スマホはトイレなみに汚染されていると聞いてあなたならどうしますか?

ウイルスや細菌など微生物は目に見えるモノではないので、恐ろしいものとして捉えてしまいがち。

「汚染されている」という言葉であらゆるメディアや商品・サービスを提供している企業は、私たちにそれに対する恐怖心を植え付け、そして成功しているといっても良いでしょう。

スマートフォンは細菌で汚染されている!

サウジアラビアのキング・アブドゥルアズィーズ大学で2015年に行われた研究

医学生の105人中101名(96.2%)のスマホから多くの細菌が検出された。

具体的には、

コアグラーゼ陰性ブドウ球菌が68.9%
バチルス属細菌が20.0%
黄色ブドウ球菌が16.2%
パントエア属細菌が0.95%
連鎖球菌が0.95%

の頻度で検出された。

黄色ブドウ球菌は細菌性食中毒の原因であり、バチルス属菌の中にも食中毒起因菌が含まれている。

今回の論文によると、トイレの中でスマホを使用する学生が59%おり、スマホの清拭に消毒薬を使用しないと答えた学生が68%にも達していた。

トイレを含む毎日の生活の中でスマホは細菌汚染し、消毒しないことからスマホ表面に細菌が残っていたものと思われ、さらに手洗いの不備も指摘されるだろう。

日本でも同様の調査が行われており、40台のスマホを調査したところ

23台(57.5%)から一般細菌
19台中1台(5.3%)から大腸菌
21台中3台(14.4%)黄色ブドウ球菌

が検出された。

細菌数は一般細菌で10cm2あたり

19台(47.5%)から1~9個検出
大腸菌で1~9個
黄色ブドウ球菌で10~29個
検出されたものもあった。

清掃回数は50%以上の方が1日0回と報告している。

・ 酪農学園大学 動物薬研究センターHPより 一部引用し編集

 

身近なコロナ感染リスク スマホは不潔、靴のウイルスは残る


ウイルスの巣窟は足元にもある。
3月25日付の英国版ハフポストが注意を呼びかけたのが、靴だ。

記事によると、公衆衛生の専門家キャロル・ウイナー氏が、靴の上に付着したコロナウイルスは数日間生存可能だと指摘。

また、救急医のクワンザ・ピンクニー氏は「靴底は靴の上部よりも多くの細菌やウイルスにとっての温床になる」と強調している。

身近なコロナ感染リスク スマホは不潔、靴のウイルスは残る より引用 Yahoo News(2020/04/14)

 

どれも事実ではあるものの、実際に私たちの健康を脅かす微生物はほんのわずかな種類だけあり、ほとんどが無害なものです。

食事の前の手洗いを行い、食事中はスマホをいじらない(出来れば指で顔を触らない)、ということをするだけでもけでも感染リスクは下げることが出来るでしょう。

全国調査は携帯電話と靴に付着する細菌は異なっている

National survey shows different bacteria on cell phones and shoes Science Daily (2020/06/09)

 

ここからです。


微生物はほとんど無害、専門家にかろうじて知られているグループを含んでも

概要:
米国におけるその種の最大の研究は、科学者にほとんど研究されてこなかったグループを含め、携帯電話や靴に生息する数千種類の異なるバクテリアを示している。


カリフォルニア大学デービスゲノムセンターの研究者であり、論文の筆頭著者でもあるデビッド・コイル(David Coil)氏は、6月9日にジャーナル「PeerJ」に掲載された論文について次のように述べている。

「これは私たちの周りに住む微生物の世界について、どれだけ多くのことを学ばなければならないかを浮き彫りにしています。」

近年、科学者たちは、地球上のあらゆる環境に存在する微生物の群集、すなわちマイクロバイオーム(微生物叢)の理解を深め始めている。

私たちは皆、私たち自身の個人的なマイクロバイオームを持ち歩いている。

人の体内や体の表面に存在する微生物の中には有害なものもあるが、これらの微生物の圧倒的多数は無害であり、中には有益なものが含まれます。

2013年から2014年にかけて、コイルは、ラッセル・ネッチス(Russell Neches)とUCデイビス・ゲノム・センターのジョナサン・アイゼン(Jonathan Eisen)教授らとともに、全国のスポーツイベントの観客から微生物を採取する取り組みを開始した。ボランティアが約3,500人の携帯電話と靴を綿棒で拭き取り、それらのサンプルをシカゴ大学のアルゴンヌ国立研究所に送って処理した。

研究者らは、サンプルからDNAを増幅して配列を決定し、その配列情報を使用してサンプル内の主要な細菌群を特定した。

研究チームは、同じ人の靴と携帯電話には、一貫して微生物の異なるコミュニティが存在していることを発見した。携帯電話の微生物は人のものを反映しているが、靴は土壌に特徴的な微生物を運んでいた。これは以前の結果と一致する。

靴の微生物は、人の携帯電話で発見されたものよりも多様性があった。

全国のイベントでサンプルが収集されましたが、研究者たちは決定的な地域的傾向を発見することは出来なかった。同じ都市でのさまざまなイベントで収集されたサンプル間に大きな違いがある場合もあれば、遠く離れた都市のサンプルが非常によく似ている場合も有った。

微生物暗黒物質

驚いたことに、細菌のかなりの割合は、研究者が「微生物暗黒物質」と呼ぶグループに由来していた。これらの微生物は、研究室で成長および研究することが難しいため、天文学者が宇宙の大部分を構成していると考える、目に見えない「暗黒物質」と比較されている。

これらの暗黒物質群は、研究室で増殖させるのが非常に難しく、科学者が遺伝子配列決定技術を使用して、私たちの周りの世界の微生物を探すようになって初めて発見された。

暗黒物質の微生物群の多くは、沸騰した酸性泉や栄養分の乏しい地下帯水層など、遠隔地や極端な環境に住み、一部は土壌などのより平凡な生息地でも発見されている。

「おそらく私たちは無知だったのでしょう、これらのサンプルに微生物暗黒物質群のバクテリアがこれほど豊富な細菌が見られるとは予想していませんでした。」とアイゼン氏は述べた。

これらの暗黒微生物群の多くは10%以上のサンプルから検出され、アルマティモナス(Armatimonadetes)とパテシバクテリア(Patescibacteria)の2つのグループが綿棒の50%近くから検出され、靴からのサンプルでは携帯電話からのサンプルよりもやや高い頻度で検出された。

アルマティモナスは土壌中に広く分布していることが知られている。

「驚くべき割合の人々が、これらの非文化的なグループの代表者たち(※つまり微生物)と一緒に、ありふれた物に乗って旅をしているのです。」とコイル氏は語った。



ここまでです。

見えない敵を知ることは必要でしょう。

ですが、過剰な恐怖心を持つ必要はないですし、現在の行き過ぎた消毒・殺菌・抗菌製品にあふれた生活は、人類の健康を向上させるものではなく、むしろ損なうものである、と私は考えています。

路上の消毒剤散布、コロナ除去に効果なし 健康上のリスクも WHO

写真は、AFPからです。

中国でも、コロナ対策で徹底した消毒を各地で続けています。

日本ではあまり報道されていませんが今でも感染者は出ており、感染者のあった地域では消毒液の散布を徹底的に行っていると聞いています。(私の義弟は北京に、妻の両親は武漢市がある湖北省に住んでいます。)

これに対し、北京市の疾病予防管理センターの責任者が有害であり、無益であると注意を促したというニュースが中国の人民日報に載っていましたので引用させて頂き、今回は終わりにしたいと思います。

2月27日に開かれた北京市新型コロナウイルスによる肺炎の感染対策記者会見で、市疾病予防管理センターの劉暁峰副センター長は市民に対して、過度な消毒は非科学的であるばかりか、有害かつ無益であると注意を促した。北京日報が伝えた。

劉氏によると、日常生活における頻繁な手の消毒も必要ないという。「手はそもそも無菌ではない。日常的な仕事・生活環境において、手で食べ物や清潔な物に触れる必要がある場合に予防目的で消毒するのも良いが、こまめに手洗いをすれば十分なことが多い

「また日常生活において過度に消毒剤を使用すべきではない。毎日、常に消毒剤を使えば、肌の粘膜を損ねる原因になる」と述べた。

車輪の消毒、靴底の消毒…過度な消毒は不要かつ有害 人民日報 日本語版(2020/03/02)

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