えっ!「痛み」の感じ方って男と女で違うの!?
私たちは、日常的に「痛み」を感じることが良くありますね。
ふつうに考えて男と女では、その痛みを同じように感じていると考えてしまいますが、実際は違って感じていると知ったら、面白くありませんか?
私は「痛み」を解消する整体師という仕事をしていますので、日々「痛み」を抱えて悩んでいる方を施術・観察しています。
当院を利用しているのは女性と男性の比率は8:2。この男女の比率が逆転しているところもあると思いますので、この比率がどこの整体院でも同じなのかは良く知りません。
しかし、当然、女性の方が自分の身体を気遣う人の割合は多いと思いますので、この比率は別段気になる数字ではないのですが、施術活動をする中で、「痛み」に関しての感受性が「男性」と「女性」で違うのではないかと、なんとなく感じてはいました。
なお、ここでいう「痛み」の感受性は、「女性」のほうが痛がりだという意味ではありません。その意味で言うとむしろ男性の方が恐らく痛がりのように思います。
私はもちろん男なので、「痛み」を女性がどう感じているかは正直良く分かりませんが、どうも、女性が訴える「痛み」は何か違っているのではないかと肌で感じていました。
そんな中、ネイチャー誌に掲載された興味深い記事を見付けたのご紹介したいと思います。
数十年来、男女の痛みの処理は性に関係無く同等であると仮定していたましたが、科学者は異なる生物学的経路が「痛み」を生み出す可能性があることを発見しました。
原文はかなりの量があるので、一部抜粋したものを掲載します。
ここからです。
数十年来、男女の痛みの処理は性に関係無く同等であると仮定していたましたが、科学者は異なる生物学的経路が「痛み」を生み出す可能性があることを発見しました。
痛みに免疫
痛みは、皮膚、筋肉、関節、または臓器の神経センサーが、熱や組織の損傷などの潜在的に有害な感覚を感じると発生する。 それらは、末梢神経を介して脊髄に信号を送り、脳幹および大脳皮質に信号を送る他の神経を活性化し、それらの信号を「痛い!」と解釈する。
しかし、痛みはさまざまな形で起こり、多様な化学的経路が存在する。
一部の痛みのタイプは、タイミングによっても区別され、 熱いもの、鋭いもの、または有害なものに対する急性の反応があり、最初の怪我が治った後も持続する可能性のある長期の慢性的な痛みもある。
慢性疼痛は、痛みを伴わないほどの刺激に対して、過敏症として現れることがある。
この種の疼痛過敏症は雄マウスと雌マウスの異なる免疫細胞による、著しく異なる経路に起因すると判断できる。
性別全体の特定の痛みの経路はかなり異なっており、免疫細胞とホルモンが異なる反応で重要な役割を果たしていることは明らかです。
これらは非常に重要です。世界中の人々の約20%が慢性疼痛を経験しており、今日、医薬品市場は誰にでも同じ鎮痛剤を提供しています。しかし痛みの根本が異なる場合、効果に差があるかもしれません。
さらに、ホルモンレベルが生涯にわたって変動する場合、人々は異なる疼痛治療薬を必要とする可能性がある。また、人の性別は必ず男性と女性のカテゴリーに明確に当てはまるわけではないので、遺伝学、解剖学的発達、ホルモンレベルなどの特性のスペクトルによって決定されます。
坐骨神経は腰から下に向かって左右の脚を走っています。研究では、マウスのこの坐骨神経を傷つけ、これによって身体の痛み検出システムが損傷または誤動作したときに起こる慢性的な痛みを観測した。するとオス・メスどちらのマウスも、タッチに非常に敏感になった。
しかし、この場合でも違いが見つかった。 ミクログリアはオスの痛みに顕著な役割を持っているように見えたが、メスのマウスの痛みにはそうならなかった。研究者チームは、ミクログリアをどのようにブロックしたとしても、オスだけは痛みの過敏症を解消できることを発見した。
しかし、メスが痛みを免れたわけではありません。 メスはオスと同じように神経損傷に悩まされていたが、ミクログリアを使用して触覚が過敏になることはなかった。 研究者らは、T細胞と呼ばれる別の免疫細胞がメスの慢性疼痛の背後にあるのではないかと考え、
さらに、T細胞のない雌マウスでも同じ神経損傷を試みた。
すると、彼らは細い毛での刺激でも過敏になったが、そのメカニズムはミクログリアを通して起こるように見えた。
これらの研究で T細胞を欠く女性では、ミクログリアの活性をブロックすることで、男性と同様にこの痛みの反応を防ぐことが確認できた。 そして、T細胞を欠いた雌マウスにそれを(T細胞)を戻すと、そのマウスは神経損傷の痛みでもミクログリアの使用を停止した。
●「痛みへの2つの経路」を参照
その結果、すべての人の痛みは外からは似ているように見えるかもしれないが、それが体の内部では同じであるとは仮定できないことを示した。
また、テストステロンレベルの低い去勢マウスをテストしたとき、そのマウスはメスと同様の反応を示しました。 そして、研究者が去勢されたオスまたはメスにテストステロンを投与すると、痛みの経路はミクログリアに依存する経路に切り替わった。
しかし、性別と性別の二元的な定義に当てはまらない人々の痛みのメカニズムに関する研究はほとんど行われていない。
ある研究では、イタリアの研究者がホルモン療法を受けているトランスジェンダーの人々、男性から女性に性転換した47人中11人が、性転換後に生じた痛みの問題を報告していたことがわかった。また、逆に女性から男性に性転換した26人中6人は、テストステロンを服用すると痛みの問題が軽減したと報告している。
痛みの経路はホルモンレベルによって決定されると考えており、この研究者は、テストステロンの特定の閾値(しきいち)を超える人は、男性に関連する痛みのメカニズムを持ち、テストステロンがそのレベルを下回る人は女性に共通のメカニズムを通して痛みを経験すると予測している。
ここまで。
女性は「痛み」の一部を免疫系で感じている
これほど身近な「痛み」ですが、まだまだ良く分かっていなことの方が多いのですが、性別による違いもやはり有ったんだなぁ、と思った次第です。
つまり、男性の痛みを感じる経路はミクログリアに依存し、女性はT細胞に依存している、ということですね。
そして、女性でも妊娠中は男性と同じ経路で痛みを感じているようです。
面白いと思ったのは、トランスジェンダーの人達が性転換手術(または療法)を受けた後にも、痛みに対する差がでるといったところです。
<テストステロンの特定の閾値(しきいち)を超える人は、男性に関連する痛みのメカニズムを持ち、テストステロンがそのレベルを下回る人は女性に共通のメカニズムを通して痛みを経験する>
T細胞はリンパ球の一種であり免疫系を担っています。
つまり、女性は「痛み」の一部を免疫系を使って感じている、というのはとても興味深いと思いました。
だから、女性の方が自己免疫疾患で悩んでいるのが、男性に比べて圧倒的に多いのかも知れません。
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そこで、このテーマでもう少し調べてみましたら、見付けました!
「女性が男性よりも自己免疫疾患を起こしやすい理由がわかった」(仮タイトル)
この記事を次回ご紹介したいと思います。