握力と歩行速度の低下は認知機能と注意力・運動能力の低下を招く
前回以下のようなタイトルの記事を書きました。
・インフルエンザ予防接種を繰り返すほど予防効果は減る。しかし、受ける前に運動すると効果が高まる。(2020/10/20)
インフルエンザ予防接種を繰り返すほど予防効果は減る。しかし、もし受けるのならその前に運動すると効果が高まる。
このタイトルだけ見るとインフルエンザ予防接種に関した記事のように思えますよね。
でも記事を読んでいただければ分かって頂けると思いますが、
「免疫の老化を遅らせることが出来るのか?」
という事を書いたものでした。
そこに書いてある事のひとつが、インフルエンザワクチンを含むワクチン接種の抗体反応が加齢と共に落ちるということと、それが毎年ワクチンの接種を繰り返すことでも起きるといったものでした。
加えて、老化を遅らせ免疫を強化することについては、ここ最近の記事でも書いています。
・筋肉量を増やすことは健康寿命を延ばすことにつながるが、どうやって増やせば良いのか(2020/07/28)
筋肉量を増やすことは健康寿命を延ばすことにつながるが、どうやって増やせば良いのか
・健康的な筋肉量を保つことは免疫系を強化し健康寿命を延ばすことにもつながる(2020/07/31)
健康的な筋肉量を保つことは免疫系を強化し健康寿命を延ばすことにもつながる
今からでも簡単に始められそうなのは、筋肉量と共に筋力を維持することのようです。
筋力の衰えは老化や免疫の低下だけでなく、さらには認知機能の低下とも関係しているという記事を今回紹介したいと思います。
認知機能の老化における筋力の役割
・The Role of Muscle Strength in Aging Cognitive Health
Neuroscience News(2020/08/19)
ここからです。
高齢男性の握力は、認知機能、注意力、精神運動機能と相関している。筋肉量と認知機能の間に関連性は見られなかった。
研究では、握力、歩行速度、認知の間に強い関連性があることが示され、身体の健康の改善が高齢者のマインドをいかに高めるかが示されている。
オーストラリアのジーロング地区(ヴィクトリア州)の中心にあるバーウォン・ヘルスを拠点とする研究者は、サルコペニア(加齢に伴う筋肉量、筋力、機能の低下)を発症する危険因子(筋肉量、筋力、身体能力の変化など)を生涯にわたって特定する研究を行っている。
このテストには、1990年代初頭に始まったジーロング骨粗しょう症研究(GOS)が含まれ、バーウォン統計局の選挙人名簿から成人の参加者を集めた。最近の追跡調査では、研究者は身体的健康評価と並行して、コンピュータープログラムを通じて認知機能を測定した。
このコンピューターを使ったテストで認知的健康指数を調べた。これは、マウスをクリックするだけで、精神運動機能、注意力、視覚学習、作業記憶を調べることができるものだ。
ディーキン大学医学部のソフィア・スイ(Sophia Sui)は、60歳以上の男性を対象とした研究から得られた結果は、握力と認知、特に精神運動機能との間に強い関係があることを示したと述べた。
同様に、身体機能を示す通常の歩行速度は、精神運動機能、注意力、および総合的な認知と関連していた。一方、筋肉量と認知機能との間に関連は認められなかった。
「この研究は、高齢者が食事や身体の健康を維持するという単純なことで、生活の質を高める方法をもっと考える必要があることを示しています。」とスイ氏は述べた。
認知機能の低下と筋力の低下が並行して起こると、高齢者は事故による傷害や、運動能力の低下、および自立性の喪失のリスクが高まる。
研究所のジュリー・パスコ教授(Professor Julie Pasco)は、この研究はサルコペニアのような骨格筋の健康問題を理解するために不可欠であると述べた。
「これはまだ発展途上です。加齢とともに筋肉量が低下することは知られていますが、筋力の方がより早く低下することがわかってきました。新たなデータは、人の筋力の低下が、筋肉量よりも全身の健康にとってより重要である可能性があることを示唆しています。」
「スイ氏が発表した研究は、筋力の低下が、身体機能全般だけでなく、認知機能の健康にも重要であることを示しています。スイ氏の研究を含むこの研究はすべて、サルコペニアの比較的新しい定義を洗練させるためのエビデンス基づいた方法として利用することができます。」
博士号が授与された後、スイ氏は、骨格筋の健康と脳の健康との関係に関連する生物学的マーカーや要因を探求することに興味を持っている。彼女はまた、ジーロング骨粗しょう症研究への参加者の将来の調査が、最終的に公衆衛生のメッセージを伝えることができる、と述べた。
「実際に筋力の向上が認知機能の低下を遅らせるのに役立つことがわかれば、この研究を公衆衛生上の行動に役立てることが出来ます。例えば、高齢者にターゲットを絞った、筋強化エクササイズを行い、健康的な体重を維持し、十分な量のタンパク質を含む食事を摂るように求めること、などです。これが違いを生むかどうかを推し量るには、さらに研究が必要です。」
ここまでです。
記事では研究対象が男性となっていますが、女性も同様と思われます。
そして、注目したいのは加齢が進むと「筋肉量」ではなく、「筋力」の方が早く低下し、筋力がより全身の健康にとって重要である事のようです。
また、歩行速度と認知症の関連性については、1年ほど前のブログでも取り上げたことがあります。
・ゆっくり歩く人は45歳でもその年齢よりも脳と体の老化が進んでいる(2019/11/15)
ゆっくり歩く人は45歳でもその年齢よりも脳と体の老化が進んでいる
日本でも、東京都健康長寿医療センター研究所による研究チームが、認知機能低下リスクには骨格筋量よりも握力や歩く速さなどの身体機能が強く関係する、という研究を発表していました。
日本の医療の医学ニュースサイトのメディカル・トリビューンに掲載されていたのを見付けましたので以下にリンク先を記載しておきました。
・握力や歩く速さが認知症リスクに関係(メディカル・トリビューン 2016/8/16)
私も、太っている人よりも痩せている人の方が、また筋肉の量が多い人よりも少ない人が認知症を発症するリスクが高いと思っていましたが、今回紹介した記事のように筋力の低下が認知症ほか老化による様々な疾患のリスク要因のひとつになるようです。
あらためて、日常において適度な運動によって筋力を維持し続けることが健康寿命を延ばすカギのようです。
私も早速握力計を購入して、現在の自分の握力を知っておこうと思います。
医療用のものは高価ですが、実際にはそれほど精確である必要はないですし、値段も手頃なので、これを注文しようかな考えています。
(なお10/22現在もAmazonでは在庫なしでした。)
あ~なるほど!多分その理由が分かりました。
NHKの「ガッテン」という番組で握力と寿命の関係について紹介したようですね。
・意外な寿命バロメーター!握力で死亡リスクがわかっちゃう!?(2020/9/9放送)
日本人は、健康番組で放送すると、その紹介した商品が売れるという国民性のようですからね。(笑)