ヨガ・太極拳・気功は腰痛に効果があるのか?
ヨガは以前にも流行した事がありましたが、ここ数年また再燃しているようです。
ヨガを始める目的はみなさんそれぞれだと思いますが、ヨガが腰痛や肩こりに効果が有ると聞かれて始めた人もきっといるかも知れないです。
実は私の娘も、今ヨガにハマっているようで、ヨガスタジオを行って、
「また新しいポーズ覚えたよ!」
といって、見せてくれることもあります。
彼女も肩こりがひどかったようですが(整体師の娘でありながら・・)、ヨガを始めてからは、筋肉痛を訴えることがあっても、肩こりを訴えることは無くなったように思います。
私は、ヨガ、太極拳、気功は腰痛など、慢性的な関節痛には効果がある、と考えていますので、院に来られる患者さんには、関心があればおすすめすることもあります。
ただ、ヨガなどでは、無理に先生と同じポーズをやろうとして逆に関節を傷めてしまう事もあるので、注意が必要ですね。
それでは、これらの運動が本当に腰痛に効果が有るのか?
それを過去の研究を含めて調査した記事をご紹介したいと思います。
腰痛:ヨガ、太極拳、気功はどの程度効果的ですか?
ここからです。
腰痛は成人のかなり高い割合に影響を与えるが、今のところ、治療の選択肢は限定的であり、かつ不十分であろう。最新のレビューでは、ヨガ、太極拳、気功が痛みを軽減するのに効果があるかどうかを調べてみた。
最新のレビューでは、
「これらの実践が腰痛のある人に利益をもたらす可能性がある」
と結論付けている。
しかしながら、質の高い研究がほとんどなく、信頼できる結論に達することは現在までののところ不可能と言うほかない。
米国立神経疾患・脳卒中研究所(National Institute of Neurological Disorders and Stroke)によると、米国の成人のおよそ8割が人生のある時点で腰痛を経験している。
現在の治療には、オピオイド(鎮痛剤)、セルフケア、手術、薬物によるまたは理学療法などが行われている。
その中でも、オピオイドと外科手術は深刻な健康問題とその費用面への影響が大きく、そのため、(その害がはるかに少ない)理学療法は研究者の注目を集め始めている。
レビューの著者が説明しているように、慢性腰痛は
「抑うつ、不安、睡眠障害、社会的孤立を含む感情的苦痛にしばしば寄与する」
「効果的な治療法は特定されていない」
腰痛に対する薬物を使用しない低コストの介入を見つけることは、何百万人もの生活を変える可能性がある。補完療法と代替療法の人気が高まるに従い、一部の研究者は腰痛のある人々に利益をもたらすことができるかどうかを理解したいと考えている。
このレビューは現在、雑誌「ホリスティック・ナーシング・プラクティス(Holistic Nursing Practice)」に掲載され、それらがどれほど効果的であるかを調査し始めたところだ。
代替案に焦点を当てる
レビューの著者らは「運動に基づく心身の介入」、特にヨガ、太極拳、気功に焦点を合わせた。
これら3つのすべてに、身体的側面と瞑想的側面への両側面がある。
著者であるジュヤン・パーク(Juyoung Park)博士は、以下のように述べている。
「これら運動に基づく心身介入が、慢性腰痛、心理的要因、対処方法、および腰痛のある人々の生活の質に及ぼす影響を判断するためにデータをレビューしました。」
「私たちの目標は、こうした痛みを軽減するためのエビデンスに基づいた介入を実施するために、介入効果の包括的な評価と、各分野を越えた情報を提供することでした。 」
既存の研究論文を徹底的に検索した結果、著者は基準を満たした32件の研究を見つけた。これらには3,484人の参加者が含まれ、25件の研究がヨガに、4件は太極拳に、3件は気功に焦点が当てられていた。
全体として、著者は次のように結論付けている。
32件のレビューされた記事の大部分は、「動きに基づく心身介入」が「腰痛」の治療に効果的であり、痛みの軽減や心理的苦痛(うつ病や不安など)、痛みに関連した障害などの機能不全が改善されていた。
確固たる結論はでていない
著者の結論は肯定的だが、このレビューにはかなりの制限があり、現在利用可能なデータから確固たる結論を導きだすことは依然として困難である。
制限の1つは、新しい論文が逸話タイプであることだ。このタイプでは、特定のトピックに関する情報を照合し、概要を提供するものだからだ。
逸話タイプには通常、データ分析は含まれておらず、実際、著者は「選択された研究のいくつかは低い方法論的品質を示し、研究全体で効果の大きさが報告されていなかったため」とし、メタ分析を実施しなかったと説明している。
また、腰痛に対するヨガ、太極拳、気功の効果はあまり注目されていないため、この問題に関する大規模な研究は行われていない。
今回の調査では、最大の参加者でも320人、最小はわずか25人だった。
同様に、いくつかの研究は比較的短いもので、最短期間は6週間。つまり、研究者はこれらの介入の長期的な効果を確認することはできなかったはずだ。
著者はまた多くの論文が、元のチームがどのように実験を行ったかを明確に説明していなかったことにも注目している。
例えば、彼らは32件の試験のうち26件がランダム化比較試験であると主張しているが、
「ほとんどの研究はランダム化、割振りの隠蔽、または盲検化の特定のプロセスを詳細に報告しなかった」と説明している。
確かに、医師は腰痛に対するこの種の介入を処方できるようになる前に、「臨床試験と経験的証拠がさらに必要です」とパーク博士は説明している。
一部の研究では有害事象が報告されているため、追加の研究は特に重要だ。著者が概説しているように、「11のヨガ研究、1つの太極拳研究、1つの気功研究が軽度の関節痛と背痛を報告していた」とある。
しかし、大きな疑問は残っているが、それは、ヨガ、太極拳、気功が腰痛を和らげるのに役立たない、という意味ではない。
慢性腰痛には、心理的な要因が多く、脳と身体に一度に対処する方法でテストすることは、研究では賢明なアプローチだろう。
ここまでです。
最終的な結論は、効果は有るかもしれないが、科学的根拠に欠けるので、さらなる調査が必要とのことでした。
私自身は、効果があることは間違いない、と考えています。
しかし、「科学的にエビデンスで証明する」
という話しになるといくつかの難しい問題があるんですね。
そもそも、人の「痛み」を客観的に捉える方法が無い。
確かに「痛み」を起こす物質は分かっているのですが、仮にこの物質を測定してもその人がどれくらい「痛みを」感じているかを証明する方法がないのです。
たとえば、血中に含まれるこの「発痛物質」の量を測定しても、確かに痛みを感じているのかも知れないが、当の本人がそれをどれくらいの痛みの強さで感じているのかは、その本人にしか分からないのですね。
「痛み」はその人の感じている感情と結びつく。
これは、
「楽しい」と感じているのか
それとも
「苦しい」と感じているのか
で、「痛み」に対する感じ方がまったく異なるということです。
「痛み」というのは、身体だけで感じているのではなく、心でも感じている。
科学では「心」というものが何であるのかを今だ理解していないのですから、
「痛み」というのはこれほど身近にありながら非常に難しい問題なのです。
ですから、私からの結論です。
「自分で効く」と思ったことは「効く」
という事でよろしのではないでしょうか?
「証明できないものは存在しない」ということではないのですから。
また以前、「『痛みは脳が「作りだす」』~病名を付けられるとそのように振る舞う~」というタイトルで記事を書きました。
こちらも、参考にして頂けると幸いです。