少量の飲酒でもがんのリスクが高まります

季節柄お酒の飲む機会が特に増える今日この頃。

酒は百薬の長、適量であれば健康に良いと言われ続けてきましたが、最近ではどうも酒は健康にとって良いことは何も無いとまで言われるようになりました。

また、日本人は遺伝的に欧米人と比べてアルコールに対する耐性がほとんど無く、8割の日本人がアルコールを分解する能力が低いそうです。

しかし、日本において低量の飲酒とがんのリスク関連に着目した研究は少なく、詳細は明らかになっていませんでした。

私は、ほぼ毎日缶ビール1本(500ml)程度の飲酒量ですが、ちょうど今回の研究対象の飲酒1単位と完全に一致するみたいです。これに飲酒期間(年)を掛けたものが飲酒指数だそうです。

今回の研究結果では、飲酒量と飲酒習慣の関係ですので、たまに飲むお酒では結果も違ってくるのではないかと思います。

軽度のアルコール摂取でさえ日本でのがんリスクの増加と関連している

Science Daily

ここからです。



日本で実施された研究では、軽度から中程度の飲酒でさえ、がんリスクの上昇と関連が見つかった。米国癌学会誌「CANCER」で早期にオンラインで公開されたこの研究では、アルコール消費量がゼロの場合のみ、全体的な癌リスクが最も低くなった。

一部の研究では、限られたアルコール消費であれば特定の種類のがんのリスク低下に関連付けているが、軽度から中程度の消費であったとしても、がん全体のリスクは高いままだった。

日本でこの問題を研究するために、東京大学の財津将嘉博士および彼の同僚は、日本全国の33箇所の総合病院から2005-2016年の情報を調査した。

チームは、性別、年齢、入院日、入院を一致させた63,232人のがん患者と同数の63,232人との対照の臨床データを調べた。すべての参加者には、標準化されたアルコール単位の平均日量と飲酒時間を報告させた。

全体的ながんのリスクは、アルコール消費量がゼロのときに最も低くなるようであり、がんリスクとアルコール消費量の間にはほぼ線形の関連があった。

協会は、軽い飲酒レベル時点(10 drink-year)の飲酒指数(10 drink-yearは一日1杯を日常的に10年間継続、または一日2杯を日常的に5年間継続)で、全体的ながんリスクが5%増加することを示唆した。

1日に2杯以下の飲酒でも、アルコールを摂取した期間に関係なく、がんのリスクが高くなった。また、性別、飲酒/喫煙行動、および職業階級別に分類された分析でも、ほとんど同じパターンが示された。

リスクの上昇は、結腸直腸、胃、乳房、前立腺、食道などの比較的一般的な部位でのアルコール関連のがんリスクによって説明できる。

財津博士は以下のように述べている。

「日本では、死因の主な原因はがんによるものであり、全体的ながん発生率の現状を考えると、がんのリスクに飲酒も関係するという公教育の促進をさらにすすめるべきです。」



ここまでです。

この研究は日本人によるものだったので、日本語で書かれた同記事を探したところ見つかりましたので、要約を以下に書いておこうと思います。

文書は下記のリンクで読めます。(PDFファイルです)
http://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/admin/release_20191209.pdf

【低~中程度の飲酒もがん罹患のリスクを高める】

ポイント:

①独立行政法人労働者健康安全機構が構築した全国33 箇所の労災病院の入院患者病職歴データベースを用いて、新規がん63,232 症例と対照63,232 症例から、低~中等度の飲 酒とがん罹患のリスクを推計。

②がん全体の罹患リスクは低~中等度の飲酒でも容量依存的に上昇し、飲酒指数が10 drink-year(例えば1 日1 杯を日常的に10 年間継続)で、罹患リスクは1.05 倍程度上昇した。

③低~中等度の飲酒においても、全がんの罹患リスクは軽度上昇する可能性が示されました。現在、日本の死因の第1 位はがんであり、がん予防のため、飲酒によるがん罹患リスクの啓発活動をさらに強化する必要があると考えられる。

概要:

世界的に、低~中等度の飲酒によるがん罹患リスクの上昇が注目されています。しかし、日本では、低~中等度の飲酒とがん罹患のリスクの関連に着目した研究は少なく、容量反応関係なども詳細には明らかになっていなかった。

がん全体についてみると、飲酒をしなかった人が最もがん罹患のリスクが低く、また、飲酒した人のがん全体の罹患リスクは低~中等度の飲酒で容量依存的に上昇し、飲酒指数が10 drink-year の時点で(例えば1 日1 杯を日常的に10 年間継続)オッズ比が1.05 倍に上昇した。

喫煙習慣、生活習慣病、職業階層で調整しても、同様の傾向が観察されました。また、各種がんによって低~中等度の飲酒の影響は様々でしたが、大腸がん、胃がん、乳がん、前立腺がん、食道がんなどの比較的頻度の高いがんが、本研究で観察された低~中等度の飲酒による全体的ながん罹患リスクの上昇に関わっていることが示唆された。

飲酒量の定義:

本研究では、生涯飲酒量を、日本酒1合(180 mL)、ビール中瓶1本(500 mL)、ワイン1杯(180mL)、またはウイスキー1杯(60mL)を標準化された飲酒1単位(推定アルコール含有量23g)として、1 日の平均飲酒量(単位に飲酒期間(年)を掛けたものを飲酒指数(drink-year)として定義した。

表 飲酒指数が10drink-yearの時点での各種がんのオッズ比

各種がんのオッズ比

表は本資料からオッズ比の高いデータから降順に並べ替えています。
黄色のセルはオッズ比が平均値より高く、かつ症例数の多いものをピックアップしておきました。こうすることで、症例数が多いがんの種類と飲酒の影響の高いものとの関係が分かりるかな思いましたので。

◎オッズ比とは?

オッズとは(事象の起こる確率)÷(事象の起こらない確率)です。今回のような症例対照研究において、アウトカムが稀である場合(がんは稀な疾患と考えることが出来る)、対照群の飲酒曝露のオッズに対する症例群の飲酒曝露のオッズの比を求めることで(オッズ比)、がん罹患のリスクの大きさの近似値を得ることができます。

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