人の腸内細菌叢が感染症の重症化に大きく関与している事が分かった
緊急事態宣言で外出自粛中だったゴールデンウィークに再放送したNHKスペシャル『人体Ⅱ』遺伝子をつい最近観ました。
初放送の時にも興味深く視聴しましたが、一部見逃してしまった回もあって、今回は録画してシリーズの一気見をさせて頂きました。
4K放送の番組だったですが、買い換え後の大画面テレビで観たおかげで、映像・音声ともにとてもクリアでメチャクチャ感動モノでした。
実はそれまで、4K放送にはあまり興味はなかったので、せっかく4K放送が見られるTVを買っておきながら(消費税が増税になる前に買い換えたんです)、ほとんどチャンネルを合わせることはなったのですが、今回のようにハッキリ見えなかったものが見えるようになると、画質が落ちると観る気が失せるくらい変化するものなのですね。
そのシリーズの第4集が、ちょうど今回ご紹介したい記事の「腸内細菌叢」と新型コロナウイルスの関係性ですので、少しだけ予習・復習の意味で、以下の記事も読むと良いかも知れません。
・NHKスペシャル「人体」 万病撃退!“腸”が免疫の鍵だった
番組は、現代人に増加している『自己免疫疾患』は「免疫」の暴走が原因であり、その暴走を引き起こしているのが、「腸内細菌の異常」であることが分かってきた、というものです。
その中でも注目されている腸内細菌のひとつは「クロストリジウム菌」という種類のもので、アレルギーや多発性硬化症の患者さんに共通しているのが、このクロストリジウム菌が少ないということでした。
このクロストリジウム菌の大事な働きは、仲間の免疫細胞への過剰な攻撃を抑制する働きをする「Tレグ細胞」というのを作り出している。
つまり、このクロストリジウム菌が体内に少ないと、過剰に反応した免疫細胞を止める働きの「Tレグ細胞」を作り出す事が出来ず、免疫が暴走してしまった場合のブレーキ役がおらずコントロールすることが難しくなる、ということらしいです。
「新型コロナウイルスで重症化するのは免疫系の暴走が原因」も免疫細胞である」という記事も先日取り上げましたが、これも免疫細胞である「T細胞」がウイルスの感染によって枯渇し免疫が暴走し、炎症反応を起こすことで重症化をもたらす、という事でした。
腸内細菌は個人的にも非常に興味のある分野のひとつで、このブログでも多く紹介しているものです。
・次々と明らかになってくる腸内細菌叢の破壊がもたらす原因不明の病気
次々と明らかになってくる腸内細菌叢の破壊がもたらす原因不明の病気
線維筋痛症などの慢性疼痛疾患の根本原因は腸内環境の悪化
・健康を考えるとすべての「殺菌効果のある日用品」を遠ざけるべき
健康を考えるとすべての「殺菌効果のある日用品」を遠ざけるべき
それでは、本記事を以下にご紹介します。
腸内細菌叢:COVID-19感受性との関連の可能性
・Gut Microbiota: Possible Link With COVID-19 Susceptibility Thailand Medical News(2020/05/25)
ここからです。
中国杭州にある西湖大学の中国人研究者によると、腸内細菌叢の構成がCOVID-19患者の感受性の違いを部分的に説明できる可能性があるという。この疾患における腸内細菌叢の役割についてより多くの証拠が得られれば、効果的な診断、予後予測および治療法の選択肢につながる可能性がある。
2020年4月に未査読の論文サイト(medRxiv)に公開された研究は、腸内細菌叢の構成が感受性の違いを部分的に説明できることを示唆している。これにより、現在この病気について知られていることに新たな側面が加わることになる。これは肺疾患に影響を与える腸内細菌叢の役割を説明している。
インド・カルナタカのロイシンリッチバイオ研究所の共同創設者兼ディレクターであるディボジョティ・ダール博士(Dr Debojyoti Dhar)は、腸内細菌叢を詳細に研究しており、この分野に関する彼の研究は、さまざまな疾患における腸内細菌叢の役割に関する重要な洞察につながった。
ダール博士は、プロバイオティクス(※有用な微生物そのもの)とプレバイオティクス(※有用な微生物のエサとなるもの)が健康と病気で果たす可能性のある役割を研究し、COVID-19に関しても研究論文をウイルス研究誌に発表している。
彼らは、いわゆる「腸肺軸(gut-lung axis)」免疫における腸内細菌叢の役割、感染症や免疫におけるプレバイオティクスとプロバイオティクスを含む機能性食品の役割に注目した。
ダール博士は次のように説明している。
「COVID-19に対して社会で最も脆弱なグループは、高齢者、免疫不全の人々、および2型糖尿病、高血圧などの合併症を持つ患者です。これらの個人の腸内細菌叢は、健康な人と比較して異なるプロファイル(※構成)を持っていることが分かっています。」
「このような微生物の不均衡や腸内毒素症の発生は、このような多くの条件で徹底的に研究されてきました。」
「そして、年齢とともに腸の(※中に棲む微生物の)多様性が低下することも知られています。これは、腸内細菌叢とともに、腸内細菌叢のバランスを「非健康的」な状態に傾ける可能性があり、そのような患者のCOVID-19を含むさまざまな感染症に対する脆弱性に影響を与える可能性があるのです。」
これまでの研究で、腸内細菌叢がその保護作用、栄養作用、代謝作用を通じて健康に重要な役割を果たしていることが確認されている。
ダール博士はさらに付け加えている。
「私の知る限りでは、COVID-19は新しいウイルス媒介疾患であるため、COVID-19患者の腸内細菌叢を明らかにした主要な研究は報告されていません。しかし、中国からの小規模な症例では、COVID-19患者の中に腸内細菌叢の異常を示す患者がいることが明らかになっています。」
これには、COVID-19と腸内細菌叢との関連を示唆する数は少ないがいくつかの要因が見つかっている。
-SARS-Cov2ウイルスRNAの存在、または罹患した患者の多くの糞便に生きたウイルスが含まれていた。
-多くの患者に見られたさまざまな胃腸症状。
-最も脆弱なのは、高齢者、免疫不全患者、他の併存症を持つ患者であったこと。このようなすべての人々で、腸内環境異常と細菌叢の多様性の低下(特に高齢者)が観察されている。
-初期の研究では、腸内細菌叢が肺感染症との関連性が示唆された。
「多くの患者が胃腸症状を示し、多くの患者の糞便からウイルスRNAや生きたウイルスが発見されていることから、COVID-19が胃腸となんらかの関係を持っていることを示す証拠が今では存在します。」と博士は付け加えた。
中国の研究によると、腸内細菌叢の構成は、COVID-19患者の感受性の違いを部分的に説明することができるという。
研究者らは、COVID-19の重症化を予測する可能性のある、血液ベースのプロテオミック・マーカーを定義し、それをプロテオミック・リスク・スコア(PRS)と呼んでいる。彼らは、PRSが10%上昇すると、重症化のリスクが57%増加することを発見した。
研究者らはさらに腸内細菌叢を分析したところ、腸内細菌叢と重度のCOVID-19を予測するPRSとの間に優れた相関関係があることを発見した。
博士は、多くの研究者がCOVID-19における腸内微生物叢の関連性を調査していることを共有している。実際、英国を代表する科学者たちは、COVID-19における腸内微生物叢の役割を調査するよう英国政府に促している。
COVID-19疾患における腸内細菌叢の役割についてより多くの研究を行うことで、願わくば効果的な診断、予後、治療法の選択肢につなげたい。
博士はまた、患者のより迅速な回復に役立つかもしれない腸内細菌叢ベースの個別化されたサプリメントを提唱している。
ここまでです。
人それぞれ違う腸内細菌叢のプロファイル。
できる限り良好な細菌たちが活躍できるよう、腸内環境を改善・整えたいですね。
そのためには環境の土台となる私たち自身の身体(体・心・精神)づくりも重要でしょう。