なぜコロナから回復しても後遺症に悩まされるのか?そのメカニズムが分かってきた。
コロナ後遺症の患者が増え続けているというニュースを何度か目や耳にしたことがあります。
「これほど多くの後遺症が起こる感染症はこれまでありませんでした。新型コロナウイルス(以下コロナ)は、風邪やインフルエンザとはまったくの別ものの感染症と考えたほうがいい」
女性は男性よりも後遺症が現れるリスクが1・4倍高いという。
引用元:週間女性Prime
こう話すのは『ヒラハタクリニック』の院長である平畑光一院長(内科医)。
同院では新型コロナウイルス後遺症外来を開設し、これまでに800人以上の後遺症に苦しむコロナ回復患者を診察してきたそうです。
・「コロナ後遺症」血管ボロボロ・倦怠感…無症状でも寝たきりに! 悪化の“分かれ道”(週間女性Prime 2021/02/11)
この記事に紹介されているように、ウイルス感染からすでに完治したにもかかわらず、様々な後遺症を発症し、未だに苦しんでいる患者さんが増加中だそうです。
この事に関して、今回もまた「In Deep」の記事を先に紹介させて頂いてから、本記事に入りたいと思います。
以下の記事の中盤からこの件について触れられています。
・血管に注入された新型コロナのスパイクタンパク質は、脳のバリア「血液脳関門」を簡単に通過し脳全体に広がることを知った日に、100年前のシュタイナーの「アーリマンに関する会議」の議事録を読めました(In Deep 2021/02/11)
上の記事では、科学雑誌「ネイチャー」の論文を紹介しています。
2020年12月16日のネイチャーの論文より
新型コロナウイルスは、スパイクタンパク質の S1サブユニットを介して細胞に結合する。静脈内注射された放射性ヨウ素化 S1(スパイクタンパク質)は、雄マウスの血液脳関門を容易に通過し、脳領域に取り込まれ、実際の脳空間に入ったことが示された。
新型コロナウイルスのスパイクタンパク質は、肺、脾臓、腎臓、肝臓にも取り込まれた。
鼻腔内投与されたスパイクタンパク質も脳に入りはしたが、静脈内注射による投与後の約 10分の1のレベルだった。 (Nature Neuroscience)
とありますように、新型コロナウイルスは「血液脳関門」という大事な脳を保護するためのフィルターであるこの関門を易々とくぐり抜ける事ができる、というものです。
ただし、これは直接新型コロナウイルスを血管内に注射されたものではありますが、それを補足するような形で発表されたものが以下の記事です。
COVID-19研究:カリフォルニア大が主導した研究で、脳周皮細胞が新型コロナウイルスの入口となり、潜在的な貯蔵庫になる可能性があることが判明した
・COVID-19 Research: University of California Led Study Finds That Brain Pericytes Could Be Entry Points For SARS-CoV-2 And Are Potential Reservoirs
Thailand Medical News(2021/02/12)
周皮細胞(ペリサイト)とは:
周皮細胞(しゅうひさいぼう、英 pericyte)は、Rouget細胞とも呼ばれ、中胚葉性の細胞で毛細血管壁を取り巻くように存在する。細胞全体は基底膜に包まれる。脳神経においては、血管周皮細胞(ペリサイト)は神経細胞、脳血管内皮細胞、星状膠細胞(アストロサイト)等と共に神経血管単位(Neurovascular unit、NVU)を成し、血管の成熟・安定化、血液脳関門の維持、虚血時の神経保護・修復等を担っているとされる。
ここからです。
カリフォルニア大学サンディエゴ校の科学者と、ラディ小児病院サンディエゴ、ラトガース州立大学ニュージャージー校、ウィスコンシン大学マディソン校の研究者が率いた研究により、
SARS-CoV-2(以下新型コロナウイルスに統一)が脳周皮細胞に感染することができ、ウイルスの持続性に寄与するウイルスの貯蔵庫としても機能する可能性があることを発見した。
研究概要によると、
「臨床的証拠は、中枢神経系(CNS)が新型コロナウイルス感染によって直接または間接的に頻繁に影響を受けることを示唆しているが、そのメカニズムは明らかにされていない。
周皮細胞は、新型コロナウイルスの感染ポイントとされている脳内の血管周囲細胞のこと。研究チームは、ペリサイト様細胞(PLC)が皮質オルガノイドに組み込まれると、新型コロナウイルスに感染することを示している。感染に先立ち、PLCは星状細胞の成熟と基底膜成分の産生を誘発したが、これは生体内でのペリサイト機能に起因する特徴である。
従来の皮質オルガノイドは感染の証拠をほとんど示さなかったが、皮質オルガノイド内のPLCはウイルスの「複製ハブ」として機能し、ウイルスは星状細胞に広がり、炎症性I型インターフェロン転写応答を媒介していた。
したがって、PLCを含む皮質オルガノイド(PCCOs)は、神経組織における新型コロナウイルスの侵入と複製をサポートする新しい「アセンブロイド」モデルを表し、PCCOsは神経感染の実験モデルとして機能する。」
研究結果は、新型コロナウイルスが皮質オルガノイドに侵入し、周皮細胞様細胞と統合されると感染を確立する可能性があることを明らかにしている。
研究成果はプレプリントサーバーで公開され、現在は査読中だ。
研究チームはこのほど、新型コロナウイルス感染が中枢神経系に与える影響を調査するため、実験モデルとして周皮細胞様細胞を含む脳皮質オルガノイドを用いた研究を実施した。
今回の研究成果は、新型コロナウイルスが皮質オルガノイドに侵入し、周皮細胞様細胞と一体化することで感染を確立することを明らかにした。
新型コロナウイルスは、主に上気道と下気道の両方に感染するエンベロープ型RNAウイルスだ。
しかし、今回の多くの症例では、心臓、腎臓、消化管、脳などの他の重要な臓器に大きな影響を与えていることがわかっている。
そして重篤な患者の大部分は、虚血性脳卒中、発作、脳症、脳炎-髄膜炎、神経血管障害、出血などの重篤な神経学的合併症を呈していることが明らかになっている。
さらに厄介なのは、多くのいわゆる「回復した」新型コロナウイルス患者が、感染した当初は無症状、軽度、中度、重度の状態を示したかどうかにかかわらず、数週間後あるいは、数ヶ月後に、さまざまな神経学的問題や状態を示す傾向があり、ウイルス持続性の仮説につながっている。
新型コロナウイルスがアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を介して宿主細胞に侵入した結果、ACE2をかなり高レベルで発現する神経堤幹細胞由来の周皮細胞が新型コロナウイルスの脳への主要な侵入点であると考えられている。
脳周皮細胞は、内皮細胞と星状細胞をつなぐ、血管周囲細胞であり、神経新生や神経細胞の変性、神経炎症、血液脳関門透過性など、中枢神経系の重要な機能を制御している。
この研究では、研究チームは脳周皮細胞が新型コロナウイルス感染に感受性があるかどうかを調査することを目的としている。
研究チームは実験室で、多能性幹細胞由来の神経堤幹細胞から周皮細胞様細胞を作製し、この細胞が、ACE2受容体を比較的多く発現していることが観察された。
次に、新型コロナウイルスに感染させた周皮細胞様細胞を曝露したところ、驚くべきことに、感染後72時間までの間にウイルスRNAとウイルス・ヌクレオ・カプシド陽性細胞が徐々に増加していることを観察し、感染動体を探った。さらに、感染した新型コロナウイルスの産生は、感染後24時間でほぼ100倍に増加したと推定した。
これらの発見により研究チームは、脳周皮細胞が中枢神経系への新型コロナウイルスの侵入口となっているのかどうかを調査した。
チームは、周皮細胞様細胞を成熟した皮質脳オルガノイドに統合した。これは、ヒトの大脳皮質を発達させる実験モデルとして用いられ、異なる脳細胞を三次元培養したものだ。
一連の実験を行うことにより、皮質オルガノイド内の周皮細胞様細胞が星状細胞と一緒に局在し、基底膜内に埋め込まれていることを確認した。
周皮細胞様細胞を含む皮質オルガノイドを新型コロナウイルスに曝露させると、有意に高いレベルのヌクレオカプシド陽性細胞とウイルスRNAが観察されることがわかった。
しかしながら、皮質オルガノイドのみを新型コロナウイルスに曝露させても、このような強力な感染は観察されなかった。
重要なことは、周皮細胞様細胞を含む皮質オルガノイドでは、ヌクレオカプシド陽性細胞が周皮細胞様細胞や星状細胞と共局在しているが、神経細胞には局在していないことである。
共焦点イメージングを使用して、星状細胞自体がウイルスに感染しており、感染した周皮細胞様細胞に隣接して局在していることを観察した。
これらの研究結果は、新型コロナウイルスが周皮細胞様細胞を介して星状細胞に感染することを示している。
また、新型コロナウイルスの病態についても、感染した周皮細胞様細胞を含む皮質オルガノイドにおいて、神経細胞死の有意な誘導が観察された。
さらに、いくつかのI型インターフェロン刺激遺伝子の転写アップレギュレーションが観察され、新型コロナウイルスに感染した周皮細胞様細胞を含む皮質オルガノイドでは、I型インターフェロンによる炎症反応が亢進していることを示している。
今回の研究成果では、新型コロナウイルスが周皮細胞様細胞に感染する可能性があり、皮質オルガノイドを周皮細胞様細胞と融合させることで、ウイルス感染に対する感受性が大幅に高まることが明らかになった。
ウイルスに感染した周皮細胞様細胞は、星状細胞を含む他のタイプの脳細胞に感染を広げることができる。
I型インターフェロン応答の活性化と神経細胞死の誘導は、新型コロナウイルスに感染した周皮細胞様細胞を含む皮質オルガノイドにおいて観察される重要な病原性応答である。
研究チームは、彼らが開発した皮質オルガノイドモデルが中枢神経系における新型コロナウイルスの病態研究に役立つと考えている。
重要なことに、研究結果は、これらの脳周皮細胞が新型コロナウイルスの貯蔵庫としても機能し、ウイルスの持続性に寄与する可能性があることを示唆している。
ここまでです。
以前に比べてかなり分かってきたこの「新型コロナウイルス」ですが、まだまだ謎の部分
の多いウイルスであることが分かります。
そこに来ての新型ワクチン。
これから一体どうなるのか?
希望と懸念に揺れ動きます。