触れるだけでも強烈に痛むアロディニアの原因に一歩近づいた

アロディニア・・・あまり聞いたことがない病名かも知れません。

・アロディニアとは

通常では疼痛をもたらさない微小刺激が、すべて疼痛としてとても痛く認識される感覚異常のことである。異痛症とも言う。(Wikipedia)

 

痛みに対して過敏な方がいますが、この病気はそれがより強烈に出る病気です。帯状疱疹後の後遺症などもこのような神経性傷害痛に分類されます。

現在までのところ万人に有効な治療法は無く、対処療法しかありません。

また、片頭痛を持っている方が発症しやすいという報告もあり、大脳の神経組織の過敏によるものである可能性もあるのですが、今回ご紹介する記事は脊髄神経系の痛みの処理にも違いがあることが分かった、というものです。

 

アロディニア(異痛症)を暴く:なぜ軽いタッチが苦痛を感じるような痛みを伴うのか


Uncovering Allodynia: Why a Light Touch Can Feel Agonizingly Painful 
 Neuroscience New & Research(2020/11/13)



ここからです。


ピッツバーグ大学医学部の疼痛研究センターの研究者は、機械的アロディニアの背後にあるさらなる複雑性(つまり軽いタッチなどの無害な刺激による痛みの感覚)を明らかにしたことを学術誌「ニューロン(Neuron)」で発表した。

 機械的アロディニアを引き起こすさまざまな種類の損傷が、皮膚から脳への情報を処理する別個の脊髄回路を活性化することが発見された。この発見は、すべての患者に鎮痛剤を使っても有害な感覚が緩和されない理由を説明してくれるかもしれない。また、疼痛管理の新しい治療戦略では、痛みの信号が脊髄で処理される方法を考慮する必要があることも示唆している。

 「痛みの結果が同じであっても、信号を伝達する神経回路は、関節炎や神経外傷などの損傷の種類によって異なっているのです。そして、怪我の種類に応じて異なる神経回路を持っているので、損傷の種類によっては治療がうまくいかないことの理由を説明するかもしれません。」とレベッカ・シール(Rebecca Seal, Ph.D.)博士は述べている。

 機械的アロディニアを経験している患者にとって、最もありふれた行動でさえ痛みを伴うことがある。たとえば、服を着たり、ベッドで寝返りをうつことさえ、耐え難いほどの苦痛を伴うことがある。このような状態を治す治療方法は今のところない。

 最近の研究では、軽く触れた後の痛みの知覚に皮膚の受容体が重要な役割を果たしていることが明らかになったが、皮膚の神経終末から痛みの感覚が形成される中枢神経系へ伝達される方法についてはほとんど知られていなかった。

 「一般的に、機械的アロディニアは中枢神経系の基礎となる神経回路に関して均一な状態だと考えられています。しかし、私たちは今、そうではないことが示されました。」とシール博士は述べている。

 大学の研究者は、いくつかの痛みモデルを用いて、脊髄の後角の最外層(脊髄の3つの灰色の柱の1つ)にあるカルレチニン発現(CR)ニューロンが機械的アロディニアを伝達するために重要かどうかを判断した。

 マウスでの実験は、これらのニューロンが、神経損傷ではなく炎症性損傷によって誘発される痛みの信号を伝達するために重要であることを示した。

 逆に、脊髄のニューロンの別のサブセット(今回は後角の第2層と第3層の境界でCRニューロンに隣接して配置されているPKC-ガンマニューロン)は、動物に神経障害性疼痛を感じさせても、炎症性の痛みは感じさせないことに関与していた。

Neuron On Lineより

 最後に、研究者らは、後角の層のより深い位置にあるコレシストキニン(CCK)ニューロンが両方のタイプの傷害の痛みに重要であることを発見している。

 「痛みの脊髄回路がどのように構成されているかがわかったので、遺伝子治療を使って痛みを遮断することができるようになりました。」とシール博士は述べている。

 博士の研究室は現在、機械的アロディニアを経験している患者の脊髄のニューロンを標的とする方法を、ウイルス遺伝子治療と化学遺伝学を用いて開発している。

 「感覚ニューロンがどのようにして痛みの信号を伝達しているのかを理解するために多くの研究がなされてきましたが、脊髄で何が起こっているのかについてはあまり知られていませんでした。このユニークな方法でブラックボックスを解読することは、本当にエキサイティングです。」と博士は付け加えた。

 同じ号のニューロンに掲載された論文には、 カリフォルニアのソーク生物科学研究所のグラジアーナ・ガットー博士とマーティン・ゴールディング博士の共著によって、同様の実験的アプローチを使用して、急性の痛みや触覚に対する運動行動反応の配線を説明している。

原典)Mechanical Allodynia Circuitry in the Dorsal Horn Is Defined by the Nature of the Injury Neuron


ここまでです。

まとめると、脊髄神経にも回路を接続したり切ったりするスイッチがあり、入力(痛みの種類)によって回路をつなげる異なるスイッチがあるということのようです。

あくまでも西洋医学的アプローチなので、目に見えるものに対しての研究ですが、こういった難しい病気には必ず心因的なものも隠されているのでは無いかと思います。

ですので、今回の記事のように脊髄神経(中枢神経系)と大脳神経へのアプローチをする整体や鍼治療などは医学的エビデンスが少ないのですが、私は有効だと考えています。

 

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