なぜストレスが常にうつ病を引き起こすとは限らないのか
私たちは普段の生活や社会の中で、絶えず何かしらのストレスを受けています。
同じストレスを受けても、それをストレスと感じずにやり過ごせる人もいれば、ストレスを強く感じて、それが長く続くことでうつ病にかかりやすくなりますが、一体その差は何から生まれるのか?
ストレスによる影響を受けやすい人と影響を受けにくい人との違いを見分ける事が出来る可能性を示唆する新しい研究が報告されました。
ところで、この記事を読んだのは12月5日頃だったのですが、翻訳してこのブログ書いたのは12月12日です。
ネットを調べていたら、著名な精神科医で作家でもある樺沢紫苑氏が東洋経済オンラインに寄稿していた記事を見つけました。
「うつになりやすい人の意外に典型的なパターンなぜ重症患者ほど「平気そう」な顔をするのか」
・https://toyokeizai.net/articles/-/315497
こちらには「レジリエンス」(以下の私の翻訳記事には回復力と訳しました)を、「心のしなやかさ」という訳で使っており、このレジリエンスの高め方やうつ病の予防法が簡潔にまとめられていますの、是非参考にされると良いと思います。
ちなみに私、個人的にですが樺沢紫苑氏の大ファンで氏の著作はほぼ全部読破させて頂いております。
ビジネス書籍がほとんどですが、とても読みやすくかつ理解しやすく書かれていて、最近では「アウトプット大全」や「インプット大全」がどちらもベストセラーになっています。
今でも本屋に行けば平積みされていますので、同書を見ている人が多いかも知れません。
追記)2019/12/14
昨日12/13のNHK「首都圏情報ネタドリ!」
タイトル「人生を豊かにするアウトプット術」
・https://www4.nhk.or.jp/netadori/x/2019-12-13/21/23884/1503275/
で取り上げられておりました。
アウトプット力を鍛えたい方は、
NHKでも取り上げられたこの本
『学びを結果に変えるアウトプット大全』(サンクチュアリ出版)おすすめ致します。
なぜストレスが常にうつ病を引き起こさないのか
ここからです。
無快感症の影響を受けやすいラットの縫線核*には、より多くのセロトニンニューロン(神経細胞)がある。扁桃体のニューロンを活性化すると、セロトニンシグナル伝達が減少し、社会的ストレスの影響が低下した。
うつ病の中核症状である無快感症の影響を受けやすいラットは、慢性的なストレスにさらされた後、より多くのセロトニンニューロンを保有するが、ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス(Journal of Neuroscience)に発表された研究では、扁桃体の活性化によってその効果が逆転することが分かった。
一部の人々は、慢性的なストレスにさらされても、うつ病や快感消失、または喜びの欠如が現れることがない。このような快感消失に対する感受性を測定するために、脳内の報酬回路が活性化するようにラットを訓練し、喜びの感情を引き起こした。
ラットには1日1回社会的ストレスを経験させ、15分後に自己刺激へのアクセスを与えられた。快感消失の影響を受けやすいラットでは、ストレスは快感を感じるのに必要な刺激の強度を劇的に増加させたが、回復力のあるラットにはほとんど影響を与えなかった。
回復力のあるラットと比較して、(ストレスに対する)感受性のあるラットは、背側縫線核の腹部、ストレスと報酬の調節に関与する脳の領域により多くのセロトニンニューロンを持っていた。
この増加は、非セロトニンシグナル伝達ニューロンの動員によるものだ。
研究者がセロトニンシグナル伝達の増加を防ぐために扁桃体中心核ニューロンを活性化させると、ラットは社会的ストレスからの影響の減少を経験した。
うつ病やその他の精神障害は、慢性または外傷性のストレス要因によって引き起こされる可能性がある。 ただし、それに対する回復力があり、慢性ストレスに反応してもうつ病を発症しない人もいる。
これには、大脳辺縁系回路の可塑性がストレス関連障害の病態生理とどのように関連しているかを理解するには、感受性のある個人と回復力のある個人との間の分子的な違いについての完全な全体像が必要となる。
げっ歯類モデルを使用して、ストレス誘発性無快感症、うつ病の中核症状、およびそれを調節する手段に対する感受性の新たな分子マーカーを特定した。 これらの発見は、回復力の高い細胞およびそのメカニズムのさらなる調査、およびうつ病の新しい治療法の開発につながるだろう。
ここまでです。
縫線核とは:
縫線核(ほうせんかく)とは脊椎動物の脳幹にある神経核の一つである。大きく吻側核群、背側縫線核、 尾側核群に細分類される。睡眠覚醒・歩行・呼吸などのパターン的な運動や注意・報酬などの情動や認知機能にも関与する。その投射は脳全体にわたっている。生化学的にはセロトニンを含む細胞が存在するのが大きな特徴である。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
慢性的な社会的ストレスに反応した神経伝達物質の可塑性モデル
記事の中には以下の図がありますが、上述したモデル図です。
この説明もありますが専門用語ばかりでかなり難解ですが、図を見ながら読むと理解が進むのではないかと思いましたのでこちらも翻訳しておきます。
ここからです。
慢性ストレスは、感受性が強いが回復力のない個体に快感消失を誘発する。これは、ヒトおよび動物モデルで観察される現象だが、感受性と回復力の根底にある分子メカニズムはよく理解されていない。
そこでストレス、報酬、抗うつ療法に関係しているセロトニン系が役割を果たす可能性があるという仮説を立てた。
するとセロトニン作動性システムの可塑性は、感受性と回復力のある動物によって示されるストレスに対する脆弱性の差異に寄与することがわかった。
セロトニン作動性表現型の変化は免疫組織化学と交配雑種(ハイブリダイゼーション)を使用して調べたが、ストレス誘発性無快感症は社会的敗北と頭蓋内自己刺激(ICSS)を使用して成体雄ラットで評価された。(ストレスの)影響を受けやすく、(ストレスに対する)回復力がないラットは、背側縫線核(DRv)の腹側亜核で、セロトニンの生合成酵素であるトリプトファンヒドロキシラーゼ2(TPH2)を発現するニューロンの数を増加させた。
さらに、DRvグルタミン酸作動性(VGLUT3+)ニューロンの数の減少がすべてのストレスを受けたラットで観察された。この神経伝達物質の可塑性は、DRへの主要な入力を形成するストレス感受性核である扁桃体中心核の化学的遺伝学の操作によって明らかにされたように、活性に依存している。
扁桃体副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH+)ニューロンの活性化は、DRv TPH2+ニューロンの増加を無効にし、感受性ラットのストレス誘発性無快感を改善しました。これらの発見は、扁桃体CRH+ニューロンの活性化が回復力を誘導し、感受性ラットの特徴であるDRにおけるセロトニン作動性表現型の増加を抑制することを示しています。
ここまでです。
ストレスに「GABA」とセロトニン
「扁桃体副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン」という長い名前のホルモンですが、名前をそのままで理解すると、副腎皮質ホルモンを放出させるための扁桃体でつくられるホルモンということでしょうか。
副腎皮質ホルモンと言えば悪名高い「ステロイド」ですよね。
抗炎症作用、抗アレルギー作用、免疫反応抑制作用及び細胞増殖抑制作用などを示すため、古くから多くの疾患に使用されています。
とても効果が高いので、頻繁に使用されている薬です。
効果が高いのは確かにありがたいのですが、あくまでも症状を緩和させる対処薬なので、薬をやめると、体に禁断症状が現れることもあり、命の危険にさらされる可能性もあるような非常に依存性の高い薬です。
図の中央下部の紫色で記載されている該当箇所には、もう一つ文章には出てこないのですが、GABA+という文字が書かれています。
このGABAは、健康志向の高いみなさんはご存じかも知れませんね。
このGABAですが、神経を抑制させる神経伝達物質でγ-アミノ酪酸というアミノ酸の一種の略称です。
GABAが多く含まれる食品を取ると心が落ち着く、自律神経のバランスが整う、といった効能で、特にチョコレートの商品名として売り出し有名になりましたよね。
(参考)グリコ メンタルバランスチョコレート「GABA」
https://cp.glico.com/gaba/
でも、実際問題としてGABAそのものを食べても直接脳に取り込まれる事はないので、どうなのかな?という疑問がありますが。
ただし、GABAの材料のグルタミン酸はアミノ酸の一種です。
アミノ酸はタンパク質に含まれるので、肉、魚、卵、乳製品など摂取すれば普通に摂れますね。
またグルタミン酸は、うまみ成分としても知られています。
動物性のうまみ成分がグルタミン酸で、植物性のうまみ成分がイノシン酸。
グルタミン酸は先ほど述べたように魚や肉や卵、乳製品に多く含まれていることから、時間がなくてなかなかご飯を作る機会がないという人は卵ご飯や三角チーズなどで摂取すれば手間暇掛からずに摂取できます。
また、セロトニンもトリプトファンというアミノ酸からつくられるので、タンパク質をしっかりとれば、セロトニンの材料になります。
ただし、セロトニンを増やすには運動と太陽光も重要な要素です。