私たちの体温は着実に低温化している

日本人の体温は昔と比べ低くなってきていると言われ、体温が1℃下がると免疫力が30%下がるとも。

それでは本当に体温は下がり続けているのか?

アメリカのスタンフォード大学の研究者たちが、19世紀半ば頃のアメリカ人たちの健康記録と、1970年代と2000年代の健康記録データから彼らの「平均体温を比較」したところ、

「 19世紀から現在まで、人々の標準体温は下がり続けている」

ことがわかりました。

これはアメリカ人の研究報告ですが、たぶん主要国でも同じようなことが起きていると思われます。

ちなみに、日本人の平均体温は、と調べたところ、36.89℃±0.34℃(腋の下の温度)となっていました。

日本人の平均体温は36.89℃ということになっています。これは1957年に、東京大学の田坂定孝教授らが、10~50歳代の3094人(男性1445人、女性1649人)の健康な方の体温を計測した結果です。水銀血圧計を用い、腋窩体温を30分以上かけて正確に測定しました。この結果、健康な日本人の平均体温は、36.89℃を中心とした36.55~37.23℃ということになりました。

年齢を重ねるにつれ体温は下がってきます。1日の変動でいえば、日中が高く、夜間が低くなります。しかし、1日の変動があるといっても、通常は1℃以内の変動になります。寒い季節は体温が低く、暑い季節は体温が高くなる傾向があります。もっとも、暑い季節でも、汗をかけば体温は下がります。また、食事の直後や運動の直後には体温が高くなります。

引用元:三和書籍 日本人の平均体温

 

私自身も「体温は(ある程度は)高い方がいい」と考えています。

しかし逆に体温が高いと死亡リスクが高まる、といった研究も報告されているようです。

ただ、私たちが住んでいる環境は、19世紀と比べてはるかに過ごしやすい環境に変化していますので、生物の持つ生理的なメカニズムとして、

「生命にとって不要な機能は、退化萎縮する」

ことが分かっていますので、今回書きました記事については、個人的には納得できるな、と思っています。

新たな標準体温とは何度ですか?

Medical News Today


ここからです。



19世紀からの人の体温の傾向について最近の研究では、生理学的変化により一般的な人体の体温が低下していることを示唆した。研究者の著者らは、これらの変化の潜在的な原因も強調している。

私たちのほとんどは、例えば感染症や風邪の結果として、発熱を心配しているときだけ体温を測定する。

しかし、体温は他の多くの要因により影響を受けるが、生活習慣、年齢、周囲温度はすべて、私たちの体が体温を放熱する方法に影響を与えている。

具体的には、人体の体温は代謝率を示し健康マーカーとして利用されていて、一部は長寿と体の大きさにも関連している。

それでは、私たちの通常の体温とはいったい何度なのか?


1851年、ドイツの医師カール・レインホールド・アウグスト・ワンダーリッヒ(Carl Reinhold August Wunderlich)が1つの都市の25,000人を調査し、37°Cが人体の標準温度であることを既定した。

しかしながら、最近の分析と調査では、今では標準体温がそれよりも低いことを示している。

たとえば、英国の35,000人以上の人々と250,000近くの体温測定の研究では、36.6°Cが平均の口腔温度であることがわかった。この矛盾は、測定ツールが変わったことによるものだろうか?それとも、新しい調査結果は、平均余命の延長と全体的な健康の向上を反映しているのだろうか?

その後、カリフォルニアのスタンフォード大学感染症地理医学部のミロスラバ・プロツィフ(Myroslava Protsiv)とその同僚は調査に乗り出した。

チームは、「19世紀と今日の間に観察された温度の違いは現実のものであり、時間の経過による変化は、産業革命以来の人間の健康と寿命の変化に対する重要な生理学的手がかりを提供する」と仮定した。

体温の歴史的傾向の研究

仮説を検証するために、3つのデータから情報を分析した。

一つ目データに含まれていたのは、南北戦争の北軍に参加したことのある退役軍人から取得した1862年から1930年のデータ。

二つ目のデータは、1971年から1975年に実施された米国国民健康栄養調査からのもの。

三つ目のデータは、大学のデータベースからのもので、2007年から2017年の間にスタンフォードを介してヘルスケアを受けた人々のデータが含まれていた。

全体として、科学者は677,423の温度測定値にアクセスし、それらを統合して、経時的な変化のモデルを形成した。

現代の標準体温はもっと低い

研究者の調査結果の一部は次のとおり、

今日の男性の体温は、平均して、19世紀初頭に生まれた男性の体温よりも0.59°C低い

同様に、の体温は1890年代より0.32°C低い

全体として、分析では10年ごとに平均体温が0.03°C低下した。

温度の低下が温度計技術の進歩によるものかどうかを確認するために、プロツィフとチームは、各歴史的時代の医師は一般に同じ種類の体温計を使用していたと仮定し、データ内の変化を調べた。

データ内の分析の結果は、結合されたデータの変更を反映している。
「私たちの体温は、人々が思っているほどではない」と、研究の主著者であるジュリー・パーソンネット博士(Dr. Julie Parsonnet)は言う。

「誰もが学習してきたこと、つまり私たちの標準体温は[37°C]であるということは間違っています。」
~ ジュリー・パーソネット博士

 

ただし、性別、時刻、年齢によって体温を変化する可能性があるため、研究者は米国のすべての成人の基準を更新することを勧めていない。

体温が下がった原因は何か?

それでは、なぜ標準体温が変わったのか?
「私たちは生理学的に、過去と今ではまったく異なっています。私たちが住んでいる環境は、家の温度、微生物との接触、食べられている食物など、が変化しています。」

「これらすべてのことは、私たちは人間は単一であり、人類の進化のすべてにおいて同じであると考えていますが、私たちは同じではないことを意味します。実際に私たちは生理学的に変化しているのです。」とパーソンネット博士は言う。

さらに、パーソンネット博士は、私たちの体が使用するエネルギー量を示す平均代謝率は、時間とともに低下してきたと考えています。この減少は、炎症の減少から生じている可能性がある、という。

「炎症は、代謝を改善し、体温を上昇させるあらゆる種類のタンパク質とサイトカインを生成します」と彼女は言う。

最後に、空調と暖房によって、周囲の温度がより一定となり、同じ体温を維持するためのエネルギーを(昔と比べ)消費する必要がなくなったのだ。



ここまでです。

腸内細菌は私たちの体温も支配している

この研究者であるパーソンネット博士は、体温が高い方がいいなど医学的な事には言及していないようです。

しかし体温は自律神経によってコントロールされており、低体温になると自律神経の働きが鈍くなり、ガンになりやすくなるなど健康上の問題は多くなる、と思います。ですから、「体温はやはり高い方がよい」というのがより一般的なのでしょう。

自律神経と免疫システムは関係しているので、免疫が低下することによって感染症やその他病気にかかりやすくなります。

そして「自律神経を支配している」のは、「腸内細菌」なわけですから、その「腸内細菌」が一番元気でいられる最適温度というのが有るはずですね。

腸内細菌を連想するものとして、乳酸菌やビフィズス菌などが思い浮かびましたので、乳酸菌といえば「ヤクルト」。

そこでヤクルトのホームページで調べてみました。

腸内細菌からみた人とは
 人の腸の中は、常に36~37度くらいに保たれています。これは多くの腸内細菌が元気に生育できる温度です。また、腸の中は酸素がほとんどありません。腸内細菌の多くは酸素があると生きられないため、腸は細菌にとって安全な場所なのです。また、人は食べた物を全て消化できるわけではありません。腸内細菌は人が消化できないような食物繊維を消化し、エサとすることができるのです。つまり腸内細菌にとって人の腸は、常に居心地の良い温度に保たれた快適なすみ家なのです。

人と共生関係にある腸内細菌
 私たちと切っても切れない関係にある腸内細菌ですが、ウェルシュ菌や黄色ブドウ球菌など、有害物質をつくるなど病気の原因になるような有害菌もいれば、これらを抑え込む乳酸桿菌やビフィズス菌のような有用菌も存在します。腸内の有用菌は、乳酸や酢酸をつくり有害菌の増殖を抑えたり、腐敗産物や有害物質の産生を抑えたりして、人の健康の維持・増進に役立っているのです。

 私たちは、有害菌を含めた腸内細菌の集団(腸内フローラ)と生活を共にしており、菌と人のように、異なる種類の生き物同士が、互いに影響を及ぼし合って生きている関係は「共生」と呼ばれます。生き物同士の共生の関係には、互いが利益を得る「相利共生(そうりきょうせい)」、片方に利益がかたよっている「片利共生(へんりきょうせい)」、利益を得ている側が相手に害を及ぼす「寄生」があります。

   人と個々の腸内細菌の間にも、このようなさまざまな共生関係が存在しますが、人と腸内フローラが互いに利益を与え合う関係を築くには、乳酸桿菌やビフィズス菌のような有用菌を優勢にして、腸内フローラのバランスを良好に保つことが大切なのです。


ヤクルト中央研究所のサイトから

 

さらに、「腸内細菌は私たちの体温をコントロールしている可能性がある」という記事を見付けました。

原題は「Gut microbiota orchestrates energy homeostasis during cold(腸内細菌叢が低温でのエネルギー恒常性を統合する)」2015年11月Cell誌に発表されました。https://www.cell.com/fulltext/S0092-8674(15)01484-1

この研究の概要を短く説明すると、

  • 低温にさらされると腸内微生物叢の組成に著しい変化をもたらす
  • 低温にさらされたマウスの腸内細菌を移植すると白色脂肪組織が褐色脂肪組織に変わり、熱を出すことで低温に強い体に変化する
  • 移植されたマウスの腸のサイズを長くし腸の吸収能力を増加させる

というもので、腸内細菌が私たちの体温までコントロールしているという事実です。

すごくないですか「腸内細菌」。

これからも私の関心度の最も高いテーマになりそうです。

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