頭痛の原因を知り、痛みを改善する神経科学者からの三つのヒント

前回まで新型コロナに関する記事が続きましたので、今回は頭痛に関する記事を取り上げたいと思います

頭痛は私たちの身近な症状の一つだと思われます。

私は、あまり頭痛になることはありませんが、日頃から頭痛薬が手放せない方、特に女性には多いのではないでしょうか。

しかし、免疫学で世界的に有名な安保徹氏（元新潟大学医学部　名誉教授）は、こう言っています。

『“痛みどめ”は病をつくるクスリ。使い続けてはいけない』

私のところに来る利用者さんにも、

「消炎鎮痛剤を常用してはいけません。体調が悪い、病気がなかなか治らない。このような場合は、何か薬を常用していないかどうか振り返ってみましょう。たとえば頭痛持ちの人や、生理痛で悩んでいる人は、痛みが来るたびに”痛み止め”（消炎鎮痛剤）を使っていないでしょうか？　それが、あなたの痛みの原因になることもありますよ。」

こういったことを、日頃から伝えるように努力しています。

さらには、以前のブログ記事にも”痛み止め”の悪影響についても書いています。

　・『消炎鎮痛剤は悪魔が天使の仮面を被っている』②　～痛み止めは病をつくる～（2018/6/27)

『消炎鎮痛剤は悪魔が天使の仮面を被っている』②　～痛み止めは病をつくる～

実際、頭痛持ちの人は、普段から頭痛薬を飲みすぎる多剤性頭痛になっている人も多く、このタイプの人は認知症になるリスクが高くなるという研究報告も出ています。

　・片頭痛を持っている人は認知症になりやすい（2019/9/2）

片頭痛を持っている人は認知症になりやすい

それでは、頭痛のメカニズムを知り、できるだけ薬に頼らないアドバイスについてご紹介しましょう。

頭痛：それらを取り除く方法に関する神経科学者からの3つのヒント

・Headaches: three tips from a neuroscientist on how to get rid of them
　Medical Xpress (2021/02/16)

ここからです。

　頭痛は誰でもが経験するもの。鈍いズキズキとした脱水性頭痛から片頭痛まで、頭の痛みは非常に一般的な不定愁訴だ。これはおそらく現在では特に当てはまるだろう。新型コロナウイルスによりあまりにも長い間、机に長時間座っていたり、十分に家から外に出ていなかったりすると、これらを引き起こす可能性がある。

　頭痛に襲われると、多くの人は鎮痛剤に手を伸ばす。

　一般的に鎮痛剤はよく効くが、より良い解決策は、痛みの背後にある理由を探ることであり、同様のタイプの頭痛が頻繁に発生する場合には特にそうだろう。

　どれも痛みを伴うものだが、どの場所に痛みがあるかによって、どのようなタイプの頭痛が発生しているのかを知ることができる。顔や額の痛みは副鼻腔関連の頭痛のマーカーであり、頭蓋骨のどこかにドリルを当てられているかのような感覚が有る場合は、片頭痛であることが多い。

　最終的には、すべての頭痛の原因は、頭の中の血管拡張、つまり脳の近くの血管が広がることによって引き起こされる。これにより血管壁の感覚受容器を拡張し、それを痛みとして感じさせる。

　その理由を理解するためには、頭の中身がどのような制約の下で働いているかについて考える必要がある。血液は脳組織にとって有毒であるため、血液脳関門を通して分離されている。血管が漏れたり破れたりすると、出血し、血液が浸透した脳組織が死滅する。つまり、血管が快適な限界を超えて拡張すると、感覚受容器が脳に信号を送り、それを痛みと解釈する。

　頭痛は早期警告システムなので、対策としては、それが何を警告しているかを理解することが一番の道だ。

1.　頭を越えて考える

　これはあなたの頭を超えて考えることを意味する。そう、頭痛は私たちの頭のどこかで発生し、それを頭の中で感じ、それが頭痛と呼ばれる理由なのだ。しかし、頭痛はそれだけではない。だからこそ、私は頭痛に魅了され、過去20年間頭痛について研究し、最近このテーマに関する本を出版した。

　それは二者択一だ。私たちの頭痛の原因は、時に体や行動に起因する場合があり、そしてもちろん、頭痛は私たちの体と行動の両方に影響を与える。頭痛を自分の頭蓋骨だけのものと考えていては、その原因や経験、そしてそれを軽減するための最善の方法を真に理解することはできないだろう。

　頻繁に片頭痛に悩まされている人は、これをよく理解しており、何が引き金となっているのかを解明するために、しばしば食物の摂取量や活動、天候などを熱心に記録している。

　しかし、通常の頭痛の場合、自分の痛みの原因を理解していないことが多いのだ。

　緊張型頭痛は、これがどのように機能するかを示す非常に良い例だろう。

　緊張型頭痛は、頭の周りを締め付けられているような感じで、その上に1トンの重りが乗っかっているように感じる。私たちは皆、大きな感情的ストレスを受けているときに頭痛を起こすことを知っているが、それらは私たちが体にかけるストレス、例えば悪い姿勢や怪我からの回復する時などでも同様に引き起こされることがある。

　どちらも頭と首周りの筋肉が過剰に活動することで、血管を広げるように作用する化学物質であるプロスタグランジンと一酸化窒素を含む炎症反応を引き起こす。また、炎症性化学物質は、脳神経の中で最も複雑で、顔の感覚や動きを司る三叉神経を直接活性化させる。

　あまりにも多くのことを抱え込んだり、やる気のない時に物事を成し遂げようとあわてたり、すべての物事を多くの人にしようとすることは、緊張性頭痛を予測する一般的な行動マーカーとなる。それと、痛みが始まったときに行う行動だろう。

2.　痛みに耳を傾ける

　あなたの足に痛みがある場合、それはあなたがテニスの試合でプレーすることをやめ、その代わりにフットサルの集まりに顔を出したりするかも知れない。その上で、もしプレーをしたとすれば、多くのダメージを受け、回復に時間がかかることを知っている。しかし、私たちは頭痛に対してはそのようなことをしない。解熱鎮痛剤を飲んで、痛みの受容体が何か問題があると私たちに叫んでいても、通常どおりの生活を続けている。

　パラセタモール（日本ではタイレノールやノーシンなどのアセトアミノフェン製剤)やイブプロフェン（イブAなど）を服用すればと、炎症や拡張を抑え、痛みの感覚を軽減するように作用するが、原因に対処できない限り、頭痛は再発するだろう。副鼻腔の頭痛がある場合は、副鼻腔がスッキリするのを待つしかないので、鎮痛剤や鼻炎薬を服用するのも良い方法かも知れないが、このような対処法によって事態をさらに悪化させてしまうこともある。

　私たちは、リラックスしてストレスを発散するために、ワインボトル1本とおつまみをテイクアウトすることがいいだろうと決めているかも知れない。しかし、どちらも脱水症状を引き起こす。これらは、いつどこででも頭痛を起こすこととなる原因の一つだ。あなたの脳の70％以上は水でできている。腎臓がアルコールや塩分、スパイスを希釈するために水分を必要とするため、それは通常この脳という水が豊富なオアシスを利用する。脳はその水分を失い、体積が小さくなることで、脳を覆っている膜を引っ張ることで痛みを引き起こすのだ。

3.　脳の自然な鎮痛剤を活用する

　では、他に何ができるのだろうか。1つの方法は、脳の自然な鎮痛システムを利用し、幸福系に関連する神経伝達物質(ホルモン)であるセロトニンやオキシトシンなどや報酬系に関わるドーパミンを増やすことだ。コメディを見て笑ったり、仲の良い友人と楽しんだり、パートナーと親密な時間を過ごしたりすることはすべて、これらのホルモンを増やすことにつながる。

　それぞれが身体から来る痛みの信号をブロックすることで、頭痛への対処を助けるだけでなく、動揺した感情のメカニズムであったホルモンバランスを整えるのにも役立つ。

　行動と身体を活用して脳ホルモンのバランスを保つことができるという知識は、頭痛のサイクルを断ち切る方法を提供してくれる。なので、次に原因がはっきりとわからない頭痛に悩まされたときには、病気ではなく、水分補給も続けているときは、自分の生活を見直し、そこから何を変えることができるかを考えることだ。痛みは、結局のところ、あなたに何かを伝えようとしているのだから。

ここまでです。