整体に行っている人、行こうと思っている人にとって「健康」とは、おそらく「痛みのない生活」こそが「健康」だと思われていると思います

まえがき

整体に行っている人、行こうと思っている人とって「健康」とは、おそらく「痛みのない生活」こそが「健康」だと思われていると思います。

なので、私たちのところには「痛み」だけをできるだけ早く取り除いて欲しいと来院する方がほとんどです。そして残念ですが、その方達の多くは、「なぜ」痛みが起きているのかを無視しているように感じています。(もちろん、いま痛みが無くても身体のコンディションを整えるためや、将来の不安を減らすために利用されている方も少数派ではありますがいらしゃいます)

確かに、「痛み」など不快な症状は、ときに日常生活を普通に送ることを困難にすることもあり、その苦しい状態を少しでも早く楽にして差し上げたい気持ももちろんあります。

ですがその「痛み」をただ取る、抑え込むという発想からパラダイムシフトし、まずはなぜ「痛み」が出ているのか、自分の生活習慣などから見直し、「痛み」の出ないからだになるためには、何が必要で何が不必要なのかを考えて頂きたいと思っていますし、それをお伝えしていく事が、我が国の「莫大な医療費」の削減に微力ながらでも貢献できれば、と考えています。

 

そこで、今回は「健康」について、みなさんと考えてみたいと思います。大きなテーマですが、まずは我が国における医療費の最新データをみていきましょう。

医療費が大きな負担に

医療費が国家予算の中で非常に大きな負担になっているのは、みなさんもご存じでしょう。超高齢化に向かっている日本は、今後医療費が減少することはないでしょう。

下記のデータは厚生労働省のホームページで見る事が出来ます。

『平成27年度は、国民医療費が42兆3,644億円であり、平成26年度は、40兆8,071億円。一年間に1兆5,573億円、率にすると3.8%の増加となっている。人口一人当たりの国民医療費は33万3,300円、前年度の32万1,100円に比べ1万2,200円、3.8%の増加。

医科診療医療費を主傷病による傷病分類別にみると、

① 「循環器系の疾患」(構成比率 19.9%) 5兆9,818億円

② 「新生物」(構成比率 13.7%) 4兆1,257億円

③ 「筋骨格系および結合組織の疾患」(構成比率 7.7%) 2兆3,261億円

④ 「呼吸器系の疾患」(構成比 7.4%) 2兆2,230億円 』

(厚生労働省「国民医療費の概況」)

 

傷病分類別医療費は、新生物のように、患者数は少ないが患者一人あたりの医療費が平均して大きいケースと、筋骨格系及び結合組織の疾患のように、患者一人あたりの医療費は相対的に少ないが患者数が多いことによって高くなっているケースがあります。

 

『年齢階級別にみると、65歳未満では「新生物」(13.0%)が最も多く、65歳以上では「循環器系の疾患」(25.2%)が最も多くなっている。また、性別に見ると、男性では「循環器系の疾患」(21.2%)、「新生物」(15.1%)、「腎尿路生殖器系の疾患」(8.3%)、女性では、「循環器系の疾患」(18.6%)、「新生物」(12.4%)、「筋骨格系及び結合組織の疾患」(9.9%)が多くなっている。』

(厚生労働省「国民医療費の概況」)

 

私ども整体院などでは、この3番目に多い「筋骨格系および結合組織」に関する疾病の一部分の代替になるものと考えられます。

どうして医療費は増え続けるのでしょうか?

およそ以下3つの理由が考えられます。

① 高齢化社会
② 医療の高額化(高度医療や高価な薬剤による)
③ 健康に対する意識

①や②は個人だけでは解決できない問題ですが、③は私たちひとり一人の意識が変わることで、医療費の抑制はできると考えています。

健康に対する意識を変えるには

それでは、健康に対する意識を変えるには、どうしたらいいのでしょうか?

病気や薬に対する考え方を変える

特に日本人は、病気や障害は「悪くなってから治すもの」と思っている方が大多数を占めていると思われます。その背景には西洋医学的には、 「症状がでないことには病気ではないので、手の打ちようがない」という側面がある でしょう。

そして、治す人(医者)と治してもらう人(患者)という固定化された関係もあると考えています。

更に付け加えるなら、日本人の薬に対する考え方です。 日本人は一般的に、薬は飲み続けるものだという意識が高い国民なのではないかと思います。これには漢方薬などは、効果が出るまでの時間が非常に長いものが多く、病気を治すというよりも、体質を改善し、病気に対する免疫力や回復力をつけることを目的としたものが多いからだと考えます。

そのためか、親の世代を遡るほど、薬に対する拒否反応は少なくなるように個人的に感じています。

健康に対するアプローチ方法を知る

健康に対するアプローチ法は大きく二通りあります。

① 外から内に(アウトサイド ・ イン) :
  薬などを体外から取り入れ回復させる

② 内から外に(インサイド ・ アウト) :
  体内に備わっている治癒力が回復させる

一般的に病気を治そうとする場合、まず①の方法のように、出ている症状に対して薬を飲んで対処する考えがまず思い浮かびますね。体の外から何かを入れる事で、入れたモノに対して体になんらかの反応をさせることで、回復を促します。そして狙った通りの反応であれば良い反応、思っていた結果でなければ悪い反応という判断をします。

②は体が本来持っている治癒力を働かせて自分の力で病気などを治す事になるわけですが、①の方法ではこの本来持っている力を、無理矢理に起こしているわけです。

そう考えると、①の考え方は、瞬発的な力が必要な場合、短期的におこなうもの。長く使い続ければ最終的に健康を損なう、常に使い続ける方法としてはあまり適切ではない、という見方も出来るわけです。

もちろん、からだに必要な良いモノを取り入れることは大事です。ですから目的が変われば①の方法でも悪くはありません。

治療法に対しても二通り

治療法に対しても、同様に大きく二通りの方法があります。

① 対症(対処)療法 :
病気の原因に対してではなく、表面に現れた症状に対して処置を行う。現在のほとんどの治療方法はこちらになります。
西洋医学はこの考え方を基本にしています。

② 予防療法     :
表面にあらわれた症状にではなく、症状がでないようにすることを主眼とした療法です。
東洋医学には病気になる前の状態、つまり未病という概念があります。

これら二つの治療方法がありますが、ケガなど早急に手当が必要な場合には、①の対症療法で処置をする。そうすることで、悪化することを防ぎ回復を早める事が出来るようになるわけです。それに対して②の予防療法では、病気にならないために何をしなければならないかですが、どんなに病気にならないための行動を取っていたとしても、絶対に病気にならないという保証はどこにもありません。ですから、病気になっても早く回復することができる身体を作っておく必要があります。

勘違いして欲しくないのですが、どちらが良いとか悪いという事ではありません。必要に応じて使い分けるもしくは平行して行う事も必要でしょう。

 

健康のとらえ方を変える

次に健康のとらえ方を考えてみましょう。
一般的に私たちは「健康」ということを以下のように考えていると思います。

 ① 健康である  :

  • 病院にかかっていない (○○病と診断されていない)
  • 薬を常用していない
  • 痛いところ(症状)がない (からだの不自由なく生活が出来ている)
  • 検査で異常が無い (健康診断等で異常がない)
  • 食事・睡眠・運動・お通じ・精神的に問題無い (身体・精神的に不安がない)

② 不健康である :

  • 病院にかかっている  (○○病などと診断された)
  • 薬を常用している  (治療または病気の進行を防ぐため)
  • どこかに痛み(症状)がある  (生活になんらかの支障がある)
  • 検査で異常がある (健康診断等で数値に異常が出た)
  • 食事・睡眠・運動・お通じ・精神的に問題ない (身体・精神的に不安がある)

 

しかしどちらの状態もピンポイントで固定された状態にあるわけではなく、どちらの状態であっても幅があるわけです。

つまり、私たちはこの健康と思われる状態と、不健康な状態を揺らぎながら、行ったり来たりしているものと考えられます。

次回は、このゆらぎを「健康ものさし」という考え方で説明してみたいと思います。

 

☆初掲「いやさか通信」2018年6月号~7月号より(一部修正・追加)

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