子どもの時に両親が離婚していると愛情ホルモン・オキシトシン濃度が低くなる

1ヶ月ほど前に「オキシトシンと骨粗しょう症の関係」についての記事を紹介させて頂きました。

オキシトシンを増やすつまりハグを増やせばと骨粗しょう症を予防できる(2020/08/28)

オキシトシンを増やすつまりハグを増やせば骨粗しょう症を予防できる

この記事紹介の冒頭最後の方に、

実は虐待された子どもはオキシトシンが分泌されにくくなり、この傾向はその子どもが大人になっても続くそうでして、さらにその子が自分の子どもを持った場合、さらに自分も虐待をしてしまう、というような負の連鎖が生じやすくなることも分かってきています。

というような事を書きました。

虐待ではなくとも、両親の離婚というその子どもにとって非常にショッキングな出来事でも、その子どもが大人になってもその影響は身体にも深々と刻まれ、普通に両親のいる家庭で育てられた子どもが成人になった人と比べて、大幅にオキシトシンの分泌が少なかった。

という記事を今回紹介しようと思います。

ただ、家庭的な問題であるだけでなく、もっと大きな社会的な問題でもある『離婚』ですので、離婚に対しての是非などをここで取り上げるつもりは全くありません。

個人的には、離婚問題に対しての考え方というか意見は持っています。
ですが、このブログで取り上げる内容でもありません。

そもそも離婚は当事者である二人の問題であり、そのお二人の間に出来た子どもには何ら罪があるものでもありませんし。

離婚は当事者にとっても非常に大きなストレスを与え、そのストレスが当事者本人の心身に影響を与えるだけでなく、その子どもの人生の質にも大きな影響を与えるようです。

私も二人の娘を持つ親でもあるので、考えさせられますね。

 

両親が離婚したときに子供だった人はオキシトシンが少ない

People Who Were Children When Their Parents Divorced Have Less Oxytocin 
 Neuro Science News(2020/09/09)


ここからです。


子どもの頃に親の離婚を経験した成人は、家族一緒に暮らしていた人と比較し、オキシトシンのレベルが大幅に低かった。

 米ベイラー大学の調査によると、両親が離婚したときに子供だった人は、両親がいたまま大人になった人よりもオキシトシン -「愛のホルモン」とも呼ばれる- のレベルが低い事が分かった。

 オキシトシンレベルの低い人は、その人が成長し親になった場合に、その子どもとの愛情を形成する際に問題を引き起こすかも知れない。

 オキシトシン -脳内で分泌され、出産や性的な交流、授乳、さらにはロマンチックなパートナーに抱かれるなどの体験の際にも放出される- 以前の研究では、早期の社会的行動や感情的な愛着に重要であることが示されている。オキシトシン系はまた、子育て、愛着および不安にも関連している。

 Journal of Compare Psychology誌に掲載された新しい研究は、オキシトシンと幼少期における体験とその後の影響についての関連について、十分に研究されていない領域を掘り下げている。

 ベイラー大学のマリア・ボッチャ(Maria Boccia)博士は以下のように述べている。

 「私たちの社会で離婚の割合が増加し始めて以来、離婚が子どもに与える影響について懸念されてきました。ほとんどの研究は、学業成績のような短期的な影響、または人間関係への影響のような長期的な結果に焦点を当てています。しかし、離婚がこれらの影響をどのように引き起こすかについては分かっていません。」

 「オキシトシンは、これらの行動を調節する上で重要な神経ホルモンであり、早期の人生におけるストレスの多い出来事の影響にも敏感に反応します。これは、どのようなメカニズムが関与しているのかを理解するための最初のステップです。」と彼女は続けた。

ボッチャ博士によると、両親が離婚した子供たちを対象としたこれまでの研究では、その経験が気分障害や薬物乱用がオキシトシンと関連していることが判明している行動、ということが分かっている。

 さらに、離婚や親の死などの幼少期の経験は、思春期や成人期のうつ病や不安と関連しており、成人期における子育ての質の低下、親の感受性や温かさの低下、過剰反応や体罰等使用の増加などが挙げられる。

 ベイラー大学の研究者らは、幼少期における親の離婚経験が、その後の成人のオキシトシン濃度に及ぼす影響を調べた。また、参加者には、愛着スタイルやその他の尺度に関する一連の質問票に回答してもらった。

 「私たちが発見したことは、オキシトシンが、親の離婚を経験した人では、経験しなかった人と比較して大幅に低く、愛着のいくつかの尺度での反応と相関していました。」

 「これらの結果は、オキシトシンのレベルが親の離婚によって悪影響を受け親の離婚を経験した人々に記録されている他の影響にも関連している可能性があことを示唆しています。」

 とボッチャ博士は述べた。

 動物研究では、早期の親離れの負の影響に寄与する1つのメカニズムが、オキシトシン活性の抑制である可能性が示唆されている。

 最新の研究では、米国南東部にある2つの高等教育機関で、18歳から62歳までの128人を募集した。そのうち、27.3%が両親が離婚していると回答した。両親が離婚したときの参加者の平均年齢は9歳だった。

 調査地に到着した参加者は、膀胱を空にするように求められたあとに、16オンス(約500ml)のボトルの水を飲まされた。その後、幼少期の両親や仲間、現在の社会的機能に関する質問票に答えた。

 質問項目は、愛情、保護、無関心、過剰なコントロール、虐待を含み、それらに対する両親の取り組み方、そして、彼ら自身の(両親に対する)信頼性、親密性やそれに対しての不快感や承認欲求、彼らとの関係性や子育てのスタイルを含んだ。

 参加者が質問票に回答した後、尿サンプルを採取し、オキシトシン濃度を分析した。両親の離婚を含む幼少期の経験を持つ人では、オキシトシン濃度が大幅に低かった。

 さらに分析すると、それらの人たちは、彼らの両親をより思いやりがなく、無関心であると評価している事が分かった。

 また、彼らは父親をより虐待的であると評価していた。幼少期に親の離婚を経験した人は、自信がなく、親密さに対して不快で、人間関係に安心感を持てなかった。彼らは、両親が離婚していない参加者よりも、自分自身の子育てスタイルを感受性が低く、親密なものと評価していた。

 「この研究を他の科学者に発表するときに私が最初に尋ねられる質問の1つは、『離婚したときに子供は何歳であるかは問題なのか』ということです。それは私たちが調査する必要がある、最も差し迫った質問です」とボッチャ博士は述べた。



ここまでです。

マクロ的な社会問題も根源的には私たちの身体の中のミクロレベルで起きている事の現れなのかも知れませんね。

鶏と卵のような関係でどちらが先なのか分かりませんが。

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