『イスに座るときの良い姿勢』を身に付ける
現代人は座っている時間が非常に多くなっている
現代ではイスに座る生活が多くなり、デスクワーク中心の人では、ほぼ丸一日座りぱなしと言う方も少なくないでしょう。
「日本人の成人が一日に座っている時間は約7時間で、世界20カ国の成人データと比較して最長である事が分かっています。日本人は座っている時間の世界一長い国民なのです」(「座りすぎが寿命を縮める」 岡浩一郎著)
同じ姿勢を長くし続けることで、からだのある部分により多くのストレスが長時間かかることで筋肉が緊張します。首や肩、腰の特定の筋肉が緊張することで硬くなります。硬くれば血流が悪くなり、それがコリや痛みとして感じるようになるのです。一時的であれば、休養することで身体は回復しますが、その状態が常に続くようであれば、それ自体がクセとなってからだが歪んでいってしまうのです。
整体などでいくらこの状態をリセットしても、いつもこのような同じ姿勢をとり続けていれば、またすぐに再発してしまいます。ですから、セルフケアが大事なのです。
悪い座り方の例
まずは、悪い例です。下の写真を見て下さい。
一般的にこのような座り方をする人が多いかと思います。
どかっと腰を下ろし、背もたれにもたれかかり、腰と背もたれの間に大きなすき間が空いています。お腹がボテッと前にせり出し、肩から背中にかけて丸まっています。頭はこれが楽だと習慣で思わされていますが、身体は悲鳴を上げています。
重力の軸(頭から真っ直ぐに下りている線)と背骨の軸(斜めに引かれている線)が重なっていないので、特定の部分に力が集中しやすくなります。
パソコン作業が入れば上半身はさらに丸くなり、アゴを上げて頭を起こし、パソコンの画面に見入るようになるため、背中は丸まって張り、首は重い頭を支えるために、首回りの筋肉はピンと張り詰めて硬くなってしまっています(いわゆるストレートネックの状態)。
その上半身を支えるために、腰とお尻にかけても筋肉が緊張し、次第に腰も痛くなってくる・・・。こんな姿勢を長時間続けていれば、身体が壊れるのは時間の問題です。
良い座り方の例(立ち座)
次に良い座り方の例を説明します。下の写真を見てください。
上の写真と大きく異なるのは、背もたれを使っていません。また座面全体の半分ほどしか使わずに浅く座っています。
お腹が凹み、代わりに胸が前に張り出しています。頭は後ろに引かれ、重力の軸と身体の中心軸が揃っているため、上半身の重さは背骨で支えられています。筋肉で身体を支えていないので、筋肉は楽なはずです。(この姿勢で脳は違和感を感じていますが、慣れてくるとその違和感も消え、これが楽だと認識するようになります)
この良い姿勢のポイントは、二つあります。
①イスに浅く座り、坐骨(お尻の左右にある出っ張り)を座面に引っかけるような感じ。
②両ひざを曲げ、両足を座面下に入れ込む。こうすることで骨盤が前傾し、背骨が真っ直ぐになる効果がある。
※写真では両足をイスの下に折り込んでいますが、現在は両足を膝直下に置き、膝の角度が直角になるように指導しています。
実はこちらの姿勢のほうが、より骨盤の前傾を意識せずに行えるのですが、足首や太ももの下がイスに圧迫されるためにしびれが出る場合も有ります。
なので、両足を膝垂直下に置く方法とこの方法を交互に行うのもよいと思います。
イスに座るときの注意すべきポイント
■ 意識すべき6つのポイント
下の写真を見てください。
写真には6つの白い矢印がありますね。矢印の方向と大きさに注目してください。
まず、お尻をイスの端に引っかけるようにように座ります。
両足は膝下垂直に下ろします。両手を写真のように右手をみぞおち部分に、左手を下腹部(おへそより指1本分下)に当てましょう。
① 身体前面に置いてある両手をのぞき込むと、おそらく左手(下腹部)がのほうが前にいっていると思います。
② 下腹部をへこませて(腰がそる形になります)、右手(みぞおち)の方を下の手と同じ高さにするか、みぞおち側のほうが気持ち前に行くようにしましょう。
③ 頭を上げ、アゴを後ろに引き(頭を後ろに押しつけるようなイメージです。アゴだけを引くというのとは違います。)、額を前方にするような感じです。
④ 写真のように耳、肩、肘、坐骨のラインを結ぶと真っ直ぐになります。
※重要!!
腰を強く反らせないでください。
腰痛が強くなることがあります。【腰を反らす】と表現していますが、みぞおちの背中側(両手肘あたりの胸椎)を意識して、その部分を前にするようにします。
【胸を張る】といった表現の方がより近いかなと思います。
こうすることで自然に腰が反るような形になるはずです。
最初のうちは、この姿勢を取ると違和感を多少感じるかも知れません。
しかし何度もこの座り方を繰り返すことで、脱力(リラックス)してもこの姿勢が自然ととれるようになってきます。それまで練習を頑張りましょう。慣れてくると、今までの座り方だと疲れやすく、座りずらくなってきます。
姿勢を維持するためには、体重は背骨で支えていますが、からだを安定させるために背中とお腹の筋肉を微妙に使い続ける事になります。
この姿勢を30分維持出来る体力をつけるように努力しましょう。出来てしまえば、強く意識することなくこの姿勢が出来るようなっているはずです。
※来院された際に、私の座り方を観察すると良いと思います。自然にこの座り方をしていると思います。
■ 脚の開きについて
両脚は股関節の幅に開きます(股関節の幅で左右の大腿骨はほぼ平行になります)。
右の写真のように軽く握った両拳を膝内側に入れます。男性の場合であれば、拳二つ分、女性であれば、拳一個から1個半程度が入る幅、に開いて下さい。
こうすることで股関節の幅位の開き方になります。
両足は足首(くるぶし)が膝の真下に来るように床に置きます。
■ 良い脚の開き方・脚と足の位置
両脚は股関節の幅になっていて、両足ともにほぼ平行になっています。
膝のお皿は正面に来ており、お皿の延長線上に、足指の人差し指または中指があります。
この姿勢ですと、座る時、立ち上がるときにも膝の屈曲運動が正常な範囲で行われるために、膝への負担が少なく壊れることはありません。
■ 悪い脚の開き方
開き方の悪い例(L):男性に多いケースです。これでは脚が開きすぎです。そのために膝のお皿が斜め前を向いてしまっています。
開き方の悪い例(R):女性に多いケースです。もし両膝をつけるのであれば、両足もそろえる必要があります。
どちらのケースも立つとき又は座る時に膝への負担が大きく、膝を壊す可能性が高くなります。
☆膝が悪い方は普段から、写真の悪い例のような座り方になっている方が多くいますので、普段から注意しましょう。
※初掲「いやさか通信」2016年2月号より(追加:姿勢指導ガイドブックから)