男性は女性よりもウイルスで死亡する可能性が1.7倍も高い

性別によって特有の病気があることは私たちは良く知っていると思います。

さらに男性では、痛風や尿管結石などが多く、女性では高脂血症や白内障などが知られているようです。

しかし意外にも、感染症に関していうと男性の方が女性よりも感染するリスクが高いことは一般的に知られていることは少ないように思います。

というか、実は私も最近知りました・・・。

例えば結核で死亡するのは、男性は女性の1.5倍多いそうです。

それでは、新型コロナウイルスに感染した場合の死亡リスクはどうなのかということですが、この事について日本では報道が少なく、ざっと調べてもデータもそれほど多くないように見えます。

少し前のYahoo!ニュースですが、このような記事がありました。

 ・男性がコロナ重症化リスク1.9倍、死亡リスク1.4倍 ホルモンと喫煙が影響 Yahoo!ニュース(2021/1/14)

 

この記事には喫煙が関係しているように書かれていますが、喫煙と死亡リスクの因果関係はまだ分かっていないようです。

さらに記事元のAERAのサイトを見てみましたら、こんな記事も見つかりました。

 ・重症化のジェンダー差とワクチンの性差 女性は男性より「少量」で効果の可能性 AERA dot (2021/1/15)

※この記事のタイトルにある”ジェンダー”という表現はチョット気になります。ここではあくまで”性別(sex)”が正しい表現だと思うのですが・・・。

画像:AERA dot

 


もう少し、深く知りたい方はこちらのページも参考になるかも知れないですね。

 ■ 酪農学園大学 動物薬教育研究センター
 ・新型コロナウイルスは男性を好む?-病気の性差を考える-


それでは、今回の本題の記事を紹介したいと思います。

科学者たちがCOVID-19の結果における性差の謎を解き明かす

Scientists unravel mystery of sex disparities in COVID-19 outcomes Medical Xpress(2021/01/26)


ここからです。


 1年ちょっと前、

中国での新しいコロナウイルスの発生に関する最初の報告が出されたとき、高齢者と男性が最も致死的な結果のリスクが高いことが明らかになった。

 イェール大学の免疫生物学者である岩崎明子は、COVID-19の原因となるウイルスに対する男女の免疫反応の違いと、年齢がどのように影響するかを研究することで、この謎の新しい病原体の根底にある生物学が明らかになるだろうと、すぐに考えた。

 「年齢と性別は免疫学的変化が交差する場所です」と語るのは、イェール大学の免疫生物学・分子・細胞・および発生生物学のウォルデマール・フォン・ゼドウィッツ(Waldemar Von Zedtwitz)教授と、ハワード・ヒューズ医学研究所の研究者でもある岩崎氏だ。

 たとえば、研究者たちは、病原体に対する最初の防御ラインであるウイルス感染に対する自然免疫反応を制御する遺伝子発現のパターンが、男性では62歳から64歳の間で劇的に減少し始めることを発見したばかりであった。女性では、この免疫反応は人生の約6年後に衰え始めた(訳注:最後のこの文の解釈が出来ていませんので原文通りに訳しています。どなたか分かりましたらご教示ください)

 岩崎の研究室では、大学のウーマンズ・ヘルス・リサーチの支援を受けて、COVID-19の原因であるSARS-CoVに対して、男性が女性よりもかかりやすい理由を調査するための研究を迅速に開始した。

 4月までに、彼女の研究室は、男性と女性の免疫系の反応における特定の分子の違いを詳細に調べる研究を完了し、どの分子が保護を提供し、どの分子がより悪い結果に関連しているかを特定した。

 岩崎らは昨年、世界中から集まった研究者たちが、ウイルスが男性にとってより致命的なものにしているこれらの要因やその他の要因を詳細に明らかにした豊富な文献をまとめた。

 サイエンス誌の招待を受けて、岩崎とイェール大学のタカハシ・タケヒロ研究員は、1月21日に発表された論文で、これらの洞察の一部をまとめた。

 では、なぜ男性は女性よりもウイルスで死亡する可能性が1.7倍高いのだろうか。研究者によると、最初の説明の一つは、基本的な生物学に由来するという。

 女性には2つのX染色体を持っているが、男性には1つしかない。X染色体は免疫応答を調節する遺伝子が豊富に含まれているため重要だ。

 女性のX染色体の片方は沈黙しているが、場合によっては、両方のX染色体の主要な遺伝子が、自然免疫システム、つまり病原体を検出する早期警報システムを活性化する可能性がある。本質的に女性は感染症の初期段階で、単一のX染色体しか持っていない男性よりも免疫システムを強化することができるようだ。

 性ホルモンはまた、悪い結果を招きやすいという点で重要な役割を果たしていることが研究で明らかになっている。

 SARS-CoV感染のマウスモデルでは、オスのマウスの死亡率が高いことが観察され、メスの性ホルモンであるエストロゲンが保護的役割を担っている

 エストロゲンの存在は、SARS-CoV-2が細胞に侵入する際に使用する多くの細胞の表面にある受容体ACE2を抑制するのに役立っている。

 一方、男性ホルモンであるアンドロゲンは、ウイルスが細胞に感染する能力を高めるようだ。

 ある研究によると、前立腺ガンの治療のためにアンドロゲン除去療法を受けている男性は、COVID-19ウイルスに感染しにくいように見えるという結果がでている。

 さらに、年齢はCOVID-19感染に対する男性の免疫反応を増幅させ、時には妨害する。60代前半の男性が、新型コロナウイルスに対する初期免疫反応を起こす能力を失い始めると、他の免疫系分子による代償的な過剰反応が起こり、それがダメージを与える炎症につながることが研究者によって発見された。

 これらの炎症因子は、いわゆる「サイトカイン・ストーム」を引き起こす可能性があり、これは、重度のCOVID-19症例の特徴である肺や他の組織への深刻な損傷につながる可能性がある。

 男性と女性で異なる免疫系の反応の詳細を明らかにすることは、ワクチン開発とより良い臨床治療の双方に役立つだろう、と岩崎は述べた。

 「性別による違いを研究することで、このウイルスに対する免疫について多くのことが学べることは分かっていましたが、その結果がここまで明らかになるとは知りませんでした。うまくいけば、ワクチンは男女間の差をなくし、すべての人の死亡を減らすようになるでしょう。」と彼女は述べた。


ここまでです。

 

クスリの処方等は年齢層によって量が違ったりするのが当たり前ですが、将来には性別によっても処方量が異なったり、性別に合わせたクスリも出てくるのでしょうか。

そういえば、以前のこのブログでも女性が鎮痛剤使っても効かないのは男性が開発したクスリだから、という内容の記事を書いたことがあります。

 ・女性が鎮痛剤を使っても効かないのは男性が開発した薬だから(2020/6/9)

女性が鎮痛剤を使っても効かないのは男性が開発した薬だから

痛み止めだけでなく、他の多くのクスリはほとんどが恐らく男性が開発したものでしょうしね。

今回ご紹介した岩崎明子博士のように、もっと女性の研究者に頑張ってもらいましょう。

また生物学的な性別だけでなく、脳の使い方にも「男性脳」と「女性脳」という脳の活用領域にも違いがあるそうで、こちらは「中性脳」という中間領域の活用が今後の社会活動にとっても、精神的な健康にとっても必要だそうです。

 ・これからの社会にとって必要なのは男性脳と女性脳のバランス(2021/1/29)

これからの社会にとって必要なのは男性脳と女性脳のバランス

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