オキシトシンを増やすつまりハグを増やせば骨粗しょう症を予防できる

オキシトシンという名前のホルモンを聞いたことがありますか?

オキシトシンというのは母乳に多く含まれていることが知られており、別名「幸せホルモン」「絆ホルモン」とも呼ばれ、多幸感を感じさせます。

母乳に含まれると聞いて、男性には関係ないように思うかも知れませんが、男性も女性と同じくらいのレベルで分泌されるそうです。

またオキシトシンは、ストレスや痛みをやわらげたり、血圧を下げる、食欲の抑制などの働きもあり、最近話題になっているホルモン(神経伝達物質)の一つですね。

オキシトシンは、日常生活のちょっとしたことで分泌を促すことができます。

例えば、ハグやキスといったスキンシップは最も多く分泌されることが分かっていますが、他にも、会話をしたり一緒にダンスやゲームをしたりすることでも分泌が促されます。

そう聞くと、パートナーがいないと分泌されないのかというと、そういうわけではなく、1人だけでも、映画や本で感動したり、運動することでもオキシトシンは分泌されます。

ペットと暮らしている人は、ペットとふれあうことでもオキシトシンが分泌されるそうです。

そんな、オキシトシンの効果は医療や介護の世界でも注目を集めており、痛みやストレスを抱える患者さんを対象に、肌に優しく触れるケア「タッチケア」というものを取り入れている医療機関もあるそうです。

子どもの虐待が社会的な問題としてとりあげられる事も多くなりましたが、「タッチケア」は特に母親とその子どもとのスキンシップを図ることで、「親子との絆」を深めていくとことを目的としているとあります。

参考)日本タッチケア協会


実は虐待された子どもはオキシトシンが分泌されにくくなり、この傾向はその子どもが大人になっても続くそうでして、さらにその子が自分の子どもを持った場合、自分もまた虐待をしてしまう、というような負の連鎖が生じやすくなることも分かってきています。

すみません、話しがそれてきてしまいました。

さて、今回はこのオキシトシンが女性の骨粗しょう症を予防する、という研究報告を紹介したいと思います。

オキシトシンは女性の骨粗しょう症を防ぐことができるかもしれない

Oxytocin could prevent osteoporosis in females 
 Medical News Today(2020/08/13)


ここからです。


雌ラットを用いた最近の実験では、オキシトシンというホルモンが骨密度と強度の低下を防ぐことができることを示唆している。

 さらなる研究により、骨粗しょう症を予防するためにオキシトシンを臨床に使用することができるようになるだろう。

 骨粗しょう症の最大の危険因子の一つは生物学的性別であり、女性は男性よりも骨折を経験する可能性が高い

 25~30歳で骨量のピークを迎えた後、年齢に応じて徐々に骨量は減少していく。女性の場合、体内のエストロゲン量が変化した結果、閉経後に骨量の減少が加速する。

 更年期とは、閉経前の数年間を指し、卵巣は徐々エストロゲンを分泌量を減らしていく。

 エストロゲンの喪失は、それぞれの女性に異なる影響を与え、その影響は文化によって異なる。

 更年期障害は、一部の人にとってはポジティブな経験になるが、ある人には大きな体の変化を引き起こすこともある。例えば、気分の変化、のぼせ、寝汗、骨密度の低下などだ。

 骨密度が大幅に低下し、骨折のリスクが高まることを骨粗しょう症と呼び、米国では、65歳以上の女性の約25%が骨粗しょう症だ。同じ年齢の男性では、この数字は5%だ。骨粗しょう症の発生率は民族間でも大きく異なり、最大10倍もの開きがある。

 特定のライフスタイルを変えることを除いて、骨粗しょう症を予防する効果的な方法は現在のところ見つかっていない。しかし、ブラジルの科学者は、その一つを発見したのではないかと考えている。

 雌ラットの実験では、科学者たちはオキシトシンを使用して、骨の密度と強度を低下させるプロセスを逆転させた。ヒトでの研究で同様の結果が得られた場合、医師はオキシトシンを臨床的に使用して骨粗しょう症の発症を防ぐことができるようになるだろう。

 調査結果は全文は、Scientific Reports誌に掲載されている。

更年期(閉経周辺期)

 この研究を実施したのは、ブラジルのサンパウロ州立大学の研究者。ブラジルでは人口の高齢化が進んでおり、専門家は、毎年約10万件の股関節骨折(大腿骨近位部骨折)が発生していると予測している。

大腿骨近位部

 股関節骨折は、男性よりも女性の方が3~4倍も多く運動能力の低下やその後数年間の死亡率が上昇するなど、深刻な結果をもたらす。

 「機能と自立性の喪失は(骨折を経験した)生存者の間で深刻なものです。約40%が自立して歩くことができなくなり、そのうちの約3分の2が1年後に支援を必要とします。以前のレベルの機能を回復しているのは半分以下なのです。」

 と、研究の筆頭著者であるリタ・メネガティ・ドルネレス(Rita Menegati Dornelles)は説明している。

 新しい研究では、骨折の最も一般的な部位である大腿骨頸部(訳注:お尻の脇にある大腿骨のくびれた部分)と呼ばれる股関節の一部に焦点を当てた。
研究者らは、この部位を、18ヶ月齢のメスのラットで研究した。この年齢は、人間の女性の更年期に相当する。

 ドルネレスは、この段階の研究は重要であるが、現在のところ文献では十分に評価されていないと述べている。

 「女性の閉経後の段階については多くの研究がありますが、更年期後のホルモンの変動は大きく、骨密度のゆるやかな低下と関連しています。更年期後の期間は女性の人生の約3分の1を占め、可能な限り最高の質を保つべきであるため、更年期の骨粗しょう症の予防をサポートするには、さらに多くの研究が必要でしょう。」

「愛のホルモン」で治療する

 ドルネレスとチームは、更年期ラットをオキシトシンで治療を試みた。オキシトシンは、愛情、絆、共感の感情に最もよく関連付けられているが、骨量の調節にも重要な役割を果たしている。

 オキシトシンは骨細胞から分泌され、女性の骨代謝に関連している。このホルモンのレベルは更年期には低下する。

 ラットを治療してから約1か月後には、血液や組織のサンプルを分析し、オキシトシンを投与されていない動物のサンプルと比較した。

 オキシトシンを投与されたラットでは、骨密度の低下は見られず、血液中に骨再生の生化学的マーカーが認められた。

 治療された動物では、骨自体もより強固になり、大腿骨頸部領域はより強く、多孔質(訳注:穴があきスカスカの状態)性が低く、より高い骨密度と一致する特性を有していた。

これは自然な解決策なのか?

 これらの発見は印象的であり、以前の研究よりも信頼性が高い可能性がある。実際、これまでの研究では、卵巣の外科的摘出を受けた非常に若いラットを使用する傾向があった。

 しかし、この研究で使用された動物は自然な老化プロセスを経ており、人間の経験との関連性が高いと考えられる。

「ホルモンを投与された動物は、骨の再生に関連する生化学的マーカーの増加と、骨の形成と石灰化をサポートするタンパク質の発現を示しました。」

– リタ・メネガティ・ドルネレス

 ヒトにおけるオキシトシン治療の安全性および有効性を評価するためには、さらなる研究が必要だが、これらの結果は心強い。オキシトシンは、一部の人々の骨粗しょう症を予防するもう一つの実行可能な手段になるかもしれない。



ここまでです。

骨にとって大事なのはカルシウムというのは、多くの方が知っていると思いますが、骨はそれだけで出来ているのではなく、たんぱく質 (コラーゲン)やリンなどのミネラルで出来ています。

骨はビルのような構造をしています。鉄筋のような役割のコラーゲン繊維にカルシウムやリンがコンクリートのように沈着して骨を形づくっています。

ビルを想像してみてください。鉄筋が規則正しく組まれていなかったり足りなかったりした状態でコンクリートをたくさん厚く塗ったビルは強いビルとは言えないでしょう。
いくらコンクリートが厚く固くても、鉄筋が外部からの衝撃を柔軟に受け止めてくれなければポキっと折れてしまいます。

逆に鉄筋がどんなにしっかりと組まれていてもコンクリートが穴ボコだらけのスカスカの状態では強い力に耐える事は出来ません。

骨も同じです。

鉄筋(コラーゲン繊維)が規則正しく組まれ、コンクリート(カルシウムやリン)がしっかりと沈着していて初めて強い骨になります。

さらに骨は、骨芽細胞(骨をつくる)と破骨細胞(骨を壊す)によって常に、代謝(スクラップ&ビルド)を繰り返しています。

この骨を作るサイクルと骨を壊すサイクルのうち、骨を壊すサイクルの方が作る方よりも上回ってしまう事で起こるのが、骨粗しょう症です。

骨粗しょう症については、以前のブログで最新情報として書いておきましたので、以下の記事も参照されると良いと思います。

骨粗しょう症の最新情報:原因・診断・合併症・治療とその予後(2020/6/19)

骨粗しょう症の最新情報:原因・診断・合併症・治療とその予後

オキシトシンはセロトニンとも非常に深い関係のあるホルモンです。
セロトニンに関する記事も是非読んでみてください。

『幸福物質セロトニン』 ~うつ病と精神疾患の関係~(2018/6/18)

『幸福物質セロトニン』 ~うつ病と精神疾患の関係~

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