インフルエンザウイルスから私たちを守っているのは細菌だった
インフルエンザ・ウイルスから私たちを守っていたのは、鼻や喉にすむ細菌(常在菌)で、そのメカニズムが解明されてきた。
というニュースを前回のインフルエンザの記事から過去のリンク記事でたどり着きました。
納得できることが多かったので、こちらもみなさんに紹介しようと思います。
記事内容はインフルエンザですが、こちらを今話題のコロナウイルスに読み替えていただいてもよいのかな、と思います。
特定の細菌がインフルエンザから私たちを守る方法
ここからです。
新しい研究により、抗インフルエンザ・プロバイオティクスピルの実現に一歩近づいた。鼻と喉の細菌をわずかに変えることで、インフルエンザに勝てるようになるかもしれない。
ほとんどの場合、誰かが微生物叢に言及するとき、一般的には腸内細菌を指している。
しかし、細菌は私たちのあらゆる場所において内側にも外側の両方に存在し、「マイクロバイオーム」という用語はそれらすべての微生物のまとまりを表す。
今、私たちの呼吸器系にいる細菌はますます注目されてきている。
科学者の中には、この呼吸器系の細菌叢がウイルスによる感染症から私たちを守ることができるかもしれないと確信している人たちがいる。
米ミシガン大学の研究者による最近の研究は、病気に感染するリスクを減らすために、細菌叢を操作する可能性を調査している。
論文の筆頭著者のベッツィ・フォックスマン教授(Prof.Betsy Foxman)は以下のように述べている。
「微生物を根絶する必要がある敵と見なすのではなく、微生物と協力するという考えが好ましいと考えています」
フォックスマン教授は、特にインフルエンザに対する感受性において、微生物叢が果たす役割を理解することに関心がある。
インフルエンザに直面して
インフルエンザのリスクを減らす新しい方法を見つけることが重要だ。私たちの多くにとって、インフルエンザの症状は不快なものにすぎない。ただし、リスクの高い集団(若年、高齢、または妊婦)の場合、インフルエンザは肺炎などの深刻な合併症を代引き起こす可能性があるからだ。
インフルエンザワクチンは効果的だが、ワクチン株によって、人により予防効果が得られない場合もあり、すべてのインフルエンザを予防するのに効果的とはいえない。また誰もがワクチン接種を容易に受けられるわけではない。
インフルエンザのリスクを減らすための費用対効果の高い簡単な方法を見いだすことは、公衆衛生上の差し迫った問題となっている。
世界保健機関(WHO)によると、インフルエンザの流行の結果として、世界中で毎年最大650,000人が死亡している。
インフルエンザウイルスは、主に上気道および下気道の上皮細胞を標的とするが、これらの細胞は細菌(常在菌)の群れで覆われている。
これらの細菌コロニーの構造が、インフルエンザウイルスがその人に感染し、病気を発症させる能力に影響を与える可能性はあるのだろうか。
これまでの研究では、マイクロバイオーム(微生物叢)を操作することで、病気に対する感受性が変化することが示されている。
例えば、ある研究では、マウスを抗生物質で治療すると、細気管支上皮の変性が増加し、インフルエンザ感染後の死亡リスクが高くなることがわかった。
また、フォックスマン教授による以前の研究では、インフルエンザウイルスに感染した人の鼻と喉の肺炎球菌と黄色ブドウ球菌のレベルが上昇していることが示されていた。
これによって、呼吸器微生物叢とインフルエンザウイルス感染との間に関係があることは明らかだ。
しかし、著者が書いているように、現在までのところは、鼻や喉のマイクロバイオームとインフルエンザのリスクとの関連は、ヒトの集団では実証されていない。
科学誌PLOS ONEに掲載された論文でフォックスマン教授たちのチームは、このヒトの集団での実証の問題に対処するために着手した。
細菌はプロテクターなのだ
これを調査するために、科学者たちは、2012年から2014年にかけて実施されたニカラグアの世帯伝播調査のデータを使用した。
参加者は、インフルエンザが確認された個人の家族で、チームは、13日間またはインフルエンザが発症するまでのいずれか早い方で、それぞれを追跡した。
研究では、研究の開始時にインフルエンザが陰性であった537人のデータを使用した。
研究者たちは、プログラムの開始時に咽喉および鼻の細菌のサンプルを採取した。そしてDNAシーケンスを使用して、存在する細菌の種類の写真を構築することができた。このデータを5つのクラスターに分割した。
細菌群のタイプを5つのグループに分け、喫煙、年齢、生活環境、インフルエンザワクチン接種など、他の変数を制御した。
フォックスマン教授は以下のように述べた。
「私たちは誰がどのクラスターを持っているか、そしてそれがインフルエンザにかかったかどうかに違いがあるかどうかを調べました。それはエキサイティングなことでした。」
「この細菌群集がある場合、インフルエンザにかかるリスクが低いことを示していたのです。このような結果はそれまで示されていなかったので、大きなニュースだといえます。」
これらの結果は、インフルエンザにかかりやすい人たちと、かかりにくい人たちがいる理由を説明するのに役立つかもしれない。
呼吸器系のプロバイオティクスの可能性
プロバイオティクス(人体に良い影響を与える微生物、またはそれらを含む食品)の支持者は、腸内のいわゆる「善玉」細菌を促進すると主張している。
これらの主張の多くは、やや誇張されているか、誤解を招く可能性もあるが、マイクロバイオームが私たちの健康に大きな影響を与えていることは間違いない。
フォックスマン教授は以下のように述べている。
「誰かの喉や鼻の微生物叢を他の人に移植することが可能なのかどうか。喉や鼻の微生物叢の錠剤が存在すると私たちが人々に伝えることができるのか。とても興味があります。」
現在の研究は、この方向への第一歩を踏み出した。
フォックスマン教授が言うように、「それは非常に長い道のりであり、私たちは最初の段階になったに過ぎないのです。」
科学者たちはこの流れで研究を続ける予定であり、その可能性は膨大だ。
抗生物質耐性菌が世界に広がっているなか、この種の科学的介入は、ある種の生命線を提供することになる可能性がある。
フォックスマン教授は、
「私たちは常に新しい抗生物質を必要としていることを知っていますが、微生物叢での防御のようなものが確立されれば、私たちはより長くウイルスからの感染に耐えることができ、おそらくこのような方法で介入することができれば、副作用は少なくなるでしょう」
と述べる。
研究者は、これらの予備調査結果が将来の研究の基礎を作り、革新的な新しい方向性を提供することを望んでいる。
ここまでです。
私たちの身体にはおびただしい数の細菌が常在しています。
これらにはもちろん悪玉菌として悪さをするものもいるかと思いますが、私たちの健康にとって良い働きをする善玉菌もいるわけです。
身体を清潔に保つことは良いことも多い反面、有用な菌までも殺してしまうことで、健康を害する菌やウイルスを寄せ付けてしまうことになりかねません。
中国では武漢を始め、感染の多い都市では消毒薬の散布を大々的に行っているという報道がありますが、これは人々の免疫力を下げるようなことにつながる可能性もあり、将来別の感染症が流行する引き金になる事も否定はできないのではないかと思います。