『幸福物質セロトニン』 ~うつ病と精神疾患の関係~

「セロトニン」を研究されている第一人者の有田秀穂先生の講演や著作より編者のメモを参考に連載していきます。

セロトニンとは?

「セロトニン」とは『ノルアドレナリン』や『ドーパミン』と並んで、体内で特に重要な役割を果たしている三大神経伝達物質の一つです。

セロトニンは人間の精神面に大きな影響与え、心身の安定や心の安らぎなどにも関与することから、『幸せホルモン』とも呼ばれます。
セロトニンが不足すると、うつ病や不眠症などの精神疾患に陥りやすいと言われています。

セロトニン不足で「うつ病」が増加

今セロトニンの欠乏で「うつ病」などのメンタルヘルス系の患者が増加している。

人間は、昼行動物です。このことについて異論は無いと思います。
日中は太陽の光を浴びながら身体を使うことによって十分なセロトニンがつくられ、このセロトニンを材料に、「メラトニン」がつくられることになります。しかし、現代では人工光を作り出すことに成功してから太陽が沈んだ夜にも活動することができるようになりました。そのため、このセロトニンが不足がちとなっています。また太陽光に含まれる紫外線が皮ふを傷つけて、シワやシミ・たるみの原因になるなど、美容的な面から太陽光を避けるようになったことも、要因として考えられております

なぜセロトニン不足でうつ病になるのか

なぜセロトニン不足でうつ病を招くのか?

慢性的なセロトニン不足は、それをもっと受け取ろうと、セロトニン受容体の数ばかりを増やしてしまうので、もともとセロトニン量の不足が問題にも関わらず、脳はセロトニン不足と勘違いする、といった悪循環を起こしてしまっているのが原因。
「うつ病」には、もともとの遺伝子の問題からセロトニン不足が生じて発症する「先天的うつ病」と、生活習慣などからセロトニン不足が生じて発症する「後天的うつ病」の二種類があります。

今増加している「うつ病」は、後者の「後天的うつ病」で、不規則な生活やコンピュータ浸けの生活など現代生活特有の問題に起因しているので、「うつ病」は「生活習慣病」とも考えられます。

太陽光は「必須栄養素」

植物は「光合成」をするために光が必要と教えられましたが、人間にも光(太陽光)が必要なのです。
光は様々な恩恵を我々に与えてくれるのです。
太陽の光は、網膜視床下部から脳の奥深い場所にある視交叉上核へ伝えられ、神経節を経て、松果体に達します。
それが刺激となって「メラトニン」の合成が調節されます。

「メラトニン」は、別名睡眠ホルモンとも呼ばれるように、睡眠を司る大事な物質で、「メラトニン」は、「セロトニン」が原料となってつくられます。
なのでその原料である「セロトニン」が少なければ、睡眠障害などが誘因されることになるのです。

☆セロトニンを増やすには

1.リズム運動と早起き
2.太陽光
3.グルーミング(動物の毛繕いやのみ取りなどの意)
*ここで言うグルーミングとは自分自身に行うセルフグルーミング(猫の毛繕いのような)ではなく、社会的グルーミングのこと。
社会的グルーミングとは、他の個体に対して行う行為であり、サルなどがお互い毛繕いやノミ取りを行う行為のことである。

この3つです。

☆セロトニンは「覚醒中」に活動します

セロトニンを増やすには。

1.歩行リズム運動
2.咀嚼リズム運動
3.呼吸リズム運動

これらのリズム運動によって活性化させることができるといいます。

歩行リズム運動とは、ウォーキングやジョギング、スクワット、エアロバイクなど。
咀嚼リズム運動とは、チューイングガムを噛むなどの、食事にゆっくりと良く噛むなど。
呼吸リズム運動とは、座禅の呼吸方法、読経、カラオケなど。

これらのリズム運動を1日30分継続することが非常に大事です。
これを続けることにより神経システムの構造に変化が生まれ、強化されることが分かっています。
この構造の変化が出るまでの時間は、約100日(3ヶ月)かかるので、100日間を続けることができれば、習慣化します。
特にカラオケはとても良い健康法だとも言えます。大きな声で好きな歌を唄う効果は計り知れません。カラオケ好きには嬉しいですね。
チューイングガムを噛む事は、集中力を持続させる上でも効果が有ります。

この3種類のリズム運動を続けるコツは、どれか1種類だけの運動を続けるよりも、何種類かのレパートリーを自分なりに工夫をして見つけ、飽きのこないようにすることが必要です。
何事も苦しいと続きませんので、楽しいと思うことを、組みあわせてやり続けてみてください
また運動でセロトニン神経を活性化させるが分かっているが、その持続力はおよそ1時間だそうです。

☆疲労するとセロトニンの分泌が減少する

研究ではこんな結果がでました。

幼稚園児の年少、年中、年長の子供たちにリズム運動を取り入れた遊びを、毎朝1時間行う実験をしました。
そして、運動前後の尿に含まれるセロトニンの濃度を測ったところ、明らかに運動前後に有意の変化が見られました。

さらに、ある日のデータでは、運動前と後に検査した結果が、逆になったことがありました。
調べてみると、その前日に遠足へ行った事が分かり、遠足の翌日は、運動前の方が元気そうに見えたそうです。
ということで、疲労があるとセロトニンの活性化がしにくいことも分かりました。

個人差がありますのでその運動量が、その人にとっての適量であることを知ることも大切なようです。

セロトニンを減少させる要因と姿勢との関係

☆セロトニンを弱らせる社会的要因

1.IT社会での運動不足 
2.昼夜逆転生活
3.PCと携帯電話の依存

これらすべては、ここ10年ほどで急速に社会が変化してきています。
20年以上も前には、コンピュータもそれほど普及しておらず、携帯電話なども無かった。
昔なら、セロトニンを意識することなく普通に生活するだけで良かったが、現代は生活が便利になった代償としてセロトニンを減少させる要因が増加する傾向にあります。

☆電磁波がメラトニンを破壊する

特に若い人のPCや携帯の依存度が高いですが、これらに限らず現代の電子機器はほとんどすべて電磁波を放射します。
この電磁波によって脳のメラトニンが破壊されます。メラトニンが欠乏すれば、「睡眠障害」「うつ病」などの精神疾患が増加する・・・悪循環ですね。

☆セロトニンが減少すると筋肉も弱くなる

ちなみに、セロトニンは姿勢筋もコントロールしているので、セロトニンが減少し欠乏すると、姿勢筋が弱くなります。
ということは、姿勢が悪くなるということです。

姿勢が悪くなれば、呼吸が浅くなったり、元気も出なくなります。そうして、精神疾患を発症することになります。

☆からだのゆがみが心身に影響を与える

整体的には、姿勢が悪くなると、いろいろな障害が心と体に現れてきます。
この姿勢を正す(骨格矯正や筋肉バランスの調整)ことにより、身体が深く呼吸できるようになります。
すると、心も前向きになってきますよ♪

試しに、背中を丸めて(猫背ですね~)深呼吸してみてください・・・・

ハー・・・(吐く )、

スー・・・(吸う)

かなり難しかったのではないかと思います。(吐く息より吸う息の量が圧倒的に少ないはずです)

では、背中を伸ばしてもう一回深呼吸・・・・(肩の力を抜いて・・)

ハー・・・・・・・・・・・(吐く)

スー・・・・・・・・・・・(吸う)

(沢山吐けて、吸えましたよね)

どうでしょう? 今度は簡単だったでしょう?

では、同じように背中を丸めて、大きな声で

「今日も元気!!」と言ってみてください。

言えないですよね。(まぁ言えなくはないですが、元気はでないですね)

では、今度は背中を伸ばして、姿勢を正してから小さないかにも元気なさそうな声で
「疲れた・・・しんどい・・・・」と言うと、どうでしょう・・・・。

やっぱり言いにくいですよね。

これくらい、姿勢と気持ち(心)というのは、深く関係しています。

子どもが危険!日本人は「ハグ」が足りない?

☆現代人は「グルーミング」が足りない?

現代の子供達に起こっている、様々なメンタル系の病、「うつ病」「躁うつ病」
「自閉症」「アスペルガー症候群」「ADHD」などなど・・・。
これらはセロトニン欠乏により発症すると考えられています。

10年ほど前から抗うつ病薬「SRRI(セロトニン再取込阻害剤)」が医師により大量に処方されるようになりました。
しかし現在、「うつ病」患者は減少するどころか、むしろ増加してきています。
さらに、今この薬が効かなくなってきているそうです。

サルなどの動物は、お互いに毛繕いをして、仲間とのコミュニケーションを取っていますが、この行為は、ストレスの解消にも役立っていると考えられています。

以前の日本では、お茶の間で家族の団らんという時間がとられていたり、奥様どうしでの井戸端会議、サラリーマンの仲間同士で仕事帰りの一杯・・など、コミュニケーションを家族または社会でとっていました。つまり人と人、肌と肌のぬくもりが感じられるコミュニケーションが主だったのです。

ところが現代では、コミュニケーションとはいっても、携帯電話やメール、など間に機器が介在したもので、人同士が肌で感じるようなコミュニケーションが成り立ちにくくなっています。だから「ハグ」がいいのです。

☆子どもたちが危険!!

今や子供たちの世界にも浸透してきているテレビゲームや携帯電話。
小さい時から個室が当たり前のように与えられ、子どもが欲しいといえば、テレビゲームや携帯電話、自分専用のテレビなど、ますます家族間同士のコミュニケーション不足が懸念されています。

せめて、子ども時代には、昔のように外で遊ばせ、たっぷりと太陽の光を浴びさせたうえに、必要な運動をさせることが必要です。そうすれば、セロトニンが活性化し、そのセロトニンをメラトニンとして利用することができます。

メラトニンは睡眠ホルモンです。
メラトニンは、身体の修復機能も司っていますので、昼間活動して傷ついた細胞を治す力があります。

「寝る子は育つ」と言いますが、良く動きよく眠ることが成長ホルモンを刺激します。健康な子どもはすべての親の願いです。子供たちを危険にさらせないよう、親が子の環境を良く管理し、コミュニケーションやノンバーバル・コミュニケーション(言葉以外でコミュニケーションすること)をもっととるようにしたいものです。

☆タッピング・タッチをしよう

身体に少し触れる程度のタッピング(叩いたり、さすったりといった動作)をたった15分行うだけで、リラックスすることができ、心と体を癒すことが出来ます。欧米特にアメリカでは、良く「ハグ」しますが、日本でも恥ずかしがらずにやれたらいいですね♪ 夫婦や親子でやるマッサージも効果的です。

*筆者注
有田先生は「ハグ」と言ってはおりませんが、ハグし合い背中をお互いにさすり合うコミュニケーションは親子、夫婦などでも大事だと思っています。有田先生の仰る「肌の触れあうコミュニケーション」というのを「ハグ」と表現させていただきました。

※初掲「いやさか通信」2013年12月号~2014年3月号

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