ビタミンDは体に必要っていうけどビタミンDと呼ばれる物質はいくつもあるので一体どれを摂るべきなのか?
前回ビタミンDとカルシウムサプリメントがめまいを予防できる、という記事を書きました。
・めまいで悩んでいる人にはビタミンDとカルシウムが効く(2020/09/01)
めまいで悩んでいる人にはビタミンDとカルシウムが効く
また今流行中の新型コロナウイルスに対して、ビタミンDが効く可能性があるという研究報告が多く見られるようになりました。
ビタミンDは私たちにとって無くてはならない必須栄養素の一つですが、外出を控えたりすることで屋外での活動が少なくなっており、太陽光に浴びる機会や時間が大幅に減っています。
ですから、不足分を補う上でサプリメントを上手に活用することは、私自身否定するつもりはありません。
但し、サプリメントを利用する場合には、そのサプリメントがどのような成分で製造されているものなのかを十分に知っておいた方が良いでしょう。
安易に安価な製品を使うのは却って健康を害する危険もあるということです。
厳密には数種類の形態で存在する物質を総称してビタミンDと呼べるそうです。
それでは、ビタミンDサプリメントに関する記事を紹介しましょう。
COVID-19サプリメント:ビタミンDサプリメントを購入する際には様々な形態のビタミンDがあるので注意
・COVID-19 Supplements: Be Careful When Buying Vitamin D Supplements As There Are Many Forms
Thailand Medical News(2020/08/11)
ここからです。
COVID-19サプリメント:
サプリメントの購入が簡単だと思っていたら、もう一度考え直した方が良いだろう。多くのサプリメント・メーカー、特にアジアのメーカーは、最も安い原料やそのタイプを手に入れる方法を見付け、製品の真の有効性や最終消費者のために本当に役立つかどうかには焦点を当てていない。
メディアでは最近、COVID-19に対してビタミンDの効果が証明されたとするいくつかの見解について話題になっている。
しかし、適切な製品を調達することはさらに困難であることが証明されており、多くの人は、表示法や規制措置が甘いために、本当に役立つとは限らないサプリメントを摂取してる可能性がある。
ビタミンDに関して言えば、ほとんどの人がまず理解すべきなのは、現在の表示法では、既存の4つの形態の化合物をビタミンDとして表示できるということだ。
ビタミンDの補充との文脈で使用される特定の化合物は、しばしば曖昧であることが判明している。「補充(supplementation)」という用語は、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロール、カルシジオール、およびカルシトリオールの文脈で使用されてきた。
体を育む自然由来のビタミンDは、コレカルシフェロールまたはビタミンD3だけだ。太陽光に反応して人体によって生成され、魚などの食事からも摂取できるが、サプリメントなどで利用するには高価なモノとなる。
しかしながら、はるかに安価な製品にはエルゴカルシフェロールまたはビタミンD2が使用される。これは、主に合成されたものであり、コレカルシフェロールよりもマイクログラム用量あたりの効果が少なくしかも安定性も低い、ほとんどのサプリメント会社でビタミンDとして流通していることが多いものだ。
化合物カルシドールは、コレカルシフェロールの主要な循環代謝物であり、カルシトリオールは、腸からのカルシウムの輸送を増加させ、副甲状腺ホルモンの分泌を抑制するホルモンだ。
一般的に、栄養政策に関するガイドラインでは、カルシジオールやカルシトリオールは栄養素ではなく、これらの代謝物は食品の栄養強化や栄養補助には適していない。
しかしながら、カルシジオールとカルシトリオールの合成形態は安価に入手可能であり、規制当局と無知と法律の緩い国では、ビタミンDとして偽装されていることもある。
中国は、これらの非常に安価な合成品を供給できる数少ない国の1つであり、彼らの顧客には、米国やほとんどの東南アジア諸国でのサプリメント製造会社だ。
最近の多くの研究によると、エルゴカルシフェロールは保存に対して安定しておらず、コレカルシフェロールよりも、調理や加熱による分解の影響をはるかに受けやすくなっている。
したがって、コレカルシフェロールはビタミンDの唯一のタイプであり、栄養強化とサプリメントの栄養機能との関連に結論づけられなければならない。
残念なことに米国では、ビタミンDのサプリメントは、主にエルゴカルシフェロールとビタミンD3コレカルシフェロールは利用可能だが、これらの二つは歴史的に互換性と、同等の効能があり、現在の文献ではエルゴカルシフェロールよりもビタミンD3コレカルシフェロールの選択を強く支持している。
エルゴカルシフェロールの製造方法が考案された当初、ラットにおけるビタミンD受容体の結合研究では、エルゴカルシフェロールとコレカルシフェロールの間の等効力を示されていた。この動物データに基づいて、ほとんどの資料では、この二つは同等であり、交換可能であることを引用している。
ただし、エルゴカルシフェロールとコレカルシフェロールの両方が他の動物とは異なるヒトの体内での代謝変化を受けることを考えると、ラットの結合研究では同等性を示すのに十分ではないかもしれない、というのは理にかなっているだろう。
実際、最近の文献(Trang 1998、Armas 2004、Houghton 2006)では、ヒトにおけるコレカルシフェロールがエルゴカルシフェロールよりも1.7倍から3倍も強力で、持続効果が高いことが示されている。
効き目が弱く、効果の持続時間が短く安価であるエルゴカルシフェロールが、主にサプリメントの製造会社やブランドで使用されているもう1つの理由は、投与量の調合によるものだ。コレカルシフェロールは、通常、カプセルまたは錠剤1個あたり最大5,000単位の最大用量でのみ可能だが、エルゴカルシフェロールは、50,000単位というモンスター級の最大用量での利用が可能なのだ。
このより大きな用量は、週または月単位でサプリメントを提供したい患者または医療提供者にとってより便利であり、非倫理的なサプリメント製造会社のマーケティング戦略にも適していると見なされるだろう。
25-ヒドロキシビタミンDは、ラット結合研究よりも優れた代替となるが、臨床結果が最も関係している。低レベルの25-ヒドロキシビタミンD(20ng/mL未満)は北米では非常に一般的であり、骨粗しょう症、骨折、悪性腫瘍、心血管疾患、感染症など、さまざまな疾患と用いられている。
データの大部分は、低ビタミンDレベルとの因果関係ではなく、関連性を支持されている。言い換えれば、データの多くは、ビタミンDレベルが低い患者にビタミンDを補給すると、これらの疾患のリスクが低下するという考えを明確には支持していない。
コクランレビュー(Bjelakovic 2014)では、56のランダム化臨床試験からの95,286人の参加者のデータを集め、ビタミンD補給(D2とD3の両方)の全死亡率への有益性を分析した。このメタ分析では、参加者の約80%がコレカルシフェロール(中央値800単位/日)を摂取し、約20%がエルゴカルシフェロール(中央値1000単位/日)を摂取していた。これらの大多数は女性(77%)であり、ほとんどが70歳以上の高齢者であった。
このレビューでは、全死亡率相対リスク(RR)が0.97(95%CI 0.94-0.99、p=0.02)であり、死亡率との差は12.5%(対照群)と12.7%(ビタミンD群)であった。著者らは、必要治療数(NNT)を5年間で150と計算したが、死亡率との差を使用して、加重平均4.4年で500と計算された。
重要なことは、死亡率の差が示されたのは、コレカルシフェロールを試験したもののみであるということだ。エルゴカルシフェロールはメタアナリシスの中では少数派だったが、相対的はリスク低減の5%の違いを検出するのには十分なパワーを有していた。
※訳注:筆者は統計学に詳しくありませんので、上の5%の違いがどのように導かれているのか理解できておりませんがそのまま訳しました。
結果は次のとおり
- コレカルシフェロール(ビタミンD3)は、エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)よりも強力で長時間作用することが、血中の活性型ビタミンD(25-ヒドロキシビタミンD)によって測定された。
- 低ビタミンDの値は北米では一般的であり、低ビタミンD値と疾患との関連性を裏付けているデータがほとんどだが、ビタミンDの補給と特定の疾患の予防との因果関係を裏付けるデータははるかに少ない。
- コレカルシフェロール(D3)によるビタミンD補給は、高齢女性の全死因死亡率の改善に、わずかではあるが統計学的に有意な利点があるようだ。若年層や男性患者における死亡率改善効果は明らかになっていない。
- エルゴカルシフェロール(D2)はコレカルシフェロールほど研究されておらず、最近のコクラン・メタ分析では、十分な統計力にもかかわらず、死亡率の改善をもたらすことは示されていない。
- ビタミンD補給の基準(それ自体が完全な議論の対象)を満たす患者の場合、ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)よりもビタミンD3(コレカルシフェロール)を選択する必要がある。
したがって、ビタミンDのサプリメントを探しているときは、ラベルを注意深く読み、ビタミンD3またはコレカルシフェロールであることを確認することだ。
ここまでです。
ビタミンD欠乏症については、以下のサイトを参考されると良いと思います。
ビタミンD欠乏症および依存症
日光への曝露が不十分であると,ビタミンD欠乏症が起こりやすくなる。欠乏症により,骨石灰化が障害され,小児ではくる病,成人では骨軟化症が引き起こされ,また骨粗鬆症の一因となる可能性がある。診断では,血清25(OH)D(D2およびD3)の測定を行う。治療としては通常,ビタミンDを経口投与し,必要に応じてカルシウムおよびリンを補給する。しばしば予防が可能である。まれに,遺伝性疾患によりビタミンDの代謝障害(依存症)が起こる。