いくつかの電子デバイスを同時に見たり操作するマルチタスクは注意力や認知機能を低下させ認知症を誘発する

いくつかのデバイスを同時に使いわけるのはなんとなく「出来る人」のように思いません?

効率性を重視するあまり、同時に様々な作業を強いられてきた経緯もあるかもしれません。

しかし元々、私たち人間の脳はマルチタスク(複数の作業等を同時に行う事)をすることが苦手のようです。

特に高齢になるほどその傾向は強くなるようですが、高齢者に限らず若い人でも注意力や運動能力に悪影響がでることが報告されていて、私の以前のブログでは、電話をかけながら歩行をした場合に、認知機能と運動能力、両方の機能に悪影響がでることを記事にした事がありました。

歩きスマホ(マルチタスク)は認知能力と運動能力を低下させる(2020/2/28)

歩きスマホ(マルチタスク)は認知能力と運動能力を低下させる

また、より伝送速度、容量の大きな5G(第5世代移動通信システム)ネットワークがサービスを開始しており、より高い周波数を利用した5Gは現行の4Gシステムと比べ、健康被害が懸念されてもいます。しかしこれらは少数派の意見であり、様々な利便性のほうに軍配が挙がるため、大多数の人達にとっては歓迎されているようです。

実は携帯電話の普及と認知症の間には相関関係がありそうだということは、以前から知られていたのですが、特にここ最近のアメリカでは「若年性認知症」になる若者が急増しており、

その数なんと、

「2013年から 2017年の4年間で 200%増加した」

というものです。

しかもこれはアメリカに限ったことではなく世界的な傾向でもあるようです。

詳しくは、最近よくご紹介するIn Deepの記事のリンクを記載しましたので、興味がありましたら是非読んでみたらよいと思います。

アメリカで「若年性認知症」がすさまじく急増。2013年からの4年間だけで200%以上も増加。そして思い出す「携帯の放射線が耳周囲の毛根細胞のDNAを破壊する」という研究 (In Deep 2020/11/25)


それではと思い、日本における65歳未満の若年性認知症のデータを探しましたが、厚生労働省のホームページにあるデータの最新版でも2008年~2010年とすでに10年前のデータでした。

「18-64歳人口における人口10万人当たり若年性認知症者数は、47.6人」

若年性認知症の実態等に関する調査結果の概要及び厚生労働省の若年性認知症対策について 厚生労働省 平成21年3月19日発表 


東京都健康長寿医療センターが今年7月に発表した公表データ(PDF)によれば、

65歳未満の若年性認知症患者、人口10万人当たり50.9人と推計され、若年性認知症者の総数は 3.57 万人と推計される。

 

約10年前と比べて、3.3人増加しています。

日本はそもそも超高齢社会に入っているので、認知症が増えることはあっても減ることは到底考えられませんね。

ご紹介したIn Deepの記事は携帯電話の放射線(電波)の悪影響についてでしたが、これから紹介する記事は、いまや片時も手から離すことが無いスマホとメディア・マルチタスク(つまりスマホを使いながらテレビを見たりすること)が、記憶力の低下や注意力の低下と関連付けられた、というものです。

 

研究者は記憶力の低下を注意の欠如とメディアのマルチタスクに関連付けた


Researchers Link Poor Memory to Attention Lapses and Media Multitasking Neuro Science News(2020/10/28)


ここからです。


新しい研究では、マルチメディアのマルチタスク、記憶力低下、注意力を維持することの難しさとの間の隠された相関関係が明らかなった。

 目は心の窓かもしれないが、記憶についての洞察力を垣間見ることができるといえる。スタンフォード大学の科学者たちは、神経活動と瞳孔の大きさに基づいて、個人が記憶するか忘れるかを予測できるようになった。

 「私たちが生活しているとき、私たちは知識を意識的に思い起こさせることができずにイライラする事がありますね。幸いなことに、科学は今では、個人が記憶に保存されている何かを思い出せない理由を説明できるツールがあります。」

 と、スタンフォード大学のアンソニー・ワグナー(Anthony Wagner)氏は述べた。

 科学者チームは、なぜ人々は時々思い出したり、忘れたりするのかを調査することに加えて、なぜ私たちの中には他の人よりも記憶の想起が良い人がいるように見えるのか、また、メディアのマルチタスクがどのように要因となるのかを理解したいと考えた。

 今週号の「ネイチャー(Nature)」に掲載されたこの研究は、 アルツハイマー病のような記憶状態に影響を及ぼし、日常生活における人々の注意、ひいては記憶を改善するためのアプリケーションにつながる可能性がある、これらの基本的な質問に答え始めた。

瞳孔の大きさとαパワー

 記憶に関連した注意力の低下を監視するために、18~26歳までの80人の被験者に瞳孔を測定し、次に、脳波(具体的には後部アルファパワーと呼ばれる脳波)を用いて脳活動をモニターし、以前に学習した項目を思い出す、または以前に学習した項目の変更点を特定するなどのタスクを実行してもらった。

 「頭蓋骨の後方のアルファパワーの増加は、注意の遅れ、心の彷徨い、注意散漫などに関連しています。我々はまた、瞳孔径の収縮(特にさまざまなタスクを実行する前に)がパフォーマンスの反応速度の遅れとより多くの心の彷徨いに関連していることもわかっています。」

 と、研究主執筆者のケビン・マドレ(Kevin Madore)氏は述べている。

 また、注意力の維持能力の違いは、被験者が画像の中で段階的に変化したのかをどの程度識別できたかを調べることで測定され、メディア・マルチタスクは、与えられた時間内にテキストやテレビの視聴など、複数のメディアをどれだけ利用出来たかを報告させることによって評価された。

 その後、個人間の記憶力を比較したところ、持続的な注意力が低い人と、メディアのマルチタスクが多い人は、どちらも記憶力のパフォーマンスが悪いことを示した。

 ワグナーとマドレ両氏は、彼らの研究は因果関係ではなく相関関係を示していることを強調している。

 「メディアのマルチタスクが増えることで、持続的な注意力や記憶力の障害を引き起こすとは言えないが、相互作用の方向性については、ますます多くのことが分かってきています。」とマドーレ氏は述べている

覚えておくための準備

 ワグナー氏によれば、この分野全体が向かっている一つの方向性は、学習の前に、またはこの場合のように、記憶する前に何が起こるかに焦点を当てることである。それは、記憶が目標指向の認知に大きく依存しているためだ。記憶を取り戻すために、基本的には、記憶する準備が出来ている必要がある

 「注意力が学習や記憶にとって重要であることは論理的ですが、ここで重要な点は、記憶をし始める前にも起こることが、現在の目標に関連する記憶を実際に再活性化できるかどうかに影響を与えるということです。 」とワグナー氏は述べている。

 記憶の準備に影響を与えるいくつかの要因は、すでに私たちのコントロールの範囲内にあるので、それを想起を支援するために利用することができる。たとえば、注意力、記憶の準備ができている事を意識的に認識し、注意力を散漫にしないようにすることで、個人の考え方に影響を与え、周囲の環境を変えて記憶力を向上させることができる。

「ハッキング」メモリ

 これらの比較的単純な戦略は今すぐにでも応用できるが、研究者は、いずれは人々が夢中になっている状態を維持するのを助けるために採用できる、注意力を訓練するための演習または介入の対象となる可能性があると指摘している。これらは「クローズドループ介入」と呼ばれ、活発な研究分野である。

 一例として、ワグナーとマドレは、瞳孔のサイズに基づいてリアルタイムで注意力の低下を検出するウェアラブル・アイセンサーを想定している。センサー装着者が目前のタスクに注意を向けるように指示されれば、センサーは学習や情報の想起を支援することができるようになるだろう。

クレジット:スタンフォード大学

 最後に、注意状態の測定や、記憶を導くための目標の使用に与える影響の測定の進歩は、記憶に影響を与える疾患や健康状態の理解を深めるためにも期待されている。

 「私たちは今チャンスがあります。注意をサポートする脳のネットワーク間の相互作用の探求は、目標と記憶の利用が、アルツハイマー病とは無関係に高齢者の記憶の個人差にどのように関連しているのかに役立ちます。」

原典)Nature (published 28 Oct.2020)
Memory failure predicted by attention lapsing and media multitasking


ここまでです。

ひとつの作業に集中する環境づくりが大事のようです。

ついついやりがちなスマホ操作や画面を見ながら他の作業をしたりするのは認知症を早めることになりそうなので、大事な作業や学習時にはスマホから離れましょう。

集中力を高める瞑想などを作業前に行うのも効果がありそうです。

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