あなたが飲んでいるマルチビタミン・サプリメントの効果はただの思い込みによるものなのかもしれない
あなたが健康にとって良いと思っているそのビタミン剤を始めとするサプリメントはただのプラセボ(偽薬)だとしたら、それでも飲み続けますか?
以前にもこのブログで多く取り上げているサプリメントなどの健康補助食品ですが、私はサプリメントを完全否定するつもりはなく、必要なものを補うために飲むのはむしろおすすめしています。
ただ、それが本当に効いているのか、効果があるのかについては難しい問題が絡んできます。
・サプリメントが効くか効かないかは個人差が大きくその効果を証明するのが困難なワケ(2020/08/04)
サプリメントが効くか効かないかは個人差が大きくその効果を証明するのが困難なワケ
なので、最終判断は結局自分自身で判断するしかないのかも知れません。
そして私は、人には信念のような意識に、非常に強いパワーがあると信じています。
・プラセボは「心」と「体」の関係性をつなぐ新たな科学になる可能性(2020/08/07)
プラセボは「心」と「体」の関係性をつなぐ新たな科学になる可能性
さて、今回はサプリメントの中でも非常に一般的だと思われるマルチビタミン剤の効果を研究した記事をご紹介しましょう。
この記事には、研究者が出した報告と、それに対するサプリメント業界の意見の双方が取り上げられています。
それぞれの立場によって異なる視点が面白く、興味深いと私は訳しながら思いましたが、みなさんはどう思われたでしょうか?
マルチビタミンの「利点」はすべてあなたの頭の中にある
・Multivitamins’ ‘benefits’ are all in your head: study Medical Xpress (2020/11/10)
ここからです。
マルチビタミンは本当にあなたの健康のための魔法の薬であると、新しい研究は主張している。しかしそれは、あなたが考えているようなものではおそらくないだろう。
マルチビタミンの健康上の「利益」は、すべて心のトリックかもしれない、と研究者たちは言う。
マルチビタミンを定期的に摂取している米国の成人は、サプリメントを使用していない人よりも、全体的な健康状態が30%優れていると自己申告していたことが、連邦政府が資金提供した調査結果で明らかになった。
しかし、数十種類の身体的・精神的疾患を評価した包括的な医学史からは、マルチビタミンを摂取した人と摂取しなかった人の間に、実際の健康上の違いが無かったことが明らかになった。
「マルチビタミンの使用者と非使用者では、臨床的に測定可能な健康結果のいずれにおいても違いはありませんが、全体的な健康状態が少なくとも約30%改善されたと報告しています」と、ハーバード大学医学部の学生であり、主任研究員であるマニッシュ・パランジェ(Manish Paranjpe)は述べている。
この調査結果に反応し、サプリメント業界の業界団体である栄養評議会(Council for Responsible Nutrition)のアンドレア・ウォン(Andrea Wong)氏は、研究設計に関する問題を引用し、
その結果は、「いかなる方法でも、栄養不足との戦いにおいて、最適な健康を促進する上で、マルチビタミンの多くの利点を割り引くものではなく、消費者がマルチビタミンを摂取するか、将来的に一つを摂取するかの決定を再考するための根拠を提供していない。」
とウォン氏は述べた。
アメリカ人の約3分の1は、マルチビタミンが健康に寄与すると信じて日常的に摂取している、と研究者らはその研究の背景で述べている。
しかし、以前の研究では、心臓病からガンに至るまでの一連の健康問題に対するマルチビタミンの利益を裏付ける証拠はほとんど見つかっていない、とパランジェ氏は述べている。
サプリメントの何かしらの効果を確立できるかどうかを確認するために、研究者たちは、2012年の米国民健康面接調査の一環として収集された21,000人以上のデータを分析した。
参加者は、ビタミン剤の摂取を含む補完医療(代替医療)の利用について質問された。
5,000人近くが定期的にマルチビタミンを摂取していると述べ、16,000人以上が摂取しなかったと述べている。定期的にマルチビタミンを摂取している人は高齢で、世帯収入が高い傾向があった。また、女性、大卒、既婚者であり、健康保険に加入している可能性が高かった。
参加者はまた、自分に影響を与える可能性のある無数の健康問題についても質問された。研究者は、以下に関する調査質問への回答に基づいて、彼らを評価した。
- 自分自身の健康に対する主観的な評価
- 障害の尺度として機能する日常生活の支援の必要性
- 高血圧、糖尿病、喘息、関節炎などの10の長期的な病歴
- 感染症、記憶喪失、神経機能障害および筋骨格系の問題を含む、過去1年間に対する19の一般的な病歴
- 抑うつや不安の問題を示す可能性のある心理的苦痛の程度
マルチビタミンの使用者は、非使用者よりも健康であると判断する傾向があったが、本質的な医学的詳細は、彼らが実際にはそうではなかったことを明らかにした、と研究の著者は指摘している。
マルチビタミンが効くという強い信念は、人々を騙し、実際よりも健康的な気分にさせるだけかもしれないと、パランジェ氏らは述べている。
また、マルチビタミンを摂取する人々は「一般的に、または単に自然に、よりポジティブな人である可能性もある」とパランジェ氏は追加した。
ウォン氏は、この研究は調査データに基づいており、人々がどのような特定のマルチビタミンを摂取していたか、どのくらいの頻度で、どのくらいの期間摂取していたかを尋ねていない、ということを指摘している。そのため、因果関係を証明することはできず、多くの疑問が残る、としている。
マルチビタミンの主な役割は、栄養のギャップを埋めることであり、ビタミンA、C、D、E、K、カルシウム、マグネシウム、食物繊維、コリン、カリウムなどの摂取不足の栄養素を毎日摂取できるようにすることである。
「この研究の結論は一般の人々にとって不利益であり、マルチビタミンやその他の栄養補助食品を摂取するという消費者の決定に影響を与えるべきではない」とウォン氏は述べた。
しかし、必要な栄養素とミネラルを得るための最良の方法は、食品を介してであることが研究で示されている、とエモリー大学病院ミッドタウンの栄養管理士メリッサ・マジュムダール( Melissa Majumdar)は言っている。
「栄養管理士として、私たちのほとんどは、食事からさまざまな栄養素やビタミンを摂取できると感じています。それが私たちが患者に教えることです。私たちはアメリカ人は、具体的なものが好きです。私たちは自分たちができると感じるもの、簡単な行動で行う事が出来ることを好む傾向があると思います。」
「しかし、錠剤では得られないものもありますし、ビタミンやミネラルは単独では機能しないことを知っています。それらは相乗的に機能するのです。ビタミンとミネラルが食品とは切り離されて研究されている場合、同じ効果を得られないでしょう。」
とマジュムダールは続けた。
パランジェは、これらの結果は、すべてのサプリメントがお金の無駄だと解釈するべきではないと述べている。
「確かにビタミンサプリメントには正当な用途はあります。例えば、妊娠中の葉酸は一般的に子供の神経管障害を防ぐために処方されています。」
しかし、パランジェは、マルチビタミンや特定のビタミンサプリメントを必要とする特定の条件を持っていない一般の人々のために、
「マルチビタミンを毎日摂取することが何か役に立つことを示す証拠はないのです」と付け加えた。
本当の懸念は、人々がどこに効いているのか分からないのに、健康に役立つというマルチビタミンに対してお金をムダにしていることではないでしょうか、とパランジェは言った。
「私たちは、お金をより健康上の利点があることが分かっているもの、たとえば健康的な食事をする、運動や社交などにお金を使うほうがよいと信じています。」
ここまでです。
それぞれの立場によって異なる視点が面白く、興味深いと私は訳しながら思いましたが、みなさんはどう思われたでしょうか?
特に以下の部分について私は大いに同意するところです。
「しかし、錠剤では得られないものもありますし、ビタミンやミネラルは単独では機能しないことを知っています。それらは相乗的に機能するのです。ビタミンとミネラルが食品とは切り離されて研究されている場合、同じ効果を得られないでしょう。」
ピュアなものは、確かに美しく見えるかもしれません。
しかし、私には人工的な美しさにしか見えないです。
料理でもそうだと思いますが、単純な一つのみの味で、たとえば、ただ甘いだけの人工甘味料、しょっぱいだけの塩化ナトリウム(人工塩)、こういった味付けの料理が美味しいとは感じないでしょう。もしかすると美味しいと感じる人がいるかも知れませんが、少なくとも私はそうは思わないです。
様々な味が微妙なバランスの上でなりたつ、絶妙なハーモニー(調和)が料理を美味しくさせますし、シェフの腕によって作られたその料理を、綺麗なお皿に盛り付けられれば、見た目にもとても美味しいものだということが想像つきます。
この時点では、まだその料理を口に入れた訳ではないですが、すでに口の中にはよだれがあふれているはずです。
その料理が昔食べたことがあるのであれば、もうすでにあなたの頭の中ではその料理の香りや味、さらにはその温度でさえも感じているでしょう。
もう一度言いましょう、まだその料理を口にしてはいないのにも関わらず、です。
これが意識(想像)の力です。(意識の力はDNAさえも書き換えることが出来ることが最近の研究でも分かってきています。)
そして、ひとたびその料理を口にすれば、色々な素材の様々な味のバリエーション(多様性)が口の中に広がり、その料理の味に絶妙で微妙なバランスをもたらしているのです。
上にあげた例は料理ですが、これを健康の為にといって飲むサプリメントに置き換えてみれば、分かって頂けるかも知れません。
食品そのものには様々な成分が含まれています。それらが含まれていることによって現れる効果がありますが、それは単一の成分だけで抽出されたものでは出せない効果があると考えています。
そうは言っても正直食事だけでは、実際摂りにくい栄養素があることやそれが不十分であることも事実でしょう。ですから、サプリメントを食事の中に摂り入れる事は現代の食事内容を考えると、必要なものかも知れません。
それでも、サプリメントを過信せず、上手に活用することが大事なのだと思います。