恐怖も不安も脳内では同じ処理をすることが分かった

11月18日、東京都内での新型コロナウイルスの新たな感染者の確認は493人となり、1日に確認された人数としては最も多くなりました。(NHK NEWS WEB 11/19)


東京都は、警戒レベルを最も高いレベルに引き上げましたが、飲食店などへの営業短縮要請はしない方針を明らかにしました。

世界に目を向けても、新規感染者数の増加はとどまることを知らないようです。

しかしですね、新型コロナウイルスを含む一般的な風邪ウイルスは、気温が低く湿度の低い季節に流行することは、すでに知られている事実です。

予測可能な事は、今後も感染者の増加傾向は更に強まり、今年の春頃までに増加したグラフのような推移になるに違いありません。

季節性のインフルエンザの流行のように来年の2月頃にピークを迎えたのち徐々にまた減少していくものと思われ、その後に続く増減の波は必ず有ると思います。

ですから、現在のような傾向はすでに予測出来ていたことであり、ヒステリックに叫び、恐怖や不安を更に煽るような報道には耳を傾けないで欲しいな、と思います。

冷静に事実は事実として受け止め、そしてさらりと受け流したいものです。

今回の記事にもIn Deepの記事を紹介しましょう。

感染の増加を「数」だけで見ていると社会は終わる : コロナウイルスの感染事例は「正確に気温と反比例する」ことを米ゴールドマンサックスが解析。年明けまでに現在の何倍にも増加する可能性(In Deep 2020/11/15)


真に恐ろしいのは、ウイルスではなく我々の心の中に巣くっている死への恐怖と、将来に対する漠然とした不安なのだと。

そこで、私たちの持つ感情である、これら「恐怖」と「不安」に関する研究報告を今回ご紹介したいと思います。

私たちは、これら「恐怖」と「不安」は別物と考えられてきました。

しかし、脳神経の活動を研究した結果、この二つの感情は私たちの脳内では、ほとんど同じ神経ネットワークを利用している、という事が分かったというものです。

恐怖と不安は脳内で同じ基盤を共有する


Fear and Anxiety Share Same Bases in Brain  Neuro Science News (2020/10/19)


要約:恐怖と不安は重複する神経回路を共有している。調査結果は、不安と恐怖が異なるトリガーと分離された脳回路を持つ別個の感情である、という一般的な信念と相反する結果となった。

 米国で最も一般的な精神疾患の一つである不安神経症は、COVID-19のパンデミックによって新たな高みに押し上げられている。米国疾病予防管理センター(CDC)の推定では、米国の成人のほぼ3人に1人、18~29歳ではなんと41%にのぼる人々が、臨床的に重大な不安症状を8月下旬に経験している

 最近の米メリーランド大学(UMD)主導の研究の結果は、不安の基本的な神経科学について長い間受け入れられてきた考え方が間違っていることを示した。

 UMDの心理学の准教授アレクサンダー・シャックマン(AlexanderShackman)とソウル延世大学の心理学助教授ホ・ジュヨン(Juyoen Hur)が率いる国際的な研究者チームによる報告は、恐怖と不安が重複する脳回路を反映しているという新たな証拠を提供している。

 調査結果は、一般的な科学的説明に反しており、主要な理論的な再集計の必要性を浮き彫りにしている。

 この研究はニューロサイエンス誌(Journal of Neuroscience)に掲載された。

 シャックマン教授は以下のように述べている。

 「「恐怖」と「不安」の概念的な違いは、ギリシャの古代哲学者ではないにしても、フロイトの時代にまでさかのぼります。近年、脳画像処理者や臨床医はこの区別を拡大し、恐怖と不安は異なる神経ネットワークによって調整されていると主張しています。」

 しかし、シャックマン教授は、彼らの新しい研究は、この古いモードが間違っていることを示唆する新しい証拠が急速に増加していると言う。

 「どちらかといえば、恐怖と不安は、大量に重複する神経ブロックのセットを使用して脳内で構築されているようだ。」と彼は述べた。

 一般的な科学理論では、恐怖と不安は明確であり、トリガーが異なり、脳回路が厳密に分離されているとされている。

 恐怖(特定の危険に対する反応)は、大脳皮質のしわくちゃの下にある小さなアーモンド形の領域である扁桃体によって制御されている、と考えられている。

 対照的に、不安(脅威が不確かなときに誘発される不安と覚醒が持続的する状態)は、隣り合う分界条床核(脳にあって不快な情動を司る領域)(BNST)によって調整されると考えられている。

 しかし、シャックマン教授らによるしい証拠は、これらの脳領域のどちらも特定の脅威や不確実な脅威に対して等しく敏感であることを示唆している。

 研究チームは、メリーランド・ニューロイメージング・センターの最先端のニューロイメージング技術を活用して、被験者が不快な画像や音と組み合わせた痛みを伴うショックを受けることを予想している間の神経活動をfMRIで定量化した。

 この「脅威」(を与える)のタイミングは、従来のカウントダウンタイマー(「3、2、1…」)またはランダムな数字の文字列(「16、21、8」など)のいずれかによって通知された。どちらの条件でも脅威の予測は、扁桃体とBNSTを含む脳領域の非常に類似したネットワークを活用していて、両者は統計的に区別がつかないほどの反応を示したのだ。

 研究チームは、特定の不確実な脅威(つまり「恐怖」と「不安」)を待っている間に関与している神経回路を調べた。その結果は、どちらの種類の脅威を予測しても、扁桃体やBNSTを含む脳のコアな領域の共通ネットワークを採用したことを示した。

 これらの観察結果は、不安障害、うつ病、その他の一般的な精神疾患の根底にある脳回路を発見するための、米国国立精神衛生研究所(NIMH)の探求の指針となっている研究領域基準(RDoC)枠組みに関する重要な疑問を提起している。

 「現在書かれているように、RDoCは、特定の脅威と不確実な脅威が、それぞれ扁桃体とBNSTを中心とする回路によって処理されるという考えを具体化しています。それは非常に両極端な考え方だと思います。」

 とシャックマン教授は述べ、RDoCの「厳密な分離」モデルは、世紀の変わり目に収集されたデータに基づいていることを強調している。

 「科学の実際の状態を反映させるように、RDoCを更新する時が来ました。それは私たちの研究だけではありません。実際、げっ歯類やサルを用いた一連のメカニズム論的研究や、公開されたヒトの画像に関する文献の新しいメタアナリシスは、すべて、同じ基本的な科学的教訓に集約されています。特定の脅威と不確実な脅威は、脳領域の共有ネットワーク、共通のコアによって処理されます。」と彼は言った。

 米国におけるNIMHの精神医学研究の戦略計画の最高峰として、RDoC枠組みは、研究者や製薬会社から民間の慈善団体や海外の資金提供機関に至るまで、幅広い生物医学の利害関係者に影響を与えている。シャックマン教授は、恐怖と不安の研究が、ここ米国および海外でどのように設計され、解釈され、査読され、資金提供されるかについて、RDoCは非常に大きな影響力をもっていると指摘している。

 「不安障害は、世界の公衆衛生と経済に大きな負担をかけており、その負担は増大しています。私たちは、途方もない科学的進歩を遂げましたが、既存の治療法は多くの患者にとって治癒にはほど遠いです。私たちの希望は、この研究のような研究が、感情のより良いモデルを構築するための一助となり、最終的には、衰弱させる不安やうつ病に苦しんでいる世界中の何百万人もの子供や大人のために、より効果的な介入戦略の開発を早めることができることを願っています。」

 とシャックマン教授は述べている。

原典)Anxiety and the Neurobiology of Temporally Uncertain Threat Anticipation



ここまでです。

 

「恐怖」も「不安」も脳内ではほとんど同じように処理される、と言うことは、今現在私たちの周囲にあふれている「不安」によって我々の扁桃体は常に刺激を受け、活性化しているということになるのですね。

扁桃体は、副腎とも関係し、刺激を受けることで副腎よりストレスホルモンとしても知られるコルチゾールを作り出します。

コルチゾールに長期的にさらされると神経細胞の萎縮が起こり、神経系にダメージを与えることにつながります。

うつ病(その他の精神疾患)の発症が増加傾向にあるようです。専門家は、精神へのダメージは現在よりむしろ新型コロナのパンデミックがある程度落ち着いた頃から急激に増加することを危惧している、と言います。

ストレスで脳が損傷することから回復させるために私たちができること(2020/05/26)

ストレスで脳が損傷することから回復させるために私たちができること

恐怖も不安も通常目に見えるものではないので、なかなか対処が難しいのでしょうが、それらを頑張って受け止めようとせず、さらりと受け流すことの出来るレジリエンスを高める能力を身に付けるべきなのでしょう。

今後の研究によって、具体的で効果のある方法が早く見つかる事を期待したいです。

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