次の感染症のアウトブレイクに備える
今日から全国の小中高校の一斉休校が始まりました。
学校の閉鎖が新型コロナウイルスの拡散の阻止に有効だとは専門家も考えていないようです。しかし、海外にアピールするには有効なのかも知れません。
ただ、経済的、社会的な影響は非常に大きく、このような状態が1ヵ月以上続けばかなりおおきなダメージは必至であり、感染による死亡よりも怖いのは、むしろこの経済的、社会的な混乱が人々を苦しめることにならないのか、そちらの方が個人的には心配です。
新型コロナウイルスもいずれは収束に向かうことになると思いますが、出来る限り早くの収束を希望しております。
次のウイルスの発生に向けて準備を開始する必要がある
ここからです。
コロナウイルスの流行は公式には危機的な状況であり、間違いなく、国際社会はこの問題を非常に深刻に受け止めている。
COVID-19(新型コロナウィルス)流行による死亡総数は、2000年代初頭のSARSによる死亡総数をすでに十分に上回っていることを考えると、当然だ。
世界保健機関(WHO)は、この流行を国際的な公衆衛生上における緊急事態と宣言し、世界中の研究者が 新型コロナウィルスに対するワクチンを開発するために懸命に取り組んでいる。米国と英国を含む政府は研究開発を促進するためにより多くの資金を割り当てた。
しかし、新型コロナウィルスに対する国際的な反応が比較的強かったとしても、すでに流行が進行しているため、遅すぎると見なされるのは仕方がない。その間違いを繰り返してはいけないだろう。
グローバルヘルスの研究者として、私たちは感染症と戦うための予防接種やその他の介入の完全な社会的価値を研究している。流行に関連する莫大な費用を考えると、世界が新型コロナウィルスと戦うのに苦労しているときでさえ、次のアウトブレイクを防ぐために働き始めることが重要だ。
予測可能なシナリオ
現在の状況で注目すべき点は、その予測可能性だ。
今回のアウトブレイクは、人間と動物の接触から発生すること、そしてコウモリが関与していた可能性があることは予測できていた。その震源地は人口密度の高い都市部にあり、国際間の航空機を介して急速に広がることが予測されていた。
そして、未知の病原体が既知の病原体と同じように流行を引き起こす可能性が高いと予測することさえできていた。
SARSとジカ熱の場合と同様に、現在の流行の原因となった病原体は、中国とそれ以降で大混乱を引き起こす前に誰のレーダーにも引っかかることがなかった。
また、急速に進行する流行が健康に大きな影響を与え、経済的、社会的影響など広範な影響を与えることも予測可能だった。
流行が始まってから 2か月も経たないうちに、中国の医療システムはすでに大きな負担を強いられ、特に武漢はコロナウイルス患者に質の高いケアを提供することに苦労している。さらに、これは他の状態にある患者を締め出すことになるかも知れない。
経済的影響は、主要な製造業への混乱、サプライチェーン、小売販売、海外旅行や教育に大きな混乱が含まれる。
そして、大量隔離、差別、デマの拡散、政府に対する不信感、すでに緊張状態にある国際関係へのさらなる緊張など、結果として生じる政治的、社会的な課題が、山積みとなるだろう。
この流行に関わる総費用はすでに大きなものであるが、今後さらに悪化する可能性がある。
伝染病の必然性
現在の状況の予測可能性は、伝染病の発生と流行の必然性を反映する。
いつどこで発生するのか、または原因となる病原体が何であるのかを確実に言うことはできないかもしれないが、常に別の何かが潜んでいることは分かっている。また、その頻度が増加すると信じる多くの理由がある。
世界的な人口増加が鈍化しても、世界で経済的にも政治的にも最も脆弱な地域で、引き続き増加している。都市化が進むと、感染症のための巨大なペトリ皿のように振る舞い、人口密度の高い大規模で密集した中心部より拡散していく。
人口の高齢化により、感染症や病気にかかりやすい人々の割合が増える。
気候変動により、一部の病原体や蚊などの重要な疫病の媒介者の地理的範囲は拡大し続け、逆に人間は動物の生息地に侵入し続け、種を超えた波及(人獣共通感染)のリスクが高まることになる。
最悪の事態に備える
流行のすべてのコスト、およびその繰り返し発生を助長するすべての要因を考えると、発生への準備、予防、緩和、対応に専念する組織および活動に対する安定した大規模な投資は、多大な利益をもたらす可能性が高い。
ワクチンプラットフォーム全般の開発と同様に、新しいワクチンの開発に資金を提供し、調整するための連合である、疫病への備えのための連合は、多額の資金提供に値する。
同様に、新しい抗菌薬治療と改善された診断のためのより多くの資金が必要だ。人間と動物の両方で病原体の監視を強化することも、緊急の優先事項となる。
おそらく、資金調達以上のものが不足しているのは、感染症の発生を制御し、対応する責任を負う国際的および国レベルの組織のゆるいネットワーにつながる、多くの実務者間の十分なレベルの調整だろう。
現在のグローバルな健康システムの断片化された性質では、かなりの研究と機能に対するギャップと、重複した無駄な労力が発生することにある。
私たちは以前、感染症の脅威に関するグローバルな技術評議会を設立し、組織間の連携と調整を改善し、必要な研究を実施し、グローバルなリスクを管理するためのエビデンスに基づいた高レベルの提言を行ってきた。
このような評議会は、疫学、ワクチン学、公共政策、経済学を含む幅広い分野の専門家で構成され、WHOに加盟するか、独立するかどちらかでも可能だ。
結論としては、次のアウトブレイクとその影響を防ぐために、または少なくとも軽減するために、別のコロナウイルス、エボラのような出血熱、パンデミックインフルエンザ、まだ発見されていない病原体など、より多くの持続的なリソースが欠かせない。
これらの対策を講じることは高くつくかもしれないが、手をこまねいて見ている方が費用がかかるのだ。次のアウトブレイクまであまり時間は無い。
ここまでです。
今回のコロナウイルスも将来的には、2009年に流行した新型インフルエンザのように季節性のインフルエンザとしての流行を繰り返していくのではないかと言われております。
実際、20世紀末から今世紀にかけ多くの感染症が出現しております。
2016年2月の米ワシントンポスト紙に載せられた「世界で出現した感染症」を1984年と2015年までを比較したものがあります。
これによると、
1984年に新しく出現した病原菌は「HIV(エイズ)」のみだったのに対し、2015年には「SARS」「O-157」「新型インフル」など10以上あり、また再度流行した感染症「コレラ」「ペスト」「黄熱病」など20以上にのぼります。
とにかく、医学がこれだけ進んだにもかかわらず、病気だけで無く感染病も全く減ってはいなかったのです。
いずれワクチンがでてくるかと思います。しかし、ワクチンで症状を軽くすることは出来るかも知れませんが、感染症にかからないという保証はありません。
とにかく、私たちはそういう時代に生きているんだ、ということです。