衝撃の事実! 腸内細菌の多様性がなければ、いくらビタミンDサプリを飲んでも、日光を浴びても効果はない

今回の記事はちょっと(私にとっては)ショックです。

なぜかというと、今までビタミンDは食物プラス太陽光(紫外線)を浴びることで生成されると考えられているため、適切な食事と屋外での活動で必要十分なビタミンDは摂取できるものと思っていたからです。

しかし、今回の研究報告ではビタミンDを体内で利用するためには、活性型のビタミンDに代謝させる必要があり、その代謝を助けるのは私たちの腸内に棲む微生物によって左右される事が分かった、というものです。

つまり、単純にビタミンDを多く含む食品と太陽光を浴びるだけでは効果がない、とはいわないまでも少ないのだそうです。

ビタミンDには、さまざまな効用があることが分かっており、新型コロナウイルスの感染に対しても効果があることは、いくつかの研究で発表されています。

私のブログにも、以下の記事を扱いました。

太陽光を浴びてビタミンDを増やすことは呼吸器感染症を予防する効果がある(2020/04/20)

太陽光を浴びてビタミンDを増やすことは呼吸器感染症を予防する効果がある


そしてまた、腸内細菌叢には紫外線が不可欠であり、腸内細菌叢の多様性が必要な事も。

紫外線は私たちの腸内に住む微生物を豊かにし健康に導く(2019/11/18)

紫外線は私たちの腸内に住む微生物を豊かにし健康に導く

この記事では、

「たった3回太陽光を浴びるだけでも健康な人の腸内細菌叢と同じような組成になった」

という事が書かれていたのですが、

今回の記事によると、

「すでに何らかの問題によって腸内環境が悪化し、腸内細菌叢の多様性が崩れてしまっている状態では、どれほどサプリメントを摂取したり、太陽光を浴びても健康効果はない」

というものです。

研究によって矛盾した結論になることは良くありますが、気になりましたので今回取り上げさせて頂きました。

それでは、本題に入りましょう。

 

腸内細菌とビタミンDレベルの関連性が研究で明らかに


Study reveals connection between gut bacteria and vitamin D levels Medical Xpress(2020/11/30)


ここからです。


私たちの腸内マイクロバイオーム(消化管に生息する多くの細菌、ウイルス、その他の微生物)は、私たちの健康と病気のリスクに重要な役割を果たしていることが認識され始めたばかりである。

 カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究者と共同研究者は最近、人の腸内細菌叢の構成は、骨の健康と免疫力に重要なホルモンである活性型ビタミンDのレベルに関連していることを高齢の男性で実証した。

 2020年11月26日の『Nature Communications』誌で発表されたこの研究は、ビタミンDの新たな理解と、それが通常どのように測定されるかについても明らかにした。

 ビタミンDはいくつかの異なる形態をとることができるが、標準的な血液検査では、体が貯蔵できる不活性な前駆体を1つだけ検出することができる。体がビタミンDを使用するには、この前駆体を活性型に代謝する必要がある。

 「私たちは、腸内細菌叢の多様性(人の腸内細菌の種類の多様性)が活性型ビタミンDと密接に関連していることに驚きましたが、さらに前駆体であるビタミンDとは関連していないことを発見したのです。腸内細菌叢の多種多様性は、一般的により良い健康と関連していると考えられています。」

 と、上級著者のデボラ・ケド(Deborah Kado)医学博士は述べている。

 複数の研究により、ビタミンDのレベルが低い人は、ガン、心臓病、COVID-19感染症、その他の病気のリスクが高いことが示唆されている。しかし、25,000人以上の成人を対象としたこれまでで最大のランダム化臨床試験では、ビタミンDサプリメントを摂取しても、心臓病、ガン、あるいは骨の健康を含む健康状態に影響を及ぼさないと結論付けている

 「私たちの研究は、これらの(以前の)研究が活性ホルモンではなく、ビタミンDの前駆体のみを測定したためかもしれないことを示しています。ビタミンDの形成と分解の測定は、根本的な健康問題のより良い指標となり、ビタミンDの補給に最もよく反応するかもしれません。」と、ケド博士は続けた。

 チームは、研究に参加した567人の男性から提供された便と血液サンプルを分析した。参加者は米国内の6つの都市に住んでおり、平均年齢は84歳で、ほとんどの人が健康状態が良好または優れていると報告されている。

 彼らは、LC-MSMS(液体クロマトグラフィー質量分析法)として知られる方法を使用して、各参加者の血清中のビタミンD代謝物(前駆体、活性ホルモン、分解生成物)を定量化した。

 活性型ビタミンDと全体的な腸内細菌叢の多様性との関連を発見したことに加えて、12種類の特定の細菌が活性型ビタミンDを多く含む男性の腸内細菌叢に頻繁に出現していることにも注目している。これらの12種類の細菌のほとんどは、腸内の健康を維持するのに役立つ有益な脂肪酸である酪酸を産生している。

 「腸内マイクロバイオームは本当に複雑で、人によって大きく異なります。私たちが関連性を発見したとしても、私たちが発見したほど、一般的にははっきりとしたものではないからです。」

 彼らは米国のさまざまな地域に住んでいるため、調査対象の男性は、ビタミンDの供給源であるさまざまな日光量にさらされている。そして予想どおり、カリフォルニア州サンディエゴに住んでいる男性は、最も多くの日光を浴び、ビタミンDの前駆体を最も多く持っていた。

 しかし、チームは予想外にも、男性が住んでいた場所と活性ビタミンDホルモンのレベルには相関関係がないことを発見している。

 日光やサプリメントからどれだけのビタミンDを摂取しても、体がどれだけ貯蔵できるかは問題ではないようです。重要なのは、あなたの体が活性型ビタミンDをどれだけうまく代謝できるかであり、おそらくそれは、健康におけるビタミンの役割をより正確に把握するために、臨床試験で測定する必要があるでしょう。」

 「医学の世界では、多ければ多いほど良いというわけではない、ことがよくあります。この場合は、どのくらいの量のビタミンDを補給するかではなく、どのようにあなたの体がそれを使用するのか、なのかもしれません。」

 と同著者のトーマス医学博士は付け加えた。

 ケド博士は、この研究は、参加者の血液と便に含まれる微生物とビタミンDの単一のスナップショットに基づいており、これらの要因は、人の環境、食事、睡眠習慣、薬などによって時間の経過とともに変動する可能性があると指摘した。

 チームによると、細菌がビタミンDの代謝に果たす役割をよりよく理解し、マイクロバイオームレベルで介入をすることで、現在の治療を強化し、骨やその他の健康状態を改善できるかどうかを判断するには、さらに多くの研究が必要であるという。


原典)Vitamin D metabolites and the gut microbiome in older men Nature


ここまでです。

今回の研究では、ビタミンDと腸内細菌叢の関連性を示した論文でしたが、広く考えれば、それ以外の栄養素やクスリでさえも腸内細菌の多様性が無ければ、効果などに差がでると言うことではないかと思います。

とすれば、効くかきかないかはやはり個人によって大きく異なり、その原因は私たちの腸内に棲む微生物に依存するということになるのかも知れません。

また、サプリメントにはほとんど効果がないかもしれないという記事も先日書きました。

あなたが飲んでいるマルチビタミン・サプリメントの効果はただの思い込みによるものなのかもしれない(2020/11/27)

あなたが飲んでいるマルチビタミン・サプリメントの効果はただの思い込みによるものなのかもしれない

さらに、記事内にある「酪酸」に関しても過去に書いています。

この「酪酸」も腸内細菌叢と大いに関係があり、しかも「老化の遅延」や「認知機能の低下」を助けるかもしれない、というものでした。

老化を遅らせるカギは腸内細菌にあり、それを助けるのは「酪酸」にあった(2019/11/25)

老化を遅らせるカギは腸内細菌にあり、それを助けるのは「酪酸」にあった


私たちの体の中の環境は悪化の一途をたどっていますし、私たちの住む地球の環境破壊もすさまじいものです。

自分の体は自分で守る。

そのために出来るところから始めましょう。

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