be Slightly Immune to COVID-19
Gilmore Health News(2020/06/02)
ここからです。
毎年冬に流行する他の4つの一般的なコロナウイルスのいくつかへの感染は、Covid-19から保護されるのか? この疑問は、集団内にすでに存在する潜在的に頻繁な交差免疫のいくつかの研究で調査されている。
最近発表されたいくつかの研究は、集団の一部が交差免疫として知られているものによって、Covid-19の原因であるSARS-CoV-2コロナウイルスからすでに保護されているかの可能性を調査した。言い換えれば、他のウイルスに感染することで、意図せずにCovid-19に対する保護を提供することになる。
誰かが感染症を治したとき、ほとんどの場合、免疫システムは感染の原因となる病原体と効果的に戦うための抗体を開発する。交差免疫とは、これらの抗体が他のウイルスに対しても有効であることを指す。
これは、2003年のSARS流行中に治癒した患者のサンプルを使用して、スイスとアメリカの研究者のチームによって観察された。当時、8000人(800人近くが死亡)がコロナウイルスSARS-CoV-1に感染しており、(今回の)コロナウイルスCovid-19と80%の類似性を示した。
ネイチャー誌で、ダビデ・コルティ(Davide Corti)率いるチームが、SARS-CoV-1とSARS-CoV-2の両方を中和する特定の抗体S309を同定した。2003年、S309は患者のB細胞から抽出された。これらの細胞は過去の感染時に産生され、特定の抗体を産生する役割を担っている。これが免疫記憶と呼ばれる。
しかし、これまでのところ試験管の中でしか行われていない。さらに重要なのは、この交差免疫が現在のパンデミックに影響を与えるには、SARS流行によって影響を受けた人があまりにも少な過ぎだったことだ。
人口の6割はすでに保護されている可能性がある
SARS-CoV-1は2004年に完全に姿を消したが、他の4種類のヒトコロナウイルス(HCoV)は季節的に流行し、毎年、風邪の15~20%の原因となっている。
2つのHCoV(229EとOC43)は1960年代から知られており、他の2つのHCoV(NL63とHKU1)は、2003年の大流行の直後に発見されたものである。
しかし、以前の研究では、それらのいくつかは相互に依存していることが示されていた。例えば、風邪の間にOC43と戦うために産生された抗体は、HKU1あるいはSARS-CoV-1に対しても中和効果を発揮することがある。
2020年5月14日にCell誌で発表された研究によると、この交差免疫は、SARS-CoV-2から人口の40~60%もの人を保護することができるそうだ。
つまり、OC43またはHKU1のいずれかが原因で風邪をひいた人は、SARS-CoV-2に対する防御力が有るかも知れない。しかし、40~60%という数値は非常に楽観的に見える。これは、一般的なコロナウイルスに対する保護は通常2年以上持続しないこともわかっているからだ。
正確にはどのくらいなのだろうか。この質問に対する答えは、各個人の免疫プロファイルに依存するため困難だ。しかし、これらは人生の中で何度か遭遇するウイルスだ。
このかすかな希望の背後にいる科学者たちは、2015年から2018年の間に採取したサンプルを用いて、Covid-19で治癒した患者の免疫反応と非感染者20人の免疫反応とを比較したところ、後者のグループでは、全員がOC43とNL63に対する抗体を持っていた。
ベルリンの別のチームも同様に、SARS-CoV-2に曝されたことのない68人の免疫反応を分析した。未査読論文サイト(Medrxiv)に掲載された彼らの最初の論文には注意が必要ではあるが、彼らは34%の確率で交差免疫を発見している。
交差免疫の不確かな影響
研究者や医師にとって、この交差免疫は、今後数ヶ月の間に第二波を防ぐ上で大きな利点となるだろう。
他のコロナウイルスとの交差免疫がパンデミックの経過にどのように影響するかを知るにはまだ時期尚早だ。この交差免疫には意味合いがあるが、期待どおりではないかもしれない・・・。
昨年4月に、マーク・リプシッチ(Marc Lipsitch)の研究は雑誌「サイエンス」で報告されている。
「他のベータコロナウイルスとの交差免疫が低いと、SARS-CoV-2は消滅し、数年後に再発する可能性があります。」
これは、これらのコロナウイルスに対する防御免疫記憶が通常2年以上持続しないためであり、したがって、「OC43およびHKU1と組み合わせた中程度の交差免疫(30%)は、2024年に復活する前の最長3年間は、SARS-CoV-2の感染を効果的に防ぐことができる」と研究者たちはすでに警告している。
交差免疫があろうがなかろうが2004年の近しいいとこのSARS-CoV-2が完全に消滅しないのであれば、まだ長い間注意が必要になるだろう。
ここまでです。
交差免疫の話題がでたのはつい最近ですが、なぜ日本の感染者や死亡者が他の国々と比較して圧倒的に少ないのかという議論があり、その中で、BCGワクチンの接種によって今回の新型コロナウイルスに対しても免疫が効いているのではないかという説でした。
「COVID-19の死亡率が非常に高いイタリアでは、BCGワクチン接種を実施したことはない。一方、日本(および1947年以来BCGポリシーを採用している)はCOVID-19の初期の事例の1つを抱えてはいたが、最も厳格な形態の社会的孤立(※都市封鎖)を実施していないにもかかわらず、死亡率は低く維持されています。」*原文は英文
・Doctors wary of BCG vaccine study
The Hindu (2020/04/02)より一部引用
このBCGワクチンが交差免疫として働いているのではないかという研究報告は、その後にも出てきているのですが、どれもまだ結論を出すには早すぎるようです。
・COVID-19: Could TB vaccine offer protection?
Medical News Today(2020/04/02)