小児期にインフルエンザにかかることがその後の免疫力に影響する

日本ではインフルエンザのトップシーズンに突入しました。

昨年末から年始にかけて患者数は一旦減少したようですが、これからが本番ですね。
今シーズン(2019年度)は今のところほとんどがH1型ウイルスが主流のようです。

参考:国立感染症研究所

受験生をお持ちの方ご家庭では、受験日の天候と共にインフルエンザの流行には敏感になっているかも知れませんね。(我が家の次女も昨年は受験の年でした。)

インフルエンザワクチン接種の是非については、以前このような記事を書いています。

そして毎年どんなタイプのインフルエンザウィルスが流行するのかを予測して、その型に合わせたワクチンが作られるのがインフルエンザワクチンです。

個人的には、一般の方には不要と考えており、受験生やお年寄りにはワクチンは接種しておいた方が少しは安心でよいのかな、くらいに考えています。

しかし、今回ご紹介したいのは、インフルエンザワクチンの事ではありません。

免疫力の獲得はインフルエンザであっても可能であり、しかも最初にかかったインフルエンザのタイプによって重症化の程度にも影響する、といった話です。

免疫の獲得と言えば、

伝染病の中には1回その病気にかかったら、免疫がつくられるためにその人は一生同じ病気にならないと言われています。(まれに、複数回かかる人もいます)

小児期に受けた代表的なワクチンと言えば、

・四種混合ワクチン(ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ)
・BCG(結核)
・MRワクチン(麻疹(はしか)、風疹)
・水ぼうそうワクチン(水痘(みずぼうそう))
・日本脳炎ワクチン (日本脳炎)
・おたふくかぜワクチン(流行性耳下腺炎(おたふくかぜ))*

*上記5種は接種が義務付けられているもので、おたふくかぜは任意接種になっています

ですね。

どれも、予防接種を受けていれば免疫を獲得できるので、一般的に感染発症するケースはまれではないかと思います。

幼少期おける免疫力獲得がその人の寿命にも関わることなので(社会的な流行を防ぐという意味でも)大事ですね。

しかし、インフルエンザは毎年流行するウィルスの型が違うので、免疫を獲得しづらいと言われています。

今回ご紹介したいのは、そんな免疫を獲得しづらいインフルエンザですが、幼児期においてどのようなタイプのウィルスに感染するか、そしてその順番がその後の免疫力に大きく左右されるというアメリカ・アリゾナ大学からの研究報告です。

インフルエンザとの最初の戦いが最も重要な理由

Science Daily


ここからです。



小児期に遭遇するインフルエンザウイルスの最初の株は、私たちの免疫系が後年の曝露にどのように反応するかを決定します

概要:
オープンアクセスの医学誌「PLoS病原体」に掲載された記事によると、インフルエンザをうまく防ぐことができるかどうかは、子供の頃に最初に遭遇したウィルス株に依存する。

調査結果は、インフルエンザウイルスの同じ株に感染した場合でも、一部の患者では他の患者よりもはるかに病態が悪くなる理由を説明している。この結果は、季節性インフルエンザの影響を抑えることを目的とした戦略の情報提供にも役立つだろう。

「最近の2つのインフルエンザシーズンは予想以上に深刻でした」

「2017-18シーズンには、2009年の豚インフルエンザのパンデミックよりも多く、米国で80,000人が死亡しました。インフルエンザは、この国だけでなく世界中で非常に強力な殺人者です。 」と、研究の共著者であり、アリゾナ大学のマイケル・ウォロベイ(Michael Worobey)氏は言う。

何十年もの間、科学者と医療専門家は、インフルエンザウイルスの同じ株がさまざまな程度の重症度で人々に影響を与えるという事実に悩まされていた。その後、2016年にウォロベイと現在の研究の著者を含むチームが、サイエンス誌に論文を発表した。

これは、インフルエンザウイルスに対する過去の曝露によって、その後の感染に対する免疫反応を決定する現象を示している。

この発見は、インフルエンザウイルスへの暴露が、いわゆる豚インフルエンザや鳥インフルエンザを引き起こす動物など、動物からヒトに感染する可能性のあるウィルス株に対する免疫学的保護をほとんど、またはまったく与えなかった、という従来の一般的な信念を覆すのに役立つ。

これらの株は、すでに数百人もの深刻な病気や人間の死の波及事例を引き起こしているが、、動物集団からヒトに簡単に移ることができるだけでなく、人から人へと急速に広がる突然変異を獲得する可能性があるため、世界的な関心事となっている。

現在の研究では、研究者たちは、免疫学的刷り込みによって、すでにヒト集団で循環しているインフルエンザ株に対する人々の反応を説明できるかどうか、また季節性インフルエンザがさまざまな年齢層に及ぼす、重症度の程度の違いを観測できる範囲を説明できるかどうか、を調査し始めた。

チームは、アリゾナ州保健局が病院や民間の医師から定期的に取得する健康記録を分析し、インフルエンザウイルスの多様な株が、年齢層の違う人々にどのように影響するかを調査した。

インフルエンザウイルスの2つの亜型であるH3N2とH1N1は、過去数十年にわたってインフルエンザの季節的流行の原因となっている。

H3N2は、臨床に参加した高リスクの高齢者集団の大多数と、全体的な死亡の大半を引き起こし、H1N1は全体的な死亡は少ないが、とくに若年および中年の成人に偏っている。

しかし健康記録データには以下のパターンが見られた。

子供の頃に最初にH1N1にさらされた場合には、最初にH3N2にさらされた場合よりも人生の後半で再びH1N1に出会った場合、入院する可能性が低くなった。
逆にH3N2に最初にさらされた場合は、後の人生においてH3N2に対しての追加的保護を受けるようだ。

この矛盾を理解するために、研究者はインフルエンザウイルス株間の進化的関係をさらに追求した。

するとH1N1およびH3N2は、インフルエンザの「家系図」上の2つの別々のブランチまたはグループに属していることが判明した。

一方の感染は、他方からの将来の感染と戦うための免疫システムの準備を整えるが、将来の感染に対する免疫力は、以前に戦った同じグループの株にさらされた場合において、はるかに強力になる。

「つまり、あなたが子供の時の1955年、H3N2ウイルスではなくH1N1ウイルスが最初に流行し、その(H1N1)に感染した場合、H3N2への感染は、昨年二つの株が流行していたH1N1に感染するよりも病院に行く可能性がはるかに高くなりました。」とウォロベイは述べている。

しかし、記録は別のパターンも見られた。

これは説明がはるかに難しく、最初の幼少期にH1N1の親類であるH2N2に曝露した人は、後にH1N1に遭遇したときに免疫上の利点がなかった。
2つの亜型が同じグループに属しているのにも関わらずにだ、これは奇妙に思えた。

以前の研究では、一方への暴露が、場合によっては他方に対してかなりの免疫を与えることを示していた。

「私たちの免疫システムは、数年前に流行した系統の遺伝的な姉妹や兄弟であるにもかかわらず、密接に関連する季節性インフルエンザの系統を認識して防御するのに苦労することがよくあります。」カリフォルニア大学ロサンゼルス校の論文の上級著者であり、この研究を行った主著者のケイトリン・ゴスティック(Katelyn Gostic)は言う。

「これは、鳥インフルエンザに関する私たちの研究が、免疫記憶の奥深くにあることを示しており、私たちが子供として見た系統の遠縁の遺伝的な第三のいとこを認識して防御する能力を持っているため、これには困惑しています」

「明らかに、最初の暴露と同じグループに属していても、何かが二次的に見られる株に対して免疫が損なわれる」

「あなたがさらされている2番目の亜型では、最初の亜型と同じほどの保護と耐久性のある免疫反応を作り出すことができません。」とウォロベイは付け加える。

言い換えれば、インフルエンザウイルスを撃退する能力は、私たちの生活の過程で出会った亜型だけでなく、出会った順序によっても決まるということだ。

「免疫系が最初に会う亜型は、同じ亜型の株から特によく保護する痕跡を産み出します。しかし、その後別の亜型に出会ったとしても、他の亜型の株に対しては比較的貧弱なのでしょう。」とウォロベイ氏は言う。

研究者によると、この効果の分子的原因は現在研究中だ。

「現在の感染に対する免疫システムの反応の一部は、子供の頃に最初にかかった株に対するものであり、将来遭遇するであろう侵略者に対して、完全に効果的な免疫反応を形成する能力には支障を来すようです」とウォロベイは述べている。

研究者は、彼らの調査結果が、亜型の循環に基づいて、将来のインフルエンザシーズン中に、どの年齢層がより深刻な影響を受ける可能性があるかを予測し、集団ごとに限られたワクチンを配布するなど、保険局が適切な対応を準備するのに役立つことを願っている。

これらの調査結果は、インフルエンザの監視で見られるパターンと、それらが将来どのように変化する可能性があるかについての洞察を提供し、公衆衛生の実践者と研究者間の協力の重要性を強調しています。」と、フェニックスのアリゾナ州保健局の疫学者シェーン・ブレイディ(Shane Brady)は言う。

この研究は、免疫インプリンティングの概念をインフルエンザとの長期的な戦いの重要な部分とし、国立衛生研究所の万能インフルエンザワクチンを開発する戦略計画の基礎の1つとなった同じグループによる以前の研究に追加される。

ゴスティックは以下のように述べている。

「私たちは、免疫システムが広く効果的な保護を展開する自然な能力を示す、鳥インフルエンザに対する免疫の違いと、免疫システムがより大きな盲点を持っている思われる、季節性インフルエンザに対する免疫の違いを研究することによって、万能なインフルエンザワクチンの開発に役立つ手がかりを発見できることを願っています。」

ウォロベイは最後に以下のように言っている。

「個体レベルで必要とされるワクチンが必要です。我々の研究は、我々が遭遇した最初のウイルスが深遠な長期的効果をもたらすことができることを明確に示しました。しかしそれの悪い面は、私たちの免疫システムが、インフルエンザの遺伝的多様性の半分だけとしか戦わず、そのことに縛られているように見えることであり、我々はその解決方法を見つける必要がある、と考えています。」



ここまでです。

子供の頃にはたくさん(ちいさな)病気になった方が良い

インフルエンザにかかった順番もその後の私たちの免疫力に影響があるというのはある意味運命みたいです。

生まれて間もない頃、その年に流行したインフルエンザにかかった場合、その時と同じタイプのインフルエンザにかかったとしても重症化せずに済むそうですので、免疫力の獲得の為には、あるいみ積極的にインフルエンザにかかっておいた方が後々の都合がよいそうです。

私も、幼い頃は良く熱を出し、扁桃腺を腫らすなど身体はそれほど丈夫では無かったと記憶しています。

身体も小さく、小学校の中学年くらいまでは、体育の授業で整列をする時に“前ならえ”をしますが、両手を腰に当てることが多かったです。(つまり一番前って事ですね)

特に背が急に伸びたのが6年生の夏でした。

夏休みが始まる前までは、列の真ん中くらいだったのが、夏休みが明けて秋の運動会の準備をするために、いつもの列に並ぶと明らかに頭一つ分自分の背が高いんですね。

担任の先生が、「あなたはもっと後ろに行って」と言われ数人ごぼう抜きで後ろへ。
気がつくと、自分より後ろにいるのは2-3人ほどになっていたようです。

まぁ、それが自分の成長期のピークだったようで、その後中学でもそこまで大きく身長は伸びなかったですが。

そしておそらく今は加齢のせいで、多分少し縮んできていると思います。

自分のことはこれくらいでやめておきますが、ようは大きくなって成人するような年齢になってからは、風邪はたまにひくことがあっても特に大きな病気も無く過ごせるようになりました。

私の母親も同様に、子供時代は身体が弱かったけれども、大人になってからは健康でいられるようになっている、という話ですから、子供時代に小さな病気をたくさんしておいた方が良いということでしょうね。

そうすることで、結局はその人の免疫力を高める事につながるのではないかと思います。

インフルエンザにかかると、高熱が出るのでかかった本人は辛いけれども、上手く熱をコントロールしてあげさえすれば、あとは自分の治癒力が自然に治してくれますし、その結果としてそのウィルスに対する免疫力の獲得にもつながります。

将来起こりうる突然変異したインフルエンザのパンデミックを乗り越える力を、子供達に獲得させるためにも、大人は慌てずにその子の治す力を信じて上げたいものです。

我が家の娘達が子供の頃には、このような知識がありませんでしたので、いつ来るか分かりませんが、彼女達の子供(つまり私の孫)には、できるだけそのような生きる力を身に付けさせて上げたいと考えています。

最後に、日本における整体の創始者とも言える野口晴哉の「風邪の効用」という本を紹介したいと思います。

風邪は誰も引くし、またいつもある。夏でも、冬でも、秋でも、どこかで誰かが引いている。他の病気のように季節があったり稀にしかないのと違って年中ある。しかし稀に風邪を引かない人もいる。本当に丈夫でその生活が体に適っているか、そうでなければ適応感受性が鈍っているかであって、後者の場合、癌とか脳溢血とか、また心臓障害等になる傾向の人に多い。無病だと威張っていたらポックリ重い病気にやられてしまったという人が風邪に鈍い

~ 野口晴哉著 「風邪の効用」から ~

 

 

風邪をひかないのが健康なのではない、風邪を引くことが出来ないほどの身体になっている、ということに気がつくべきである。風邪を一つのきっかけとして、身体が持っている本来の力を引き出し、健康に生きるというのはどうすべきなのか、が書かれています。

書かれた時代と今では大分環境は違いますが、今でも十分に活用できるものと思います。

「大難を小難に、小難を無難に」

健康の見方が変わる本です。

是非読まれる事をおすすめ致します。