新型コロナウイルスに対する抗体が出来たとしてもそれは短期間の効果で終わるかも知れない

日本でも5月26日午前零時を持って首都圏などを含めた全国すべての緊急事態宣言が解除されました。

また、日本に先駆けてロックダウンを続けていた世界の都市も次々と緩和が発表・人の動きが少しずつ戻ってきています。

まだまだ、油断を許さない状況ではありますが、ロックダウンを選択した国としない選択をした国の間における実質的な数値の差はあまり観られず、むしろロックダウンを選択した国の方が、これからの将来にわたって社会的、経済的に大きな影響を与えてしまった、という意見が増えてきているように思います。

今後の第2波、第3波の流行を如何に抑え小さくするのか、そして、ウイズコロナ・アフターコロナ社会に対する対応を模索していくことが課題など、各国の対応だけでなく国際社会の取り組みが必要との認識に変化しています。

ドイツなどでは、「免疫パスポート」なるものを検討しているようです。

これは、新型コロナに対してすでに免疫を持っていることを証明し、感染を広げる事はない人物であるので行動の自由を保証する、といようなものだそうです。

これに対して、WHOは反対を表明しています。

WHO、「免疫パスポート」に反対 回復しても再び感染の危険と BBC Japan(2020/4/26)


日本でも感染したかどうかを調べるために、抗体検査を始める(た?)というニュースを最近聞いた覚えがあります。

将来の為の統計や研究のために検査する必要は有ると考えますが、抗体検査の精度の問題などもあって、正確な調査ができるのかどうかは疑問だと考えます。

新型コロナの抗体検査は玉石混交、安易に感染率を出す前にまず性能評価を 日経バイオテク(2020/5/15)


また、抗体ができていても再感染を防げるかは分かっていない。

抗体検査とは、被検者の血液や体液中に、細菌やウイルスなどに対して反応する抗体(IgGやIgMなど)があるかどうかを調べる検査だ。血清などを検体に使うことから、海外では、血清検査(Serology Testing、Serological tests)とも呼ばれる。

現在のところ、新型コロナウイルスに一度感染し、回復した患者で産生される抗体によって、再感染が防げるかどうかなどは分かっていない。研究者が行った基礎実験からは、回復した患者の血漿には、新型コロナウイルスに対する中和抗体(ウイルスの毒性や感染力を弱めたり消失させたりする抗体)ができていると推察されている。

「新型コロナの抗体検査は玉石混交、安易に感染率を出す前にまず性能評価を」から引用

それでは、「コロナウイルスの免疫を与えないかも知れない」という記事を紹介したいと思います。

 

コロナウイルスからの回復は免疫を与えないかもしれない、専門家に警告

Recovery from coronavirus may not confer immunity, warn experts Medical Xress(2020/04/17)



ここからです。



ウイルス学者がCOVID-19の原因となるウイルスを特定したとしても、非常に基本的な疑問は残ったままだ。

病気から回復した人は免疫を持っているのか?

専門家は、この問題に対する明確な答えはないとしている。

たとえ、多くの人がこの死に至る可能性のある病気に感染したとしても、少なくともしばらくの間は免疫をもたらすと仮定している。

マルセイユの公立病院システムの免疫学教授、エリック・ビビエ(Eric Vivier)氏は、

「免疫を受けているということは、ウイルスに対して免疫反応を起こして、ウイルスを撃退できるように免疫システムが記憶し、後で同じウイルスに対して感染するのを防ぎます。」と説明している。

はしかなどの一部のウイルス性疾患では、病気を克服することで、一生の免疫力を得ることができる。

しかし、SARS-Cov-2(COVID-19の原因となる学名)のようなRNAベースのウイルスでは、十分な量の抗体を構築するのに約3週間かかり、それさえも数ヶ月間だけ保護するだけなのかもしれない、とビビエ氏はAFPに語った。

少なくともそれが理論であり、実際には、新型コロナウイルスは次々と驚きをもたらし、ウイルス学者や疫学者もほとんど確信は持てていない。

世界保健機関(WHO)の緊急事態計画の責任者であるマイケル・ライアン氏は、今週の記者会見で、回復した患者がどれくらいの期間免疫を持つことが出来るのか、と言う質問に対して、

「それに対する答えは私たちは持っていないのです。依然不明です。それが妥当な合理的な保護期間であることを期待はしていますが、この新型ウイルスは、他のコロナウイルスから推定することしかできませんし、そのデータさえも非常に限られています。」と語った。

2002年と2003年に世界で約800人が死亡したSARSについて、回復した患者は「平均して約3年間」免疫を保持されたままだったと、ロンドン大学遺伝学研究所のフランソワ・バルー(Francois Balloux)所長はAFP通信に語った。

「人は確かに再感染する可能性がありますが、どれくらいの時間が経過した後ですか?それは遡ってみないと分からない、ということです。」

科学者は、回復した患者がCOVID-19に2度感染したという報告に警戒している。

 

偽陰性

査読を経ていない中国の最近の研究では、アカゲザルがSars-Cov-2から回復し、再びウイルスにさらされても再感染しなかったことが報告されています。

「しかし、それでは実際には何も明らかになっていない」とパスツール研究所の研究者フレデリック・タンジー(Frederic Tangy)氏は述べ、実験はわずか1ヶ月間のみであったことを指摘している。

実際、新型コロナウイルスに最初に感染した国の1つである韓国では、COVID-19から回復した患者が後にウイルス陽性反応を示した例がいくつか見られた。

しかし、その結果を説明するにはいくつかの方法があると科学者たちは警告する。

これらの個人が2度目に感染したことは不可能とはいえないが、このようなことが起こったという証拠はほとんど見つかっていない。

(訳注:その後韓国のCDCは、検査上の問題であったとし以下のように報告している。)

韓国CDCは、COVID-19ウイルスが人体内で再活性化することは不可能であると結論付けている。

新型コロナウイルスは地球上から消えないが、二度感染することはないかも知れない

もっと可能性が高いと考えられるのは、ウイルスがそもそも完全に消えることはなく、ヘルペスのように「慢性感染症」として潜伏して無症状のままであった可能性が高い、とバルー氏は述べている。

生きているウイルスと抗体の検査はまだ完全ではないので、これらの患者が、実際には病原体を排除できていないのに、ある時点で「偽陰性」と判定された可能性も考えられる。

「これは、人々が長期間、数週間もの間、感染し続けていることを示唆しており、それは理想的とは言えない」とバロー氏は付け加えた。

上海で回復した175人の患者を対象とした別の発表前での研究では、症状が発症から10~15日後に異なる濃度の保護抗体が検出されている。

誰の抗体が感染をより強く防ぐのかは明らかになっていない

 

「しかし、その抗体反応が実際に免疫力を意味するかどうかは別の問題である。それは私たちがもっと深く理解する必要があるということです。」

WHO緊急計画の技術リーダーであるマリア・ヴァン・カーホーブはコメントした。

確かに、多くの質問が残っている。

「COVID-19を克服した人が本当に保護されているかどうかを問う段階にきている。」とフランスの科学諮問委員会の理事長であるジャン・フランソワ・デルフラシー(Jean-Francois Delfraissy)氏は述べている。

免疫パスポート

タンジーにとっては、残酷な現実を排除することはできない。

彼は、「誰かがウイルスに対して開発する抗体が、実際に病気を悪化させるリスクを高める可能性があるかも知れません。最も深刻な症状は、患者が抗体を形成した後、その後に来ることに注意してください。」

今のところ、死にかけた人、症状が軽いだけの人、あるいは全く症状がない人など、誰の抗体が病気を撃退するだけの力があるのかもはっきりしていない。

それでは、年齢による違いはあるのだろうか?

これらすべての不確実性に直面し、一部の専門家は、人口の大部分が免疫を持っている時に(ウイルスが)自力で消滅するような、「集団免疫」戦略を説得することの賢明さについて疑問を抱いている。

「今のところ唯一の真の解決策はワクチンです。」とオーストラリア・パースにあるカーティン大学のアーチー・クレメンツ(Archie Clements)教授はAFP通信に語った。

同時に研究所では、さまざまな国や地域の人口がどの程度の割合で汚染されているかを調べるためにの抗体検査を次々と開発している。

このようなアプローチはイギリスとフィンランドで好まれているが、ドイツでは一部の専門家が人々が仕事に復帰できるようにする「免疫パスポート」のアイデアを浮上させている。

「現時点では時期尚早であると考えます。」とイェール大学医学部の感染症のサード・メル(Saad Omer)教授は述べている。

「数ヶ月後には、感度と特異性を備えた信頼性の高い抗体検査が可能となり、より明確なデータを得ることができるでしょう。」

1つの懸念は、COVID-19とは無関係の抗体を検出する検査によって引き起こされる「偽陽性」だ。

免疫パスポートや証明書のアイデアは、倫理的な問題も提起すると研究者たちは述べている。

「例えば、家族を養うためにどうしても仕事をしなければならない人が感染する可能性があるでしょう。」とバロー氏は述べている。



ここまでです。

免疫抗体の効果や持続性に問題があるとしても、集団免疫を獲得することはムダではないかと思います。

それに、ウイルス自体も今後一時的に強毒性を持つことも有るかも知れませんが、基本的に宿主を殺すほどの強毒性を持ち続けることは、ウイルス自身の絶滅につながることになるわけですから、ウイルスがそのような戦略を持つ可能性は低いと考えられます。

感染性の強さは仮に残ったとしても、弱毒性に進化変異(?)して地球上に生き残っていくのではないでしょうか。

SARSのようにワクチンを開発する前に終息した例もありますし、新型インフルエンザのように季節性の流行や致死率はある程度あるものの、今ではそれほど社会的な問題として議論されることがなくなったのですから、同様の道を歩むのではないかと思っています。

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