プロ・アマに関わらず多くのアスリートが使っている「痛み止め」のリスク
ランニングやジョギングは非常に人気があるようで、下記のようなタイトルの記事を昨年11月に書かせて頂きましたが、未だに人気上位にあり関心度の高さが分かります。
・健康のために行うランニングは週1回だけでも効果あり。それどころか6分歩くだけでもやる気を高める 整体は人間学だ(2019/11/11)
健康のために行うランニングは週1回だけでも効果あり。それどころか6分歩くだけでもやる気を高める
更にもっと超長距離を何日も掛けて走ったり、走るだけでは飽き足らずに、自転車に乗ったり、泳いだりするアイアンマンレースでしたっけ・・・みたいな、そんな途方もないクレージーなスポーツを愛する人達の間に、鎮痛剤を服用してまでレースに参加する人が多いというのを初めて知りました。
そんなことやって身体に良いわけないだろう!
と、ごく普通にオジさんは思うわけです。
実際、レースに命をかけているようなプロのような選手はともかく、ごく普通の市民ランナーのようなアマチュアの人達までが普通に鎮痛剤を飲んで走るというのは、狂気以外の何物でもないと思います。
紹介の記事は欧米のもの(著者は英国人)ですが、日本でも少なからず同じような状況なのではないかと推測します。
記事にある非ステロイド性抗炎症薬は、分かりやすく言うと「痛み止め」の事です。
非ステロイド性抗炎症(NSAIDs Non-Steroidal-Anti-Inflammatory Drugs)薬は、日本では以下のようなものがあります。
-
病院で主に処方されるものとしては、
- アスピリン(バファリンⓇなど)
- ロキソプロフェン(ロキソニンⓇ)
- ジクロフェナク(ボルタレンⓇ、ジクロフェナクⓇ)
- インドメタシン(インダシンⓇ)
- メフェナム酸(ボンタールⓇ)
- スルピリン(メチロンⓇ)
- アセトアミノフェン(アンヒバⓇ、カロナールⓇなど)
- その他
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市販薬では、
- アスピリン(バファリンAⓇなど)
- イブプロフェン(イブⓇなど)
- エテンザミド(ノーシンⓇ,新セデスⓇなど)
- イソプロピルアンチピリン(セデス・ハイⓇなど)
- アセトアミノフェン(タイレノールⓇ、小児用バファリンⓇなど多くの市販薬)
- その他
商品名など見ればすぐに気がつかれるように、テレビのCMなどで流れるようなごく身近なクスリである事が分かります。
(知らない名前を探すのが難しいほど一般に浸透してますね)
副作用は以下の表を参照下さい。
ランニング:イブプロフェンの使用は一般的だが、多くのアスリートはリスクを認識していていない
・Running: ibuprofen use is common ? but many athletes are unaware of the risks
Medical Xpress(2020/07/03)
ここからです。
ウルトラ・マラソン選手であろうと(ランニングを)始めたばかりの人であろうと、ランニングによるケガや筋肉痛は避けることができない。しかし、多くのランナーはケガや痛みを乗り切るためにイブプロフェンや他の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に手を伸ばしてしまう。
これは回復を難しくするだけでなく、抗炎症薬(鎮痛解熱薬)を頻繁に使用するとことは危険だ。最近の研究では抗炎症薬の使用がアマチュアランナーの間で広まっていることを示しているが、ほとんどは潜在的な危険性を認識していない。
Couch to 5K(ソファーへ5キロ:エクササイズアプリ)やParkrun UK(パークラン:毎週土曜の朝に5大陸の22ヶ国、1400以上の場所で行われる5kmのランニングイベント)などのカジュアルなプログラムは人気があり、マラソンやウルトラマラソンなどの耐久性のあるイベントは、過去20年間で参加者が増え続けている。アマチュアの持久系アスリートのトレーニングルーチンは過酷で、ストレスや痛みを伴うことがあるため、多くの人が、鎮痛剤を使用している。
研究では、耐久ランナーの間でNSAIDsの著しい使用量が示されており、ロンドンマラソンのランナーの46%がレース中にNSAIDを服用することを計画していたという。
しかし、これにはリスクがないわけではない。NSAIDs の使用は、薬物の量と期間に応じて、胃腸潰瘍、急性腎障害、心血管へのリスクなど、既知の害と関連がある。NSAIDs のこれらの負の結果は、すべての有害な薬物入院の30%に及ぶと考えられている。
長距離耐久イベントの極端な生理的負荷の下では、これらのリスクが増大し、身体的ストレスに関連して新たなリスクが発生する可能性がある。消化器系への血流と運動性の低下は、NSAID を使用していなくても、胃の問題を引き起こすことは良くある。
また、レースによる筋肉の損傷は、血液中のタンパク質を増加させ、急性腎障害につながる可能性があるが、NSAID の使用によってさらに悪化させることがある。
水分過多によるナトリウム濃度の低下が致命的になる可能性のある低ナトリウム血症は、持久力のあるアスリートのもう1つの問題だ。
死亡例はまれだが、無症候性の低ナトリウム血症はマラソンランナー10人に1人の割合で発生し、NSAID の使用によっても高まる可能性がある。
痛みを走り抜ける
耐久ランナーにおけるNSAIDの使用については多くのことが知られているが、市民ランナーの使用についてはあまり知られていない。幅広いランニングコミュニティを代表するParkrun UKの参加者806人を対象に、さまざまなランナーの使用状況を調査しまた。調査対象となったランナーの90%近くがNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を使用しおり、通常は市販されているイブプロフェンを使用していた。8人に1人のランナーが、喘息などのNSAIDを避ける理由があったが、3分の1のランナーは、マラソンの距離以上を走っていた。
ランナーの半数以上が、ランニングまたはレースの前にNSAIDを服用していた。10人に1人はランニング中にも服用し、3分の2はランニング後に服用していた。ランニングが長ければ長いほど、彼らはレース前またはレース中にNSAIDを服用する可能性が高くなる。
ハーフマラソン選手とマラソン選手は、NSAIDをより一般的に使用していたが、それよりも心配なのは、ランニング中にNSAIDを服用した33%のウルトラランナーだった。これらのレースは消化器系および腎臓系にストレスをかけているからだ。
短距離ランナーは、イブプロフェンを使用して、既存の痛み、進行中の医学的問題、または負傷状態で運動を続けていた。しかし、長距離のランナーは、炎症、苦痛、痛みの軽減、パフォーマンスの向上が疑われる場合に使用していた。これらすべての問題に対する使用は、(クスリを)頻繁に使用することによる潜在的なリスクを認識した場合にのみ行うべきである。
私たちの研究では、ランナーの3分の1が、NSAIDsによる副作用が疑われる経験をしており、主に胸やけと、いくつかのケースでは胃腸からの出血があった。ランナーの40%以上が心血管系、腎臓、消化器系の副作用を認識していなかった。
ランナーの半数近くが、医療専門家の助言なしにNSAIDsを使用していた。調査対象のほぼ全員が、アドバイスがあれば読むと回答している。この回答が調査を完了した時だけの結果だとしても、NSAIDsを使用することのリスク、特にランニング中のリスクについて、より良い情報を提供する必要があることは明らかだ。
このような意識の欠如とNSAIDsの長期使用(特にランニングのたびに服用する場合)が組み合わさると、潜在的に健康上の問題を引き起こす可能性がある。マラソンやウルトラマラソンのランナーには、さらに大きな固有のリスクがある。これらの長い持久力イベントは、すでにランナーの体には極度のストレスがかかっているため、NSAIDの長期の使用は、生命にかかわる低ナトリウム血症、消化管出血、腎不全のリスクを増加させる。
運動上の注意
すべての薬物と同様に、NSAIDsには利点と害がある。ただし、NSAIDsは治癒やトレーニングに逆効果である可能性があることが研究で示されている事を考えると、アマチュアアスリートはNSAIDsの使用を慎重に検討する必要があるだろう。
週に一度のランニングの前後にイブプロフェンの錠剤を時々使用する人は、リスクが低いと思われる。しかし、慢性的な使用によってのみ効果が有効になっている場合は、特に、長時間、より頻繁に行われるランニングと共にリスクが上昇する。
しかし、トレーニングの目標を達成するために、NSAIDsを使用して怪我や痛みを我慢して走ることは、ランニングの長期的な健康上のメリットに対して逆効果だ。厳しいトレーニング中や、イベント中の持続的な生理的ストレスの中での多用は、絶対に避けるべきだろう。
このような文化を変えるためには、NSAIDの安全性とランニングに関するより多くのメッセージがさらに必要だ。しかし、ロンドンマラソンでは、潜在的な危険性のため、レース後48時間以内にNSAIDを使用することを避けるようランナーにアドバイスしていた。
彼らの決定は、他の組織も追随するように促すかもしれない。
ここまでです。
鎮痛剤の危険性については、整体院を利用されている方には耳タコ状態になるほど伝えています。
・『消炎鎮痛剤は悪魔が天使の仮面を被っている』② ~痛み止めは病をつくる~ 整体は人間学だ(2018/06/27)
『消炎鎮痛剤は悪魔が天使の仮面を被っている』② ~痛み止めは病をつくる~
クスリは正しく使いましょう。