紫外線は私たちの腸内に住む微生物を豊かにし健康に導く
ここ最近、腸内細菌が人の健康に大きな影響を与えていることが、様々な研究で明らかになってきています。
私が集めた研究記事のストックもかなりの量が溜まってきているのですが、自分も消化し切れておらず紹介出来ていない記事も相当数あります。
そして、今回もまた腸内細菌叢がテーマです。
私の関心対象キーワードの以下の3つに引っかかって来たもので、
①腸内細菌叢
②太陽光
③ビタミンD
です。
③ビタミンDは②太陽光を浴びなければ体内で作れないですし、以前の記事でも書いているカルシウムもこのビタミンDがなければ、体外に流出してしまい、骨に蓄えることが出来なくなりますね。
なので、私の院の利用者にも骨の維持健康のためにも、日頃からカルシウムの多い食品を良く摂り、日光を浴びながらの運動をするように常におすすめしているのですね。
特に日光は私たち人間の健康にとって、無くてはならないもの(モノではないですが)の一つだと考えています。
ただし、長時間紫外線を浴び続けるのは害もあるので適度であることが必要です。
太陽光は腸内細菌叢を変えるのか?
ここからです。
研究は、ビタミンDが不足していた人は、紫外線(UV)暴露によって腸内細菌叢が変化することを示した。
サンシャインビタミンであるビタミンDは、健康上の結果に結び付けられる証拠はたくさんある。
たとえば、高緯度の地域に住む人は、紫外線への曝露が少なくビタミンD欠乏症になる可能性が高いことを意味し、多発性硬化症(MS)や炎症性腸疾患(IBD)などの疾患を発症するリスクが高い。
腸内細菌叢の研究により、微生物がこのような条件で重要な役割を果たすことが示されている。
しかし、ビタミンDと腸内細菌叢をつなげるものは何か?
カナダのバンクーバーにあるブリティッシュコロンビア大学の多くの研究者チームは、腸の細菌叢が紫外線にどのように反応するかを研究することで、この問いに答えようとした。
ビタミンDが不足している研究参加者が3回UVB曝露を受けたとき、彼らの腸内細菌叢は変化し、ビタミンDが不足していない参加者と同じ特徴示した。
チームはその発見をフロンティアズ・マイクロバイオロジー(Frontiers in Microbiology)に発表した。
UVB光は、細菌叢の「豊かさ」を高める
この研究には、実験に至るまでの3か月の間、ビタミンDサプリメントを摂取したもらった9人の女性参加者と、摂取しなかった12人の女性参加者が含まれていた。
すべての参加者は色白の肌、特にフィッツパトリックの肌タイプ* で1から3に分類された。
サプリメントを摂取した参加者のビタミンDの血中濃度は適切であると分類され、サプリメントを摂取しなかった人の1人を除く全員がビタミンD欠乏症だった。
すべての参加者は、UVB光への全身暴露を3回受けた。その結果、すべての参加者でビタミンDレベルの増加がみられた。
その後、処置を受ける前後で各参加者の腸内細菌叢の組成を比較した。
そして、実験の開始時にビタミンDが不足していたグループの細菌組成に、大きな変化があることを発見した。
「UVB暴露の前に、参加者は通常のビタミンDサプリメントを服用している女性よりも、多様性とバランスのとれた腸内細菌叢がありました。UVB曝露によって、細菌叢の豊かさと均一性は、細菌群が有意に変化しなかったグループと見分けがつかないレベルまで増加したのです。」
具体的には、ビタミンD欠乏症の参加者は、ファーミキュテス門とプロテオバクテリアの増加とバクテロイデスの減少を経験し、ビタミンDサプリメントを摂取した参加者の細菌叢とレベルを一致させた。
腸内細菌叢の変化の主役ビタミンD
Medical News Todayは、最初の研究著者であるエルス・ボスマンに、この研究について話を聞いた。
「ビタミンDの生成が、細菌叢の変化の主な原因であることがわかりました。そして、UVB光がビタミンDを生成することは良く知られています。現在では、健康的な腸を維持するためにビタミンDが重要であることを理解し始めています。」
「今まで、これらの事実は個別には知られていましたが、これは、それらを結びつける最初の研究です」
「1週間以内にこれほどの強い効果が見られるという点で、結果は驚くべきものでした。」
と、彼女は説明した。
ボスマンは、ビタミンDレベルを高めるために日差しの中でどれだけの時間を費やすのが良いのか、について聞かれたところ次のように注意すべきことを話してくれた。
「研究中、火傷を引き起こさない特殊なUVBランプを使用しました。これは、臨床現場で治療に使用される装置です。私の研究から、ビタミンDを生成するのに十分な日光暴露量を結論付けることは困難です。」と彼女は説明した。
なぜなら、私たちの個々の肌のタイプと、私たちが住んでいる環境の紫外線量に依存するからなのだ。
「残念ながら、食事だけで十分なビタミンDを得るのは本当に難しいので、冬にはビタミンDを補給するのが賢明です。あなたの体は、夏の日光からビタミンDを作るのに非常に効率的です。」
ビタミンDレベルの変動から生じる腸内細菌叢の変化が、健康にどの程度影響するかは、現時点では不明だ。
しかし、MSやIBDなどの炎症性疾患を持つ人々にとって、これがより重要かもしれないことを示唆している。
著者は彼らの論文で述べているように、男性と女性の参加者だけでなく、肌の種類全てを含めるべきで、さらに大きな研究が必要である。
「この研究では、参加者は、健康な女性でかつ青白い皮膚を持っている人に絞って利用しており、非常に限定されたグループでした」とボスマンは語った。
「より幅の広い年齢にし、より大きな研究グループで研究を繰り返し行うことは、非常に興味深いものになるでしょう。光線療法が、腸を炎症のある人々に有用であるかどうかをテストすれば、腸の健康を促進することができるでしょう。」
ここまでです。
*フィッツパトリックのスキンタイプ
フィッツパトリック尺度と皮膚がんのリスク。つまり、白いほど紫外線に敏感であり、皮膚がんのリスクが高い。
フィッツパトリックのスキンタイプ(Fitzpatrick skin typing)は、フィッツパトリックのスキンフォトタイプ(Fitzpatrick phototyping)など様々に訳されており、ヒトの肌の色を6段階に分類した尺度である。日焼けの反応やそれによる皮膚がんのリスク、皮膚科の処置や化粧品の反応を評価するめに用いられる。1975年にトーマス・B・フィッツパトリック(英語版)によって開発され。スキンタイプの分類
タイプI (0-6点) 常に火傷し、日焼けしない。(そばかす)
タイプII (7-13点) よく火傷し、日焼けは最小。
タイプIII (14-20点) 特に軽く火傷し、日焼けする。
タイプIV (21-27点) 火傷は最小で、よく日焼けする(褐色は中程度)
タイプV (28-34点) 非常にたまに火傷し、日焼けしやすい(暗褐色)
タイプVI (35-36点) 火傷しない(最も暗い暗褐色)出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
すごいぞ!腸内細菌
すべての参加者は、UVB光への全身暴露を3回受けた。その結果、すべての参加者でビタミンDレベルの増加がみられた。
結論は、たった3回の紫外線を浴びただけでもビタミンD欠乏症が改善され、健康な人の腸内細菌叢と同じような組成になった、ということですね。
それぐらい劇的な変化が紫外線を浴びることによって起こったと言うことです。
まだまだ、太陽光、ビタミンD、腸内細菌叢から目が離せません。
次回の記事もすでに決めてあり、次もこの腸内細菌叢がテーマになる予定です。